「スティングさん、小包でーすっ」
元気な声とともに送り届けられた一つのクール小包。 差出人はなんとプラントのイザーク・ジュールからだった。 「はぁ?大晦日に日時指定になってやんの?」 「なに・・・・入ってるの?」 アウルが荷札を見て素っ頓狂な声を上げ、 ステラは不思議そうにしげしげと荷物を見ていた。 どういう風の吹き回しかと俺は恐る恐る空けてみると出てきたのは。 ソバとソバツユ3人前。 海老天やはり3人前。 そして・・・・一枚のDVDだった。 「・・・・なんだ、こりゃ」 「変わった色・・・・」 アウルとステラがぽかんとソバを見つめ、ひっくり返したりしている。 彼らは「ソバ」というものを見たことがなかったのだからその反応は自然だったといえよう。 俺はそのソバを見てそしてカレンダ−を見やった。 今日は12月31日。 大晦日だった。 その日付とソバが一線でつながったとき、俺はイザークの意図が分かったような気がした。 「なるほどな。随分とまめなやつなんだな」 「?スティング?」 「どう・・・・したの・・・・?」 「ああ・・・・これはな」 以前民俗学で『ニホン』という国を勉強したときだ。 日本には独自な風習があって年の最後の締めにそばを食うという習慣があるという事を聞いた。 おそらくそれだろう。 DVDを再生すると、おなじみの銀髪おかっぱと浅黒い男が映し出された。 『イザーク・ジュールと!!』 『ディアッカ・エルスマンの』 『『三分間クッキーングぅー☆』』 がたがたがたーん。 隣でアウルがいすからずり落ちる音がした。 俺も一瞬思考がショートしそうになったが、かろうじて落ち着きを取り戻し。 ステラは・・・・・いつもと変わらなかった。 『どうせ貴様のことだ!!31日の準備などしておらんだろう!! ふふん、そうだ、そうだろう!!勉強を始めたばかりの初心者であっり、ひよっ子の貴様にだな』 『俺たちが送ります』 『ディアッカ!!きさまぁーーーー!!人の台詞を!!』 どんがらがっしゃーん!! 今度は俺たちではない。 映像の中の音だった。 その証拠にディアッカが画面の向こうで吹っ飛んでいた。 なんて短気なやつなんだ。 『まぁ、いい!!そういうわけで作り方も俺たちがレクチャーしてやろう。 しっかりと見て頭に叩き込んでおけ!!ディアッカ!!』 『へいへい』 「復活はやっ」 アウルの驚愕の声を上げたのが聞こえた。 日頃の訓練の賜物だろうよ。あんまりあやかりたくないがな。 「メモメモ・・・・」 ステラ・・・何が起こってもマイペースなお前の平常心には感服するぜ・・・・。 そして。 長々としたDVDも終わりに近づき。 『以上だ!!分かったか!!』 「へいへい」 随分とがなり声が多いせいで頭痛もひどく、 俺たちはやっと終わると安堵のため息をついた。 が。 『なお、このDVDは鑑賞後自動的に消滅する』 「「はぁ?」」 「消滅・・・・?」 胸をそらし、恐ろしい事をはくイザークに俺たちは勢いよく顔を上げて画面を凝視した。 まさか。まさか、漫画じゃあるまいし・・・・ そんな俺たちの願いもむなしく。 イザークの言葉どおり、DVDプレイヤーが煙を上げ始め。 やがて火花を飛び散らして、たった一つのDVDプレイヤーが完全に沈黙した。 うんともすんとも言わず、代わりに焼き焦げたにおいがかのものから漂っていた。 「こわれ・・・た・・・?」 「「何考えてやがんだ、あの野郎!!」」 茫然自失状態から立ち直ると。 俺たちは一刻も早く彼に新しいDVDを弁償させようと硬く心に誓い合ったのだった。 余談だが。 アスランとキラのところにも同じ小包が届き、同様の被害をこうむったそうだ。
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