青空の広がる屋上で澄んだ少女の歌声が響き渡る。
そしてその歌声に少年の柔らかいテノールが重なり、優しい旋律となっていった。

時には高く。
また有るときはささやくように
流れてゆく音の大河は
幾重もの壁を超え、
数多の空間をすり抜け、
聞く者に心の奥に眠る想いを揺り起こさせるよう。


そして幾つものフレーズの後。
クライマックスが近いのか
大河のように流れていたメロディ達は徐々に高まって行き、
重なりあった声が空に向かって大きく伸びると
青空に溶けて消えていった。

「・・・優しい曲だね」

歌い終えたステラは共に歌っていた少年―――シャニにそう言うと華のような笑みを浮かべた。

「・・・ステラがそう歌ってくれるからじゃないかな」

シャニは目の前の少女以外にはまず見せない透明な微笑を浮かべて薄緑の髪を掻き上げた。先ほどの曲はステラのためにシャニが作ったものであり、その曲にステラの詩がつけられた、いわば彼らの合同作だった。

「曲の解釈は人それぞれだよ。ステラが優しいと思ったからそうなっただけ」
「ステラがそう思ったから?」
「そう」
「そうなのかなぁ・・・・?でも本当にとっても優しいと思う。暖かくて元気をくれる、もの・・・」

そう言って小首をかしげる少女をシャニは愛おしそうに見つめていた。




そんな彼らの位置からでは伺いしれない、屋上の入り口の前で、腕を頭の後ろに組んだ水色の少年が壁に寄りかかっていた。
そしてその少年が二人の歌声に耳を傾け、彼が共にメロディを口ずさんでいたことに二人は気づくことはなかった。












第11話


部活動、それぞれ











「部員探しといってもどーする?」

ロック部の主であるミゲルから部員補充の厳命を押し付けられたラスティは相方のニコルと共にシード学園の中庭をぶらついていた。
シード学園には生徒達のくつろぎの場として中庭がある。
手入れの行き届いた緑の芝生に花の咲く花壇が季節毎に異なる顔を見せ、背の高い木々達が心地よい日陰を作ってくれている。
その下で仲良く級友達とおしゃべりをしている生徒たちの姿に俺もこんなあほな事していないでのんきに昼寝でもしたいよ、ラスティはぼやいた。
部活動というものは自分の意志から参加していくものであり、誰かにけしかけられたり、引っ張り込まれたりしてやるものではないと思うラスティは今回の件は気が進まなかった。

「そうですねぇ。まずは部活に入っていない方々を探すのが先決ですね」

ニコルは青空を見上げながら口元に指を当てて考えていた。

「このガッコに何人いると思ってんのさ?」

もっともなラステイの台詞だったが、
ニコルは口元から指を離すと大丈夫ですよと笑って見せた。

「この学校にクラブ名簿があるはずです」
「全校生徒の分をそう簡単に見せてもらえると思う?」

ラスティは安直だと呆れたが、ニコルの笑顔は揺るがない。彼は携帯を取り出すと、ピポパッとどこかに電話をかけた。相手はワンコールですぐに出たようだ。

「もしもし、僕です。シード学園のクラブ名簿を検索してクラブ未登録者を割り出してください。できるだけ早くお願いできますか?」

てきぱきと指示を出して行くニコルにラスティはいったい誰にかけているのだろうかと不思議に思った。

「データは僕に渡していただければいいです。よろしくお願いしますね」

ニコルが電話を切ると好奇の目を向けているラスティに向かって軽くウィンクして見せた。

「データはこれで一件落着ですね。
僕のとこのハッカーチームはとても優秀だからすぐに割り出してくれるでしょう」
「・・・・犯罪じゃないの?」
「見つからなければ犯罪になりません」

涼しげな顔でそう言ってのけるニコルに俺って意外と常識人かもとラスティは溜息をついた。



「若」
「おや、早いですね」
「はっ」

唐突に背後に現れた気配に驚いたラスティは身を翻えすといつぞやの黒服が恭しく、書類をニコルに渡しているところだった。
身にまとうは隙のない、鋭い空気。
そして自分に気づかれることなく、背後を取った黒服の男にラスティはこいつは只者ではないと舌を巻いた。

「ありがとうございます。助かりました」
「ありがたきお言葉。他に何かございますか?」
「ないです」
「・・・それでは」

黒服はピンと背中の張った、節度のあるしぐさで頭を軽く下げると瞬く間に姿をけした。このただっ広い所の一体どこに隠れているのだろうかとラスティは毎度毎度不思議でならない。

「ふむふむ。意外と少ないんですねぇ、参加していない方って」
「シャニみたいなユーレイ部員も多いんじゃない?」
「ふふ、そうかもしれませんね。でも絞りやすいでしょう?」
「やれやれ」

データを手にするなり、早くもやる気満々のニコル。
退屈凌ぎなら何でもいいんじゃないのラスティは面倒くさげに顔をしかめるのだった。




「今回のダブルスは男女混合だ。選手には学年なんて関係ないからな。練習次第で1年も試合に出れるんだからしっかりと練習しておけよ。2年も1年にレギュラーを取られないようにな」

ニコル達からそう離れていない所に位置するテニスコートで
テニス部部長ともいえるカガリの声が響く。
副会長も兼任している事もあって多忙をきわめる彼女だったが、部活には極力顔を出すようにしている。
副会長に着任した時点で部長をやめようと思った時期もあったが、部員達の強い要望で続投となり、彼女が不在の場合は副部長が彼らをまとめていた。

「久しぶりに顔を出したと思ったら試合の話かよ」

カガリの話を聞いていたシンが不満そうに鼻を鳴らすと、隣のルナマリアが止めなさいよ、と小声で彼を小突いた。

「しょうがないじゃない。彼女、忙しいもの」
「だったら部長なんて他のヤツにやらせればいいのにさ」

シンの言うことはもっともだ。
だが何かにつけてはカガリに毒を吐くのをやめない彼にルナマリアは頭痛を覚えられずにはいられなかった。

「もう。彼女だってそのつもりだったけれど、みんな反対したじゃない。それに彼女ほどここをまとめられる人いないわよ」
「ふん」


シンはカガリが嫌いだ。
いや、憎んでいるといっていい。
彼がそこまでカガリを嫌う事情を知っているルナマリアはそれ以上文句も言えず、溜息だけこぼれ出た。まったく何故よりによって同じ部に入ったのよとルナマリアは泣きたい気持ちだった。





「ねえ、ココに寄ってみない?」

一方。フレイと共に校内を回っていたキラはどこかの部室らしき部屋の前で立ち止まるとつられたようにフレイは部室の入り口の上にあったプレートを見上げた。

『電脳部』


「あ、キラ!!」

熱心にパソコンに向かっていたクロトだったが、
部室に入ってきたキラの姿を見るなり席を立ち上がって彼に駆け寄ってきた。

「入・部!?お前なら大歓迎だよっ!!」
「今日はちょっと。部活を物色しに校内廻ってるんだ」
「物色って・・・・お前なぁ」

キラの言葉に奥にいたサイ・アーガイルが苦笑して席を立ち上がった。彼は色つきのメガネがトレードマークの電脳部部長だ。ゲームやプログラミングの腕前はキラやクロトには及ばないものの、彼も屈指の実力者だった。

「あれ、フレイじゃん」
「クロト!」

クロトがキラの後ろにいたフレイに気づくと、彼女もクロトに気づいたのか紺青の瞳を輝かせて彼に抱きつく。自分以外にも抱き付く彼女に少し不満を覚えながらもキラは黙って再会を喜ぶ二人を見ていた。クロトは彼女を抱きしめたままくるっと一回転し、静かに下ろすとにっこりと笑って見せた。

「元気だったみたいだね」
「久しぶり。ぜんぜん変わってないわね、すぐ分かったわ」

フレイのはずんだ声にクロトは細いブルーをさらに細めて見せた。

「へえ〜。転校初日の場にいたけれどボクに気づかなかったじゃん?」
「ご、ごめんなさい・・・・。あのときはその・・・」

少しすねて見せるとしどろもどろになるフレイ。
少し意地悪だったかなと紅の少年はくすりと笑った。

「こうして顔を見れたからいいよ。オルガとシャニにまだ会ってないでしょ?暇あったら3Aの教室に行ってみな。会えると思うから」

クロトの口から出て来たオルガとシャニの名前にフレイは顔をわずかに曇らせ、うつむいた。昔世話を焼かせていたという自覚はどうやらあったらしく、会いにくいという心情を全身で訴えかける。

「・・・・オルガ、怒ってないかしら。それにシャニは苦手・・・。」
「オルガはお前のことを心配することあっても怒ることないよ。口は悪いけどさ。シャニだって話してみればいいやつだって。な?」

だがそんな彼女の不安を吹き飛ばすようにクロトが笑って見せるとフレイは安心したように顔を上げた。

「ありがと。近いうち顔を見せるわ」
「うちにも来なよ。おっさんも飛び上がって喜ぶと思うぜ。
『いやったぁあああああああっ!!』ってさ。それに彼女も紹介したがると思うし」
「・・・・叔父様に?」
「正確には一歩手前だけど。今年中にはボクらの母さんにするって張り切ってるよ」

アズラエルの恋人?の存在に驚くフレイ。
その事実にキラもサイも驚いたようで聞き耳を立ていた。
彼らとしてはあの変わり者と有名なムルタ・アズラエルを受け入れる酔狂な女性が存在したという事実は七不思議といえるべきことだった。

「くっそぅ・・・・。俺にもまだ彼女いないのに、あんな変人に彼女ができるなんて〜〜!!ありえなーーーーいい」

髪の毛をかきむしって悔しがるサイの傍らでキラは好奇の紫を瞬かせた。

「ねえ、その変わった・・・・、じゃない。おもしろい・・・・じゃなくって!!えーと・・・・」
「無理すんなよ。ボクも騙されてると思ってんだからさ。悪いけどまだ言えない。でも多分ビックリすると思うよ」
「ふーん。その時は一番に教えてよ?」
「アウル達の次だから2番目に、ね」
「なんだよー」

互いに顔を見合わせてくすくす笑いあう。
クロトの腕にぶら下がったままでいたフレイは会話が途切れるのを待っていたかのように紺青に喜びの光が踊らせ、声を弾ませた。

「早く会いたいわ!!今週末行ってもいいかしら」
「今週末ならおっさんいると思うけど、一応連絡して」
「うん!!今夜電話する!」

先ほどの抱きつきといい、今の反応といい、いつも大人びていると打って変わって幼くなっているフレイに嫉妬を覚えたキラは口端をわずかにへこませて彼女の手をとった。

「フレイ、行くよ」
「え?痛いわ、キラ」

フレイの抗議に耳を貸さず、キラはずんずんと部室の出入り口へと向かった。そして扉を開けると、クロト達を顧みてにっこりと笑った。

「じゃあ、僕ら行くから。まだクラブ見て廻ってないんだ」
「あ、うん。じゃあ、ね・・・・」

嫉妬の潜むキラの黒い笑顔にクロトは顔を引きつらせ、手を振った。扉がしまってキラの気配が遠ざかると、彼は部長であるサイに向き直り、彼に謝る様に手を合わせた。

「悪い!!貴重な入部希望者逃したかも」
「やっぱなー。友情よか女か、あいつ」

そしてそんなクロトに分かってるよとサイは苦笑するのだった。



再び部員探しに奔送するロック部。
3年のミゲル・アイマンは受験勉強そっちのけに部員の勧誘にあたっていた。廊下を行き交う生徒達を捕まえてはロック部を売り込み、楽器ができると知ると、熱心に入部を薦めていた。

「ボク、吹奏楽部なんで・・・・」
「そんなのは今どき流行らねぇぞ〜。退部届ならここにあるぜ?どうだ、うちに入部してみろ!」
「無茶言わないでくださいよ〜」
「ち、つれねーな」

だが先ほどから空振りばかり。
ミゲルの姿を見るなり回れ右をする者さえもい出る始末。
数日前の放送ジャックといい。
素肌に制服に部室での宴会といった校則を無視した普段の素行振りといい。
学園祭での暴れっぷりといい。見ていて楽しいが、行動は共にしたくないと思われるのも今までの無茶振りからすると当然といえよう。

「授業サボって何やっていたんだよ」

後ろ頭を軽くはたかれてミゲルが振り返ると呆れ顔のスティングが教科書とノートを手に立っていた。そのすぐ後ろにはやはり呆れ顔のオルガが。

「見てのとおり部員探しだ」

悪びれずに胸を這って見せるミゲルにスティングは溜息をついた。

「お前な・・・・。またサボリかってイザ―クがカンカンだったぞ。
この前も放送ジャックしてただろう?
規律を乱すなぁって頭を爆発させていたし。
そのうち憤死するぜ、あいつ」
「進学できねぇぞ。そうなったらハイネになんて言う?」

オルガの口から出てきたハイネという名にミゲルはわずかに顔をしかめた。

「うるせーな。進学よかハイネ先輩のいたロック部を潰す訳にはいかねぇんだよ」

それがミゲルの本音なのだろう。
ハイネことハイネ・ヴェステンフルスは去年卒業していったスティング達の先輩で有り、ロック部の中心人物だった。またハイネの気さくできっぷの好い性格から同年代だけではなく、後輩達の間でも人気者だった。
現在シード学園の大学部に所属しているが、卒業と同時にロック歌手デビューを果たした彼は多忙でなかなか大学に顔を出せないらしい。
ミゲルはそんな彼を尊敬し、彼と共に過ごしたロック部を特に大事に思っていた。やり方に問題はあるが、それはスティングもオルガも知っている。オルガはふとハイネの話題で思い出したように彼のうわさ話を口にした。

「そういやぁハイネのヤツ、なんか最近アイドルデュオの片割れと噂になってるな」

オルガの言葉にスティングも記憶の糸をたぐらせる。

「ん?ああ、なんてったっけ?あのピンクの」
「忘れた」

二人はなんだかんだと言いあっていたが、どうやってもその歌手の名前を思い出せないらしい。ピンクのアイドルデュオと聞いただけで誰のことかすぐに思い当たったミゲルはそんな二人に呆れたように大きく息を吐き出した。

「おいおい。お前等、プラントの歌姫達を知らないのかよ?」
「知るか。アイドル歌手なんぞ皆同じに見える」

胸を張ってそう答えるスティングにミゲルは女なんてみんな同じに見えると言い切った水色の少年をだぶらせた。この世に女という存在を生み出してくれて有り難うと、神に感謝して止まないミゲルにとってそれは驚愕すべき事であり、その少年の印象が今でも強烈に残っている。また彼は年はこの前のエスケープ事件の首謀者で有り、スティングの弟だとも聞いた。兄弟って似てるようなモンで似てないなぁとミゲルは素直に感心した。同時に稲妻のひらめきを感じ、彼は興奮気味に スティングの方へと向き直った。

そうだ!お前の弟、まだ部活入ってねーよな」
「あ?」

ミゲルの意図をつかめないで眉をひそめるスティングに、ミゲルは名案とばかりに
アウルの事を切り出した。

「どうだ!!お前の弟をロック部に」
「ああっ!?」

途端にスティングの金の瞳がつり上がり、般若の形相へと変わる。その後ろでオルガがミゲルのヤツ、地雷を踏んだなと十字を切っていた。

「てめーは俺の大事な弟を悪の道へと引きずり込む気か」
「あ、悪の道って、お前・・・」

ミゲルが言葉を言い切らないうちに、彼の前を何かが通り過ぎていった。彼の前髪寸断された。おそるおそる視線をずらすと彼のすぐ横の壁にカッターが刺さっていた。投げつけられた衝撃を物語るかのように壁に刺さったまま激しく上下に揺れている。つーと冷たい汗がミゲルの背中をつたう。
スティングは戦慄して青ざめるミゲルにかまわず、彼に指を突きつけて、ロック部を糾弾した。

「部室内での飲酒!!」
「いや、宴会はみんなやってるじゃねーか・・・・」
「てめーの場合、日常茶飯時だ!!」
「ぐ・・・」

「校則を無視した服装!!」
「お前の弟だって似たようなモンだろ・・・」
「やかましい!!素肌に学ランよかマシだっ!お前の場合、夏も学ランじゃねーか!」
「それは俺のファッションだし・・・・」

「放送ジャック、サボり、重役出勤!!」
「それはロック部関係ないだろうが・・・」
「先輩は後輩の手本だっ!!そんなんで俺の弟の手本になれるのかっ!?」
「ごもっともです・・・・って何でそこまで言われにゃならんのよ」
「黙れ!!」

スティングの嵐のような言葉のマシンガンにミゲルはたじたじだ。兄弟の事となると人格が変わる 親友の姿を見守るオルガの顔にさえ縦線が出ていた。こうなったスティングは誰にも止められない。

「極めつけは夜7時過ぎの活動!!」
「それはふつーだ!!」

さすがのミゲルも突っ込みを入れたが、スティングはすまして応えた。

「我が家の夕食は7時半と決まっている!!」
「んな無茶な」

ギロリ。


思わず吹き出しそうになったミゲルをスティングの鋭い視線が射抜く。
すんでの所で笑いを飲み込んだミゲルはもはや勧誘どころでは無い事を悟った。
スティングに戦闘モードのスイッチが入ってしまっている。
もはや何言っても聞く耳持たないだろう。

・・・・ダメだ。
この過保護野郎に何を言っても通じねぇ・・・・。
それどころか俺の命も危ない。

スティングのすさまじい殺気に流石のミゲルも身の危険を感じ、そそくさとその場をあとにしたのだった。



遠くで鴉が鳴いている。
空の太陽が大分傾き、辺りを真っ赤に染めあげていた。
部活を終え、下校してゆく生徒達がグラウンドの横を横切ってゆく。グラウンドではサッカー部が練習を終えたらしく、サッカー部員達は後片づけを始めていた。

「ねー、アウル」

サッカーボールを磨いていたヴィーノが近くでボールでリフティングしていたアウルに声を掛けると、アウルは顔だけそちらに向けた。ボールは相変わらず宙を舞っており、さっきからよく続いてんなぁとヴィ−ノは感嘆の声を漏らした。

「ねぇ、サッカー部に入る気ないの?アウルならすぐレギュラーだよ?」
「興味ない」

アウルに入部の誘いをにべもなく断られてヴィ−ノは不満そうにぶつぶつと文句を言った。

「ちぇー。アウルとならシンの時みたいにアシストしがいがあるのにな・・・」

ヴィーノの言葉にアウルは初めてボールを蹴るのをやめ、彼の方に向き直った。最後に蹴り上げられたボールはアウルの額で受け止められると、大人しく彼の左手の上に収まった。

「シンのヤツ、サッカーやってたの?」
「え?う、うん」

頷くヴィーノにアウルは瞳を不思議そうにしばたたかせた。

「じゃあなんでアイツ、テニス部にいるんだよ」
「そんなの知らないよ。高校に入ったとき、ルナとテニス部行っちゃったんだ」
「ふーん」

あーあ、つまんないとぼやくヴィーノをよそにアウルは再びリフティングを始めていた。




その頃。

「うーん、収穫無しですね。やっぱ評判悪すぎたせいでしょうか」
「日頃の行いってヤツ?」

校内を廻っていたニコルとラスティが部室に戻ってきていた。
本日は収穫がゼロだったらしいのだが、その顔に悲壮感はない。

「でもこの学校の事だからお祭り好きの方もいると思いますよ。根気よく行きましょう」
「やれやれ」


勧誘活動初日終了。
収穫、ナシ。
ロック部の未来はいかに・・・・?














後書き

ロック部勧誘編第2話。
各キャラの部活動を出してみました。
今回出てこなかったキャラの部活はこの次に。
シンの過去に触れる伏線を少し入れておきました。
まだまだ続きます。
次回アウル争奪戦の巻き。