廊下を歩いていた時、目に入った生け花の展示。 長細い花器のうえに栗、ススキ、二輪菊、リンドウ。 栗とススキの横枝を焦点に、傾体型に生けられた彼らは背筋を伸ばし、生き生きとした表情で秋の情景を思い起こさせてくれた。 「そういえばもう秋だったな」 訓練に忙しく、すっかり忘れていた。忙しいとどうも時間の流れに疎くなってしまう俺。 今月初めの自分の誕生日さえも忘れていて、ルナが何も言ってくれなかったらきっと忘れたままだっただろう。 この生け花は誰が生けたものかと好奇心に駆られて展示者の名を見てみると、意外な人物に俺は驚いた。 ――ルナマリア・ホーク。 「……アイツ」 そういえば何か始めたと言ってたっけ――。 『自信がつくまで内緒っ』 何かは教えてくれなかったけれど、彼女は誕生日の時と同じように、今度は季節を思い出させてくれた。 嬉しくなって表情が緩む。 彼女に会ったら言って上げよう。 君のおかげで季節を思い出せたよ、って。 春、夏、秋、冬と言った季節。誕生日と言ったイベントや暦。無関心でいると日常は灰色に見えるもの。そういった日常に敏感そうなルナマリアはシンにとって世界に彩を与えてくれる人だと思います。 |