シン誕生日企画










その1 シンルナ




「お誕生日おめでとう、シン」
「有り難う、ルナ」


満面の笑みもルナマリアから照れくさそうに祝いの言葉を受け取るシン。
プレゼントは無かったが、自分の誕生日を覚えていてくれたことがただ嬉しかった。
ルナマリアはそんなシンに決まり悪そうに視線を泳がせていたが、やがて意を決したように口を開いた。


「ねえ、プレゼント一緒に買いに行こうよ。今日、奮発するから」
「え?」


プレゼントを買いにいく、というルナの言葉にシンは紅い瞳をぱちくりとさせた。ルナマリアとしては
やっと言えた言葉だったにもかかわらず、淡泊としか見えない、シンの反応にやや不満を覚えて口をとがらす。


「何よ、不満そうね?・・・・だって良いものが思い浮かばなかったんだもの」


最後のほうは申し訳なさそうに顔を伏せて声が小さくなっていたが、顔を上げて更につけくわえた。


「それに二人で出かけるの久し振りだし・・・・。ね?」
「・・・・・ん」


紛れもないデートのお誘い。お誘いの口実は一生懸命に考えていたものらしく、ルナマリアはほっと息をついていた。

そんな彼女の姿がとても可愛くて。
愛しくて。
シンは紅い瞳を細める。
口元に隠し切れない笑みが浮かぶ。

仲間として出かけることはいつものこととして。
二人で出かけるのはめったにないこと。
それもルナマリアから誘ったのは今回が初めてだったりする。

異性として意識していなかった仲間から恋人へ。

そんな感覚がまだなれなくて。
ぎこちなさががとれない二人。
でも一番欲しいものといえば。


「言えないよなー」
「?」


プレゼントにルナマリア自身が欲しいとなかなか言えないシンであった。











その2 シンステ編




「お誕生日・・・・おめでとう」
「ステラからか〜〜。嬉しいな、有り難う」

ステラから差し出されたプレゼントをシンはうれしそうに受け取った。
慣れないことだったのか、ラッピングには四苦八苦した後がある。
自分のために一生懸命に用意してくれたのかと、シンは胸を熱くした。


ステラを怖がらせないように。
驚かせないように手を伸ばし、彼女をやさしく抱きしめて有難う、とつぶやいた。
うん、とステラも手を伸ばしてシンのすそをつかむ。
しばらく黙っていたが、やがて聞きづらいを聞くかのようにステラはおずおずと口を開いた。


「ね?」
「ん?」


ステラを抱きしめたままシンは聞き返すと、彼女は彼を見上げてこう言った。


「今日ね、シンの誕生日って、大事な日だってみんな言っていた。お誕生日って・・・・何?」
「生まれた日だよ。ステラはいつ?」
「ステラ、知らない・・・・」

悲しそうにそうつぶやくステラの髪を優しくなでてシンは微笑んだ。
ないのなら知らないのなら作ればいいと。


「じゃあ俺たちが出会った日を誕生日にしようか?」
「ホント・・・・・?」


すみれ色の瞳を喜びに輝かせるステラにシンはそうとうなずく。


「特別な日だろ?」
「・・・・うん」


後日。
レイからステラの誕生日は11月27日だという情報が周囲にもたらされた。


「くっそーーー、レイのヤツ余計なことを!!」











その3 レイシンレイ編




「誕生日、おめでとう」
「知っていたのか、サンキュー」

いつもの無表情なレイから手渡されたプレゼント。
誕生日を教えたことなかったのにな、と思わぬプレゼントにシンの顔がほころんだ。
中をあけてみるとこれも彼が欲しがっていた新しい記録媒体。
ロック機能つき。


「どうしてわかったんだよ?」
「なに、お前のことなど調査済みだ」


レイのクールな表情に得意げな色がわずかにちらつく。


「そうなの?」
「もちろんだ。同室だから日頃の寝言も独り言も調査済みだ」
「へ、へえ」

普段から聞き耳立てているのかよ、とシンはわずかに顔を引きつらせるが、レイはお構いなしに続ける。


「安心しろ。あんなことやこんなことも在るが、同僚のよしみで誰にも言うつもりはない」
「・・・・・」


おいおいおい。
なんで知っているんだよと心の中で突っ込むシン。
すっかり得意げなレイはまだあるぞと続ける。


「ついでに・・・・」
「のわ〜〜〜〜〜っ、やめてくれぇっ!」



これからは自分の言動に気を配ろうと決心するシンであった。











その4 アウシンアウ編




「誕生日、おっめぇでぇっとう!!」


ズキューン、ドンドンドン。


飛び込んでくるなり、銃と小型マシンガンをぶっ放してきたアウル。
とても祝うような態度ではない。
シンは物陰に身を寄せて弾丸から身を守りながらアウルを怒鳴りつけた。


「てめぇっ、いきなり銃ぶっ放してどういうつもりだっ!?


だがアウルは聞く耳持たず。
ポケットから手榴弾を取り出すと、歯で其のピンを抜いた。


「手榴弾のおまけぇっ!!受けとれぇっ、コラぁっ!!」
「いるか〜〜〜〜〜〜っ!!」


ちゅどーん。


あたりは大爆発をおこし、煙が晴れると対峙する二人があらわれた。

ぜえぜえぜえ

ハアハアハア。


肩で息をしながらにらみ合うシンとアウル。
先に口を開いたのはシンのほうだった。
煙を吐き出しながら怒りに燃える瞳でアウルをにらみつけた。


「どういうつもりだっ、このバカっ!!」
「やかましっ!砂糖吐くような言葉吐きやがって!!にあわねーんだよっ!!」
「うぐっ!!」


アウルの言葉に少なからずショックを受けるシン。
自分でもキザだとは思っていただけに、改めて指摘されるとやはり恥ずかしいものだ。
それ以上にショックだったことは。
ステラに言った言葉はどうやらアウルたちに全て筒抜けらしいということ。
次に出てくるのは緑色のやつか?仮面のやつか?
そんなシンの苦悩なぞお構いなしにアウルは続けて怒鳴った。
どうやら心底頭にきているらしい。


「ちなみにスティングのは9月27日!!」
「それがどうしたんだよっ!?」


野郎の誕生日なぞ聞きたくもない。
それよりアウルがおこっているのはステラのことじゃなかったのか?
シンはわけがわからず目を白黒させた。
アウルはアウルでシンの混乱など頭にないらしく、なにやらうつむいて其の身を震わせていた。
やがて顔を上げると大きな瞳から涙を振り飛ばしながら、またもや銃を乱射し始めた。


「なんでっ、僕のは分かんないままなんだよっ!?インチキーーーーーっ!!」
「知るかぁっ!!!!!!」


とんでもない八つ当たりだっ、とシンは後々泣きながら語ったという。






あとがき

シンの誕生企画。
シンルナはちょっと甘いのを。
シンステは甘いのにちょっとギャグスパイスを。
レイシンレイとアウシンアウはコントっぽいのを。
ステラの誕生日は封入カードより。
兄さんはカオス1/00のカオス発売告知より。
アウルのはいつでしょう?
他の二人が27日という事や
アウルの太陽のような性格からして7月27日(獅子座)と妄想してみたりする(笑)
ショートSSでした。

シン、誕生日おめでとう!!