「今日は 少し遅めに飯行こうぜ」





食欲旺盛すぎる、いつもの少年のものとは思えないセリフ。

スティングは作りかけの報告書を前に固まり。

ステラは熱帯魚から視線を外し、少年を見やると一言。


「お腹、こわしたの・・?」


「ばっ」


馬鹿女、何言い出すんだよっと文句を言うより早く、スティングの

怒号が飛んだ。


「だったら腹出してんじゃねぇ、馬鹿!」


「何でそうなるんだよ!」





あんまりと言えばあんまりな二人の言葉にアウルは大いに憤慨した。






Supper Time






「大体、これは僕のファッションだっつーの!」


ふてくされ、ソファーで背を向けて丸まっている少年にスティングは

眉尻を下げて悪かったよ、とあやまる



アウルが冒頭であのように言ったのには訳があった。



この日は部隊の給料日。

おまけに艦は夕方前には港町にて停泊する予定となっていた。

ほとんどの者は下船し、酒場へと向かうだろう。

必然的に艦の食堂を利用する者も少なくなる。


そして利用する者が少ないと言うことは当然食事も余る。



部隊では通常、食事は給料の一部として支給されている。

一定の予算を与えられ、不正がないよう、使い切らなければならないのだ。

クルーが食堂に行こうが行くまいがおかまいしに。


それ故最後の方となると余り物を早く処分しようと大盛りになったり、おかずやデザートの数が増える。

アウルはそれがお目当てだったのだ。


「今日の晩飯は何だよ?」


スティングは何とかアウルの機嫌を直そうと食事の話題を試みてみる。

アウルはそういうところには余念がなく、チェックを忘れていない。

限定食が出る日は真っ先に飛んでゆき、確保している。

もちろん3人前を確保するのも忘れない。

その話題が功をなしたのか、アウルは満面の笑みを浮かべて振り返った。


「エビフライ!!デザートはプリンだぜ!!」



嬉しくてたまらないと言わんばかりにその語尾を強調する。

「・・プリン・・・?」


アウル同様、プリンが大好物なステラもプリンという三文字に反応する。



「そっ!2つどころか3つぐらいもらえるかも・・!」

「プリン、いっぱい・・?」

「そっ!」



そうくり返して嬉しそうに互いを見やった。

アウルはすっかり機嫌を直した様だ。

スティングはほっと息をつくと、報告書をまとめていたパソコンの電源を切った。


「盛り上がっているところ悪いが、行くか?」


「おうっ!行こうぜ、ステラ!!」

「うんっ!!」



待ってましたと言わんばかりにソファーから飛び降りると、部屋を飛び出す


「アウル、待って」

「廊下を走るな、といってるだろーが」

「早く来いよぉー、腹減ったんだから!!」


アウルのことだ。

きっと腹ぺこだろう。

それでもちゃんと視界に捉えられるところで二人を待っている。

スティングは口元に笑みを浮かべると、ステラの手を引いてアウルの方へと足を向けた。










後書き


よほどのことがない限り、食事も3人一緒です。

ここまで読んでくださって有り難うございました。