とある休日。

久しぶりの休日にスティング・アウル・ステラの3人は町に買い物に出た。

談笑する二人の後を大人しくついてきていたステラだが、

ふとゲームセンターのUFOキャッチャーの前で立ち止まった。

そしてキャッチャーに近寄るとぺたりと張り付くと

物欲しそうにぬいぐるみの山を窓越しにのぞき込んだ。







         

         Vaccant Time










「またアイツどっか行きやがって」

「まそう言うな。久し振りの街だ。ステラだって浮かれるだろ?」

「スティングはステラに甘過ぎ」



ステラが後をついてきていないことにいち早く気付いたアウルは

そう文句をたれながら道を引き返してきていた。そのすぐ後にスティングが続く。


「・・・いた。ステラのヤツまた寄り道してる」


二人がゲームセンターでステラを見つけた時、

彼女はちょうど店員に声をかけられていた時だった。


「どーぉ?お姉さん?このUFOキャッチャー新作だよ。

この特大ぬいぐるみが1トライ300円でゲットできるよ?!2回で500円!!」


「う、うぇ〜い」


アウル達の姿を見つけると、ステラは懇願するように彼らを見た。

どうやらUFOーキャッチャーのぬいぐるみが欲しいようだ。

そんなモノのために俺らに探させたのかよ、と憤慨したアウルは当然拒否する。


「くっだらねー。僕はやだ」

「仕方ないな。どれが欲しいんだ」

「・・って、おい!スティング!?買い物はどーすんだよ」


だがそこはステラにとことん甘いオクレ兄さん。

二つ返事で500円コインをポケットから取り出すと

UFOキャッチャーに投下した。

ういいーんと音を立て、アームが動きだし、がちっとぬいぐるみを掴む。


(よしっ!ステラ、兄ちゃんはやったぞっっ!!)


思いのほかつかめた幸運に

スティングは表面はあくまでクールに、心の中で大きくガッツポーズをした。


ぼとっ。


「あ」


だが、あとちょっとというところで落としてしまった。


「・・・・」

「・・・・」

「・・・ださ」

「あぅう〜」

「わ、わかった。まだ一回あるだろ?」

「フン」


ステラの涙目におろおろするステイングを横目に

自分ならちゃんと取れたのにと、

アウルはイライラと事の成り行きを眺めていた。

だがさっきの言葉を易々と撤回することは

意地っ張りなアウルには出来なかった。

そして目の前で2回目のトライがスタートした。

・・・が今度は掴むことすら出来なかった。


「くっそー、もう一回。待ってろ、ステラ!」

「うん・・」


悔しそうにまた500円を投入するオクレ兄さん。

アウルはその様子に更にいらついて、

つま先で床を叩き始める。

スティングの操作を見て

馬鹿か、あれじゃバランスが悪くて取れやしねぇよ、

と心の中で毒づいた。

ぼとっ。

そして案の定、またもや落としてしまった。


「あ・・」


ステラは今にも泣きそうだ。


「あ”〜、もー見てらんねー。替われよ。こーたーい」


ついにしびれをきらしたアウルが割って入り、

アームを操作すると、あれだけスティングが苦労したのを

瞬く間に捕ってしまった。


そして苦虫をかみつぶしたような店員からぬいぐるみを受け取ると

それを意気揚々とステラに放って寄越した。


「ほらよ。これでいーだろ」

「うん・・。ありがと・・」

「なんだかんだ言っていいとこあるじゃないか」

「うるせーよ」


ステラに喜ばれ、スティングにもほめられたアウルは照れくさそうにそっぽを向く。

こういうのも悪くないかもと不覚にも彼は思ってしまった。


「もう一回どうですか?」


いともあっさりとぬいぐるみを持ってかれたことを

おもしろく思わなかった店員が賢明に作り笑い浮かべ、

3人に声をかける。

するとアウルはおもしろいおもちゃを見つけたかのように、

不機嫌そうな顔から一転して悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「へ〜え。おっさん、それって僕に挑戦?」

「お、おっさん・・・」

「吠え面かくなよ」


その言葉通り、店員が泣いて懇願するまでぬいぐるみの獲得は続いたという・・。




その夜。


「ステラのやつ、捕ってきたぬいぐるみ全部持ち込みやがって!邪魔なんだよ!!

っーか、何でここに寝るんだよ!?自分の部屋で寝ろっ!!」



ステラは今日のことがよほど嬉しかったのだろう。

ステラは取ってもらったぬいぐるみを全てアウル達の部屋に持ち込み、

彼らがカードをしているうちにそのまま寝入ってしまったのだ。

アウルのベットを占領し、その周囲にまでぬいぐるみで溢れさせて眠るステラ。

僕の寝る場所がないじゃねぇか、とアウルは大いに憤慨した。

スティングはそんなぬいぐるみの山を見て小さく溜め息をつく。


「やれやれ。少し整理しないとな。収納する棚でも作るか」

「んなもん、ネオにやらせりゃいーじゃんか」


めんどくさいと言わんばかりに顔をしかめる少年を

スティングは穏やかに諭す。


「3人でする大工仕事も楽しいぜ?」


3人で、と言う言葉に弱いアウルは

諦めたように溜め息をついて見せた。


「・・・はいはい。しょうがねぇな。明日のデザートで勘弁してやるよ」

「俺のをやるよ」

「スティングのも、もらうんだよ」


水色の少年は当然、と言わんばかりに胸を反らすと

スティングは困ったように苦笑する。


「おいおい、よくばんな」

「うっせーな。・・・ったくガキくせー顔して寝てるよ。・・戦闘になったら人格変わるくせに」


ステラの寝顔を見つめるアウルの言葉尻に少し悲しみがこもっているように

聞こえるのは気のせいだろうか?

スティングはそんな彼の横顔を穏やかに見つめる。


「こいつを守るのも俺らの仕事だろ?」

「・・めんどくせー仕事」


アウルはそうぼやくとぬいぐるみをどかし、当たり前のようにステラの傍らに滑り込んだ。

そしてステラに毛布をかけ直してやると疲れていたのか、すぐに寝息を立て始めた。

眠る二人を見やりながらスティングは

これから激化していきそうな戦争から

命を賭してでもこの二人を守り抜く決意を固めるのだった。








あとがき


あれ、見たことるな、と気付いた方いらっしゃると思います。
これは某巨大掲示板にて投稿したのを発掘し、手直しした物です。
まだDestinyが始まったばかりの頃で記念すべき1作目でした。
このあと兄さんが倒れるSSも投稿しました。
After the War の第1話の「3人」はもともとこの掲示板にこの
シリーズとして投下するつもりで作った物だったんです。「バイト」という
と言う言葉はそのシリーズの設定から来ていた物でした。

3兄妹として生活してオクレ兄さんがバイトをして面倒を見る
ちょっとパラレルの要素が入っていたシリーズでSSリレーがとても楽しかったです。

ここまで呼んでくださって有り難うございました。