くるくるくる。

カーテンの隙間からこぼれる朝日の光が枕元で踊る。

あたかもダンスをしているかのようにくるくると。

開いた窓から忍び込んだ風がカーテンが揺らす。

ステラ・ルーシェはひとつくしゃみをして目覚めた。

「〜ん？」

眠い目をこすりながら起きると開いた窓に目をやる。

どおりで寒かったのね、とぼんやり考えながらステラは窓を閉めた。

ステラ・ルーシェはネオ・ロアノークの一人娘である。

上に２人の兄がいる。彼女と兄たちは幼いころ、孤児院からネオに引き取られた。

それから各地を転々として周り、去年の春にこの家に落ち着いたのだった。

誰一人として血はつながっていないが、ステラはこの１６年間、そのことを気にしたこともなかった。

それ以上に家族の絆は固かったから。

ステラ・ルーシェ。

ぼんやりとした性格のせいか若干幼く見えるが、花の１６歳。

彼氏なし。

・・周りのガードが固すぎて男子が近づけないとの談があるが。

第１話


ロアノーク家の朝

「起きたか。おはよう」

「・・ん、おはよう」

エプロン姿のスティングがシンに茶碗をよそいながらステラに声をかけてきた。

兄弟の中で最年長のスティングはこの家を切り盛りしている、この家の長男だ。

過保護なところはあるが、しっかり者の１８歳の少年で、今年受験生である。

見た目は鋭利の刃物のようだが、

優しく、周りへの気配りを忘れない。奔放な父と個性的な妹弟のせいが気苦労は絶えないが、

妹弟が可愛くてしょうがないらしい。

「おはよう、ステラ。あとちょっとで起こしに行こうと思っていたんだ」

茶碗を受け取りながらステラのクラスメイト、シンがテーブルの向こうで微笑んだ。

シンはステラと同じ１６歳でお隣さんだ。ステラ達は去年の春ごろ、彼の隣に越してきたのだ。

両親と妹が一人いたのだが２年前、不慮の事故で亡くしおり、親戚に引き取られたのだという。

少々短気だが、優しい。こちらに越してきたばかりの時、海に落ちたステラを助けてくれたことから

ロアノーク家との縁が始まった。シンを引き取った親戚は今外国に出張中ということもあり、こうして

ロアノーク家に出入りしている。

「ネオとアウルは？」

「ネオは今日は休みだからまだ寝ている。夕べ遅かったからな、起こすなよ？」

「・・うん」

ステラは残念そうにため息をつくとシンの向かいに座った。

ネオはこの家の家長だ。

仮面をつけ、孤児を３人も引き取った変わり者である。

職業は生物教師でシード学園の理事の一人でもある。素性は不明。自由奔放な性格で

やんちゃんなところがある。仮面はどうやら嫁さんがくるよう、願をかけているらしく、

人前ではずそうとしなかった。

３人も食い扶持を抱えて日夜いそがしく、なかなか一緒にいられないがステラはネオが大好きだった。

「ちなみにアウルはまだ起きてきていない」

「・・起こしてくる」

「いいよ、ステラ。あんなやつ、ほっとけばいいんだよ」

起こしに行こうとするステラをシンは顔をしかめて制止する。

アウルはステラ達より１つ上の１７歳。本来ならば２年なのだが、留年したためステラと同じ学年だ。

クラスは隣なのだが、ステラのクラスにほとんど入り浸っている。

美少女と見まごうばかりの容姿とは裏腹に口と態度が悪く、父と同じく自由奔放な性格だ。

何かとステラをいじめてくるが、なんだかんだいってステラを助けてくれたりもする。普段は意地悪なくせに

たまに優しい、気まぐれな天邪鬼である。

そんなアウルとシンは犬猿の仲だ。

何かとそりが合わないらしく、度々けんかする。

その主な原因がステラにあるのだが、当の本人はそれを知る由もない。

「・・起こさないと遅刻しちゃう」

「〜〜。じゃあ、俺が起こす。ステラはご飯を食べてて」

「うん」

アウルの部屋へと向かうシンの背中を見送るとステラは朝食に箸をつけた。

どかーん。

カタカタ。

食卓が揺れた。

ステラは箸をとめるとシンが消えた方向ーーアウルの部屋のほうへと視線をやる。

派手な轟音がおさまると、今度はアウルとシンの怒鳴り声が家に響いた。

「なんなんだよっ、オマエはっっ！！」

「起こしに来てやったんだよ、この馬鹿！！」

「なんでオマエがくんだよ！！けりまで入れやがって！！」

「起こしてやっただけありがたく思えよ！！この恩知らず！！」

「なんだと！お前、死ねよ！！」

「・・起きたみたいだな」

スティングは動じた様子もなく、ご飯をよそうと大きく息を吸った。

それを見てステラは耳をふさぐ。

「いーかげんにしろ！！遅刻するぞっっ！！さっさと飯を食え！！」

ガタガタ。

家中の窓が揺れた。

---同時にさっきまでの怒鳴りあいが静かになる。

ロアノーク家の朝はいつもこうして始まるのである。

余談。

「う〜ん。元気がいいのはいいんだけどね〜。俺の休みの日にやられるとちょーっと

こまっちゃうかなぁ・・。なんてね・・。・・・慣れたけどさ・・」

父、ネオの唯一の悩みだった。









後書き

設定を後から作ったので色々矛盾が出ていたので直しました。
明るい学園物でオルガ達も出ます。
次回アウルとシンの大げんか。
スティングの兄貴の受難・・の巻。