「スティング、エロビデオ見ねぇ?」

爽やかな笑顔と共にDVDを手にしたアウルが部屋へと入ってきた。部屋にはニュースを見ていたスティングの他に人影はなく、聞こえてくるのはアナウンサーの声だけだった。

「士官どもが騒いでいたから借りてきた。あんだけ騒ぐんだからきっとすごいぜ?」

言っている内容と容姿が妙にミスマッチだなとスティングは思った。








エロビデオはお子様の手の届かない所に
置きましょう
(笑)








鼻歌を歌いながらDVDをセットするアウル。傍らには菓子の大袋が転がっている。とてもエロDVDを鑑賞する姿勢じゃねぇなとスティングはその様を見ている。そんな彼はお気に入りの座布団を敷き、万全な体勢だ。そう言う彼こそとてもエロDVDなんぞ鑑賞する姿勢ではない。
スティングがエロビデオ?と眉をひそめる者もいるかもしれないが、エクステンデットとはいえ、彼も健全な男子である。興味がないはずはない。犯罪を起こすわけではないのでここは大目に見てもらいたい。



バリバリバリ。
ビデオの中の荒い息づかいに重なるように煎餅の音が響く。

「くっだらなねぇ〜。こんなんでコーフンすんの、あいつら?ばっかじゃね?」

煎餅を盛大な音を立ててかじりながらアウルがぼやく。画面の中で裸の男女が激しく絡み合っている。だがその光景はアウルにとって幼稚めいたつくり物にしか映らなかったらしく、ビデオ鑑賞より菓子の方に集中してしまっている。その証拠に彼の傍らにはカラになった袋がいくつか転がっていた。心底つまらなそうなアウルの隣で正座をして座っていたスティングは熱心に見ているように見えるが、彼の視線は画面ではないどこかに泳いでしまっている。彼には少々刺激が強すぎたようだ。


「ったくただ挿れてるだけかよ。それで女が満足すると思ってンの?なあ、スティング?」
「俺に聞くなっ!」


あっけらんと感想を述べるアウルに何でこいつは・・・とスティングは紅い顔をさらに赤くする。体が火照ってむずむずすして、彼はどうにも落ち着かなくなって立ち上がった。

「何処行くの?」
「トイレ!!」

大股出て行くスティングに面白いおもちゃを見つけたように口端をつり上げ、アウルも立ち上がって後を追う。後には付けっぱなしのビデオだけが残されていた。





「Mr.オクレにはちょーっと刺激が強すぎたかなぁ〜」
「オクレじゃねぇ!!殺すぞ!!」

にやにやしながら揶揄するアウルを一喝するとスティングはトイレを出た。コレは当分ネタにされると、アウルの誘いに乗った自分が我ながらばからしくて溜息だけが出た。

「おい、さっさと返せ。あれ」
「りょぉかぁい」

未だクスクス笑っているアウルに渋い顔をするとスティングは元来た道を引き返す。部屋へと入ろうと足を踏み入れたとき、スティングは中の信じられない光景に入り口の前で固まってしまった。

「おい・・・」
「あ?」
「ビデオ・・・付けっぱなしできたのか・・・?」

スティングはさびたロボットのようにギギギとぎこちなく首を回してアウルを見やった。その表情にはありありと非難の色が浮かんでいる。何でそんなことくらいで目くじらたてんだよ、とアウルは顔をしかめた。

「忘れた。いーじゃん、別に」
「良くねぇよ、このばかっ!!」

頭を抱えてうずくまるスティングを怪訝そうな顔で見やると、アウルは部屋をのぞき込んだ。部屋には付けっぱなしのビデオ。画面では男女が未だ荒い息づかいと艶のある喘ぎ声を上げている。その前に体育座りで座っている、見慣れた金髪。

「なんだ、ステラか」
「なんだ、じゃねぇっ!!」
「あー、うっさいなぁ」

激昂する兄貴分を押しのけて部屋にはいると、アウルはステラのむき出しになっている肩に手をかけた。ステラは愕いたのか、ビクッと肩をふるわせて彼を見上げた。その顔は熱で火照っており、大きな紅い瞳が潤んでいた。

「ん〜?お前もしかしてコーフンしてんの?」

クックックと笑いをこらえて自分を見おろすアウルにステラは言っている意味が分からないと首をかしげる。彼女はたまたま入ってきて退屈しのぎにつきっぱなしのビデオの前に座ったのだろう。そして何げに見たのがエロビデオでそんなものを見たことのない(それよりもスティングが見せなかった。当たり前だが)ステラが影響を受けても不思議はない。部屋を出る前に消したか確認しておけば良かった、とスティングは本日2回目の後悔をした。

「ステラぁ、おまえさ、こんなんで発情してどーすんだよ?」

アウルは小馬鹿にしながらも、そんなステラが可愛くてたまらないと言うように座ったままの彼女を後ろから抱きしめ、白い頬にちゅっと口づける。鼻腔をくすぐる甘いにおいにあんなビデオなんかよりこっちの方が興奮するよなとアウルは口端をつり上げると、体育座りのままのステラの足の間に手を伸ばし、下着越しに秘所を刷り上げた。

「あ・・・っ」

与えられた刺激に短く息を吐くステラに、アウルはクスクスと忍び笑いを漏らす。思った通り、彼女の秘所は十分すぎるほど濡れており、熱を帯びていた。更に中心部を軽くなぞるとクチュりと水音がし、ステラが大きく体を震わせる。その反応に満足したアウルは熱っぽく耳元で囁いた。

「熱い・・?僕はあんなのよりずっと良いよ?」

アウルは紅い耳朶を甘噛みするとゆっくりとステラを押し倒し、深く口づける。舌を差し入れ、彼女の咥内をなめ回し、舌を絡める。ステラもアウルの首に腕を回し、従順にそれに応えるとぴちゃぴちゃと舌を吸い合う音が部屋に響いた。


「おい・・・」
「なんだ、まだいたの?」

忘れ去られた感を受けたスティングがちょっと待て、と言わんばかりに唸ると、アウルはめんどくさげに唇を離して彼を顧みる。その表情には良い所に水を差しやがってと非難の表情がありありとうかんでいた。


「あのなぁ・・・」
「それとも一緒にヤる?」


怒りと羞恥心に顔を紅くするるスティングにアウルは意地悪な笑み浮かべる。もちろん断るだろうと知ってのお言葉だ。馬鹿にしくさってこのエロ野郎、と腹立ちまぎれにスティングが怒鳴った。

「アホかっ!!
「だったら出てけ」

だが、にべもなく部屋を追い出され、鼻っ面の前に扉を閉められた。
邪魔すんなと言わんばかりにかちゃっとロックの音がする。

「おいっ、なんで俺が自分の部屋を追い出されなければならないんだよっ!?」

頭を抱えて部屋の前で絶叫するスティング・オークレー。
カオスガンダム専属パイロットで階級は少尉。
個性的すぎる面々をまとめる彼の受難は続く。







あとがき

コレより前に書いていたやつがえらく暗くなって気が滅入ったので、こっちを先にアップしました。息抜きに軽いノリで書きましたエロビデオネタ。
コレはステラがエロビデオを発見したらどうなるんだろうかとチャットで生まれた物です。うちはこんなんなりました。あはは。すいません、すいません。ここまで読んでくださってありがとうございました。