驚きと恐怖と精神的苦痛の交じり合った、アウルの絶叫が冬の張り詰めた空気を揺らがす。ミゲルにしっかりと抱きすくめらたアウルをスティングたちはただ、呆然と凝視していた。 「いやぁ〜〜〜〜〜っ!アウル先輩っ!!」 アウルの長い絶叫のあと、遥か後方で女性との金切り声が響き、こちらへとかけてくる、複数の足音がしてきた。 一番先に我へと返ったのはスティングだった。 「離しやがれ!!この変態野郎っ!!」 鳥肌を全身に立て、白目をむいているアウルを奪い取ると同時に上段蹴りを繰り出す。 だがさすがはケンカ上等のミゲル。 あっさりと避けると、腰を低くし、反撃に移ろうとしたそのとき。 「お前お前ぇっーーーー!!」 修羅モードになっていたステラが絶妙タイミングではなった学生鞄のスイングが見事ミゲルの顔面を捕らえ。 鈍い音を立てて、本体がミゲルの顔のど真ん中にめり込んだ。 「・・・・・」 鼻血を出してスローモーションに倒れこみながら。 翻ったステラのスカートから覗いた白い太腿とストライプの下着に良いもん見たぜ、といわんばかりに彼は親指をぐっと立てて見せた。 「朝っぱから何やってんだか」 爽やかなポーズで床にひれ伏したミゲルにラスティは鞄を肩越しに返しながら呆れた顔をし。 「寝ぼけていたんでしょう」 爽やかな笑顔でニコルが笑う。低血圧なんじゃないですかぁ、と付け加えながら。 「アウルせんぱーい!!」 そこへ土煙あげてホーク姉妹が飛び込んでくると、転がるミゲルの上をドカドカと踏み超えてアウルの元へと駆け寄った。思いっきり踏まれたミゲルがカエルの潰れた声を出したが、自業自得、と誰もが無視を決めこむ。 「何やってのよ」 白目をむいたまま地にへたり込んだアウルの頬を軽く叩き、意識を呼び覚まそうとする姉のルナマリアからアウルを奪い取ると、メイリンは彼を脳の位置が変わるんじゃないかと皆が疑うくらい激しく揺さぶった。 「アウル先輩、目を覚まして!!道を間違えないでください!!」 襟首を締め上げながらアウルをガクガクとゆするメイリンにシンはアウルを殺す気かよっ、と慌ててとめにかかった。そんなシンを振り払うとメイリンはアウルを必死の形相でゆすり続ける。 「シン先輩、邪魔しないでください!!ホモなんて間違ってます!!」 「は?」 メイリンの言葉に一同は固まった。 ホモ。 同人界でも有名なかの言葉。 同性愛好者。 詳しく言うと・・・・。 「ミゲル先輩、ホモだったんなんて・・・・・初耳です」 「俺もー」 新しい事実ですねぇと沸くロック部の古株。 キラはニコニコと微笑んでいたが、紫苑の瞳に危険の光を宿して。フレイはフレイで退部届けを出そうかしら、と思案していた。 「よりによって部長の立場にいる方がホモとは・・・・困りましたね」 「ちょっと待てコラ!!」 ここは現部長としてとニコルがミゲルの引退を提案するとグインと復活したミゲルが青筋を立てて、ニコルに詰め寄った。 とたん。 「若の貞操を守れーーーーー!!」 どこからか出現した黒服たちがニコルの周りに人垣を作るとミゲルへと一斉に銃を向けた。 二車線の道路を挟むようにして並んで植えられている木々。 塀に囲まれている一般の民家。 遠くまで見渡せるこのただっぴろい通学路にこのように目立つ黒服たちが潜めるところがあるはずもないのだが、其の法則をまるっきり無視したような出現ぶりであった。 「あと一歩でも若に近づいてみろ。明日のお天道様を拝めなくしてやる」 黒服達の中心にたたずんだトップと思われる鋭い空気の男が どこぞの組員のような台詞を吐き、殺気の篭った眼差しをミゲルへと向けた。 雰囲気からしてどうも本気度120%のようである。 あと一歩でも近づけば銃弾の雨が降ってくるのは確実だった。 「ちょっと、待て。俺はなぁ」 「悪いけど・・・・僕、ホモは間に合ってるんだよね。これ以上近づいたら大声出すよ?」 困りきった顔で自分のほうへと来たミゲルにキラは天使の笑顔で冷たく言い放つ。そんなキラを守ろうと、フレイが二人に間に割り込んできて声高らかに執事の名を呼んだ。 「鈴木っ!!」 「あ〜〜〜はいはい」 能天気な声と共に道路のマンホールからにょきっと姿を現したパンチパーマの男。 工事帽に懐中電灯をくくりつけ、薄汚れた作業服姿でごそごそはい出でてきた。 其の名も鈴木ことチャンドラ2世である。 「あんた、前は田中じゃなかった?」 自分の記憶が正しければ、というラスティにチャンドラはあの女は物忘れが激しいんだよ、と毒づいた。 「単に馬鹿にされてるだけじゃないのぉ?」 傍で彼らの会話を聞いていたルナマリアが笑いをこらえながらシンに耳打ちしたところを地獄耳で聞きつけたチャンドラが 主であるフレイの声を無視して彼女の元へとすっ飛んでいった。 「う、うるさい!!何だ、このスカートの短さは!!校則違反だろうが!!」 「ぎゃぁーーーー!!どさくさに人のスカート引っ張んないでよ、この変態パーマ男!!」 「ルナ!!やめろよ、この馬鹿っ!!」 ルナマリアの怒りの膝蹴りがうなりをあげてチャンドラのあごを捉え、上空へと蹴り上げ。 それを続けざまに、絶妙なタイミングで元サッカー部のボレーキックが決まる。 「ほげぇーーーっ」 ルナマリアとシンの怒りの制裁を食らって吹っ飛んで戻ってきたチャンドラを拾い上げると、フレイはミゲルの前にほうって寄越した。 「これをあげるわ。だからキラは諦めて頂戴」 「あげるって・・・お前さんな」 ミゲルは足元に投げ出されたパンチパーマ男に口元をひくつかせた。態度がでかくて雑用にもつかえるかどうか怪しい男を押し付けられるのも真っ平ごめんだったからだ。 「なによ、同じ男よ。ホモなんでしょ」 女好きを唄って憚らないミゲルにとって其の言葉は最高の侮辱ともいえた。というかなぜホモ扱いされなければならないとミゲルは理不尽とさえ思っていて、其の原因がアウルに抱きついた己にあることなどさっぱり忘れているようだ。 「コラコラ!!俺はどうなる!!」 瞬く間に復活したチャンドラがつばを飛ばしながらフレイに食って掛かった。 まだ嫁さえもらっていないのに先に男に貞操を奪われてはたまらんと思ったのだろう。だがミゲルが仮にホモだったとしても彼からもお断りだったであろうと思われる。 「うるさいわね。私達の幸せのために尊い犠牲になってくれるんでしょう?」 「けなげだなぁ。執事の鑑だねっ」 「勝手に決めるなーーーーーぁっ」 「話を勝手に進めんな!!俺はホモじゃない!!」 腕を組んでにこやかにそうのたまう二人にチャンドラとミゲルが同じタイミングで食って掛かった。おホモ達は無理であろうが、もしかしたら二人は良いコンビになるかもしれない。 ミゲルとチャンドラが頭を爆発させている間、アウルはようやく意識を取り戻そうと・・・・ 「アウルせんぱーい!!あたしと全うな道に戻りましょう!!」 ・・・・・していたが、半狂乱になったメイリンの揺さぶりで脳をかき回され、なかなか回復できないでいた。 「だーかーら!!揺さぶんのやめなさいって!!」 「アウルー!!兄ちゃんだ!わかるかっ?!」 そしてそれはルナマリアとスティングが止めに入るまで続いた。 「だって・・・・」 先輩が・・・・と涙をためたまま、アウルの襟元を離そうとした時。 メイリンは襟元から覗く、幾重にも巻かれたサラシの下でもなお、立派な盛り上がりを見せる胸の存在に気づいた。 しばし呆然と見やり、自分の胸を見やり。そしてまたアウルの胸元へと目をやった。 そして其の次の瞬間。 「いやぁあああああああっ!!ミゲル先輩のせいでアウル先輩に胸がぁああああっ!!!」 しかもあたしより大きいっ!!と火がついたように泣き出した。 収まらないのはミゲルの方である。 ロック部の面子が彼に触れられるまい、と飛びのくを見て慌ててメイリンのほうへと滑り込んだ。 「なんでそうなるんだよ!!」 「だってぇっ!!ミゲル先輩に触られた女の子は皆妊娠するって言われてるモン!だから男だったら女にしちゃうんでしょ!!」 「どーゆー思考回路してんじゃーーーーー!!」 髪をかきむしって絶叫するミゲルの傍らで泣き喚くメイリン。 耳障りな声が二重奏となり、騒々しさを極めた。 「あのさ」 「何よ?」 騒々しさに頭痛を覚えたスティングが疲れたようにルナマリアの肩を叩く。 そして言いにくそうに口を開いた。 「ミゲルのせいじゃねー・・・・つーか今朝起きたらアウルのヤツ、女になってたんだ」 ミゲルとメイリンはぴたりと静かになり。 アウルの状態を知っていたロアノーク家の面子とシン以外は石のようにその場で固まった。 「うん・・・・女・・・・の子」 トコトコと気絶したままのアウルに近寄って彼の上半身を起こすと、ステラは胸元を見やすいように少しだけはだけさせた。 さらしの下でこんもりと盛り上がった、白い双丘。 誰もが其の正体を理解した時、ミゲルは勝ち誇った声を上げた。 彼は本能でアウルが女であることを感じ取っていたのである。女好きミゲルはやはり伊達ではなかった。 「だろ〜〜〜〜っ!なんか可愛いなぁって思ったのはやはり!!どれ、下もかっ」 「しょーしに乗んなっ、この変態!!!」 身の危険を本能で感じ取って意識を急回復させたアウルの蹴りがミゲルの顔に本日二度目の、大ダメージを与えるのでった。 事情を聞いた一同に頭のてっぺん肩つま先まで、時にはひっくり返されながらじろじろと見世物のように見られた挙句、ラスティやキラに見た目変わっていないじゃない、といわれたアウルは憤死しそうになっていた。 彼らを気の済むまで殴りたくて仕方なかったが、ここは我慢して知恵を貸してもらうしかなかった。もとに戻るために。このままではステラを嫁にもらうことが出来ない。アウルにとってそれが何よりもおおきな問題であった。 「なんか信じられないですけど、見てしまった以上信じるしかないですね。とりあえず、同じような件が過去にあったかどうか調べてきてください」 「はっ」 もう既に遅刻だったが、とりあえず、学校へと皆を促すと、ニコルはてきぱきと自分の部下たちに指示を出した。 だが支持を受けたにも拘らず、黒服はなかなか動かない。心なしかちらちらとしきりにミゲルの方に視線をやっていた。まだ誤解がとけきっていないらしい。 「下がって良いですよ?」 「ですが・・・・・」 「誤解だったのも貴方も分かったでしょう?」 「・・・・はっ・・・・」 いまだ渋る男にニコルは大丈夫とにっこりと笑って見せた。 穏やかだが反論を許さない響きを持つニコルの言葉に黒服は観念したようだ。 いつものようにきっちり10度の礼をすると、部下にも視線を走らせて合図を送る。 「若・・・・せめてこれを」 そして男は立ち去る間際にニコルに差し出してきたものは護身用にと手のひらに収まる小型銃だった。 皆があっけに取られている間、くれぐれも、と黒服の男はささやくと他の部下と共にあっという間に姿を消した。 「・・・・物騒だな・・・・」 顔を引きつらせるミゲルに使わなければ危なくないですよ、とニコルは笑った。 「それに僕は先輩を信じてましたから」 「うそつけ!!」 さてロアノーク家とその他の面々は1時限目は逃したが、2時限目はどうやら間に合った。 1年の主任を勤めている教師はネオから信じられないけれど見てしまった以上信じないわけにもいかない(ニコル談)事情を聞いていたらしく、アウルの状態を見ると小言もそこそこに彼らを解放してくれた。 小言・・・・と言っても注意を少々したのみであったのだが、ただでさえ個性的な生徒の集まるこの学園でも最も個性的な面々を前に早くもひどい疲労を感じていたようだ。がっくりと肩を落とし、ハンカチでしきりに汗をふきながら胃を抑えていた。 彼としては安泰な老後のために就職した教職であったのだが、老後はともかく、胃の安泰は既に危険にさらされつつあった。 「ネオのやつーーーー!!」 「良いじゃない、どうせすぐにばれるんだから」 余計なことをと怒るアウルにルナマリアは笑って水頭をこづいた。 今のアウルはルナマリアより頭一つ分は低かった。 さらにステラよりも若干低くなっている事にも気づいたが、ルナマリアは逢えて口にしなかった。 理由は簡単。 とてつもなくうるさくなるからだ。 ステラも心配そうにアウルを見ていて。 「アウル・・・・大丈夫。ステラ、守ってあげるから」 「・・・・しばらくこの身体も良いかな」 「・・・・おい」 ステラの言葉にコロリと機嫌を直すアウルにこいつは馬鹿だと改めてシンは認識するのであった。 アウルの噂は学園に瞬く間に広まり、彼方此方から見物人が来たが、アウルの見た目が全く変わらないことに皆はつまらなそうに帰ってゆく。中にはもっとが可愛げがあったら良いのに、という不届きな輩がいて、そういうものにはアウルからの容赦のない制裁が待っていた。 個性的な面々の集まるシード学園。 騒がしかったのは初めの数時間で皆は普通にアウルを受けいれてしまっていた。 これで良いのかと、ヴィーノは常識人らしくぼやいたが、あのアウルのことだから何が起きても不思議はない、というのがシード学園の生徒の大方の意見であった。 肝心のシャニはまだ学校に登校してきていなかった。 アウルより一つ上のクラスにいたクロトの話だと、昨夜アズラエルと酒を飲みすぎて二日酔いのため、出てくるのは午後になるであろうということだった。 未成年で、しかも飲みすぎ。 親まで一緒になって二日酔いとは。 スティングやシンなら怒るなり呆れるなりして突っ込むだろうが、へぇと片付けてしまうところがやはりアウルである。どうやら彼はステラの一言で立ち直ってしまっていて、自分の身をさほど嘆いていないようであった。 それよりも、とクロトは濃い青を好奇心で輝かせ、今朝の噂を話題にした。 「アウルお前女になったってホント?」 「ほれ」 羞恥心も無く、平気で胸元をさらすアウルにクラスの女生徒はセクハラだと顔をしかめていたが、二人は全くお構いなしに騒いでいた。 「さらし巻いてもこんなにでかいのかよ。でっかい胸好きだったんだろぉ?よかったジャン」 クロトの言うとおり、白い胸はさらしの下で窮屈そうだ。 さすがにマリューサイズは行かないが、学年でも大きな部類にあるステラのよりも大きいことは確かだった。 大きな胸は嬉しいのに嬉しくない心境でアウルは複雑だった。自分が持っていても仕方ないからだ。 「るせー!!てめぇの胸見て喜ぶやついるかっての」 「ぎゃはははは!!でもさぁ、最初に見た時はぁ、歓・喜!!したんじゃない?」 「な、なぜそれをっ?!」 「やーい、おっぱい星人!!」 そういうふうにいつもと変わらない、平和に時間は流れていったが・・・・・。 問題は体育に時間に起きた。 体育が終われば待望の昼食だ。 女子は女子更衣室へと向かい、男子は残って教室で着替えだ。 頑張るぞーーーとアウルはいつものように着替えようとシャツに手をかけた時、隣の席のヴィーノから遠慮がちな声がかかった。 「アウル。あ、あのさ・・・・」 顔を紅くしたヴィーノが何かとても言いにくそうにもじもじとしている。さっさと着替えを済ませてしまいたいアウルはめんどくさげに彼に話を促すと、ヴィーノは視線を泳がせながらアウルの傍によると、二人の間だけに聞こえるようにささやいた。 「ここで着替えない方が・・・・いいと、おもうよ・・・」 「あん?」 「だって・・・今女の子だから・・・・」 「あ」 自分の状態を思い出すと、今度は自分に集中する教室の視線にアウルは気づいた。皆目を皿のようにして食いるようにこちらを見ている。 「どこ見てんだっ、てめーら!!」 アウルは顔を真っ赤にして怒鳴ると皆慌てて視線をそらしたが、もはやアウルが安心して着替えられる状態ではないのが明白である。 ヴィーノの勧めでアウルは女子更衣室に向かうことになった。 と・こ・ろ・が・・・・・・。 「きゃぁーーーーっ!!へんたーーーーい!!」 「ちょっとなんで男のあんたがここにくんのよ!!」 アウルが女子更衣室に入るなり、女子の抗議の声が上がった。 「今は女だよ!!」 「中身は男でしょ!!男と着替えなさいよ!!」 「ジロジロ見てきて着替えどころじゃねーんだよ!!」 「そんなの知ったことじゃないわよ!!出て行け、スケベ!!」 スケベ、という言葉にアウルの眉が跳ね上がった。 ステラならともかく(それはそれで大いに問題はあるのだが)興味のない女にそう言われるほど心外なことはない。 「あんだとーーー!!誰がお前らみたいな貧弱な身体に興味があるかよ!!悔しかったら僕みたいにプロポーションよくなってみろ、ボケ!!」 そういいながら露にした身体は確かに素晴らしいプロポーションだった。 平均以上に大きく、綺麗な盛り上がりを見せる胸に折れそうなくらい細い腰。ズボンのしたの下半身も綺麗な造形美であろうと思われた。 「どうだ、馬鹿女共っ!!」 馬鹿にしたように鼻を鳴らすアウルの態度は当たり前のように大半の女生徒達の怒りを買った。 先ほどと比べ物にならないほどの罵声がアウルを襲い、アウルは撤退を余儀なくされた。 ここは下手に出れば良いものをあえて怒らせるとは。 身体は女になってもやはりアウルであった。。 更衣室の奥でステラと一部始終を見ていたルナマリアは着替えながら深々とため息をついた。 「かばってあげたいのは山々だけどね・・・・・多勢に無勢だし」 「アウル・・・・」 心配そうにアウルの名をつぶやくステラは今にもアウルの後を追いそうだ。ステラに着替えを促しながらルナマリアもシャツを頭からかぶって、顔を出した。ショートカットの上にぴょこんと立った、トレードマークの一本毛が揺れる。 「今更あいつに裸見られてもなんとも思わないけどさ、他の子は嫌だろうね」 「どうして?アウル、今・・・・女の子」 ステラはワケが分からないと、他のクラスメイトたちに不満を持ったようだ。ステラの気持ちも分からないでもないが、クラスメイトの気持ちも痛いほどにも分かる。困ったなぁとルナマリアはなるべく両方に角を立てないよう、言葉を選んで説明をする。 「アウルの中身は男のままでしょ。それにアイツ、男子に人気あるけど、女子の中では嫌われ者の部類だからねー。普段が普段だから。因果応報ってヤツ?」 「どうして?アウル、何かした・・・・?」 「ン〜〜、やっぱ分かってなかったか」 意味ありげに笑うルナマリアにステラは小首を傾げて彼女を見やる。ルナマリアは純粋なステラが可愛くて仕方ないとでも言うように髪をなでてやりながら続けた。 「あんたにはまだわかんなくても良いと思うわ。アウルのヤツもまだそう自覚しているわけじゃないしね」 「?」 「其のうち分かるわよ。早く着替えてアウルを探そ?」 「ん・・・・」 ステラがまだ其のことについて聞きたがっていたのは分かっていたが、ルナマリアはそれ以上話題にしなかったのは彼女としてはステラ自身で気づいて欲しかったからだった。 それにシンの事もある。 彼女はアウルもシンも両方を応援したかった。 ルナマリアはステラに微笑んで見せるとまだ着替えに手のつかない彼女を手伝おうと傍に歩み寄った。 そして其の頃。 「くっそーーー!!あの馬鹿女共、覚えてろっ!!」 男子トイレの中から悔しさに満ちた呪詛が聞こえてきていた。 あとがき Which do you prefer?(どちらを選ぶ?) 男と女。 変わらない今と変化。 恋と友情。 たった一人か、不特定多数か。 人にはいつも選択、という分岐点にきます。 アウルたちもそうです。コメディの中に其の触りを入れてみました。 次回、シャニが登校してきます。 アウルの体の変化の原因があきらかに・・・・? ぶっ壊れカミサマ、再降臨・・・・の巻き。 |