5.傷
                              (アウル視点)

 

 




嫌なこと。

つらいこと。

悲しいこと。

・・そして想い出も。

 

全部忘れて俺らは眠る。

心地よいゆりかごの中で俺らは眠る。

 

俺らは戦うためにこの世に生み出された。

 

 

大事なのは戦争の行く末なんかじゃない。

やるか、やられるか。

それだけ。

 

戦場が俺らの居場所。

だから記憶なんて必要ない。

 

記憶があったらそこで戦えなくなるような気がする。

俺らを人間に変えてしまうやっかいな代物だから。

 

でも。

戦場を駆け抜けるときの高揚感とは裏腹に。

戦闘後、時々なんともいえない感覚が襲ってくるときがある。

恐怖なのか。

緊張によるストレスなのか。

はたまた・・悲しみなのか。

 

何故僕は戦っているのかなぁ?

それは生きるため。

 

何故生きるため戦っているんだろうね?

それは守るため。

ステラを。

スティングを。

そしてネオを。

俺らの居場所を守るため。

 

かすかに覚えているぬくもり。

幼かった日々。

失くすまいとあがいたけど、守れなかったぬくもり。

それが何なのかはもう思い出せないけど、

それは今も時折僕を締め付ける。

今度こそ大事なものを守り抜くためにも

僕を弱くさせる記憶なんていらない。

 

だから・・僕は眠る。

忘れるために。

 

 

でも。

 

 

やっぱり悲しい。

なくしてしまうのが悲しい。

忘れてしまったのが悲しい。

思い出せないのが悲しい。

 

何かは思い出せないのに。

かすかに残るそのぬくもりをいまだ手放せずにいる。

 

 

ステラが守ろうとした、薄汚れたハンカチ。

 

ねえ、ステラ。

お前があのハンカチに執着したように俺らとの思い出にも執着してくれる?

傍にいなくなっても忘れないでいてくれる?

 

僕は死ぬ瞬間までお前を覚えているから。

今度こそ最期まで覚えているから。

 

だからステラ。

いつか別れの日が来ても。

どうか僕を忘れないで。











後書き


実はこれ25話の直後に書いたモノです。

26話で記憶処理されてしまって慌てましたが、そのままです。

亡くした物は「母さん」です。

おわかりになったでしょうか?

噂では「母さん」の死を目の当たりにしてそれがトラウマに

なったとか。

その後多分、記憶処理されたのかなと思いました。

そもそもブロックワードって何を元に作られんでしょうね?

・・真相解明の前に28話になってしまいましたが・・。

でも何よりも。

28話の後にこれはきついなぁ・・。