注意

脳内設定はステイング達はミネルバとAAと共に
ザフト・連合と戦った設定になってます。この設定でも
OKよ、という方のみご覧くださいね。
キャラも結構偽物っぽいですが・・。
















戦争終結が終結して2年。

リハビリを経た3人はオーブの小さな港町に落ち着いた。

決して楽な道ではなかったが、オーブ代表の口添えもあり

彼らは港沿いに小さな喫茶店を構えることになった。

この小さな喫茶店で彼らの新しい生活が始まろうとしていた。







最初のお客

ふぁんたむぺいんへようこそ












「これでよし」


店の窓全てをぴかぴかに磨き終え、

スティングは満足そうに一息をつくと

傍らのコーヒーに手を伸ばして一口すすった。


コーヒーの程良い苦みと香ばしさが口の中に広がる。

自画自賛ではあるが、これならお客に出しても恥ずかしくないだろう。

スティングは笑みを浮かべると店の振り子時計に目をやった。

途端、眉間に皺が寄る。


「アイツら、まだ寝てんのか?・・っとに明日開店だというのに。やれやれだぜ」



アイツらとは当然、アウルとステラの二人のことだった。

店の奥に戻ると まずは真ん中にあるステラの部屋の扉をノックする。


「おいステラ、そろそろ起きてくれ


だが返事はない。


「・・・?」


もう一度ノックはしてみたもののやはり返事はなかった。


「・・ステラ、入るぞ」


外から声をかけて慎重にノブを回すとあっさりと開いた。

中をのぞき込むと誰もいない。

ベットは乱れておらず、寝た形跡がなかった。

・・とういことは。



「・・・勘弁してくれ」



スティングはそうつぶやくと天井を仰いだ。

案の定。

一番奥にある、アウルの部屋の前に来ると、かすかだが、

中からステラの甘い声が聞こえてくる。


「アイツら、今何時だと思ってンだよ」


思わず頭をかかえたくなった。

人の恋路を邪魔する気は毛頭ない。

誓ってない。

ないっっと言ったらないっ。



だがアイツらの場合、度が過ぎるような気がしてならないのだ。

おまけにあの二人はスティングに情事を見られても一向に気にする様子がない。

キッチンだったり、風呂だったり(流石に喫茶店ではなかったが)、おかまいなしだ。

たまらず避難したことが何回遭ったか。

頼むから少しは気にしてくれと此方が泣きたくなる。



「おい、アウル!」


覚悟を決めて部屋の外から声を張り上げると、中から

アウルが応えて来た。


ん〜、なに?」


あえてステラのことに触れず、単刀直入に用件だけを述べる。


「おい、今11時をまわってんだぞ!いい加減起きてくれ。明日開店だぞ?分かってんのかよ?」

「わりぃ、もうちょっと待って」


アウルがそう言うとステラの声が一段大きくなった。


「やぁっっ・・・ん、アウルぅ」


「ステラ、かわいい・・。食べちゃいたいなぁ」


クスクスとアウルの忍び笑いも聞こえる。


「もう・・っ。あっ・・。・・ひいぁ・・あっ・・あぁ・・・っ!!」


様子からしてアウルはステラを絶頂に追い込むことにしたらしい。


おまえらぁ・・・。


一段と高くなっていくステラの声を背に

スティングは脱兎のごとく、喫茶店の方に逃げ出した。




「わるーかったって言ってンじゃんよぉー、スティングー」



アレから小2時間。

シャワーをあびて着替えたアウルとステラは喫茶店で遅すぎる朝食をつっついていた。


「昨日あれだけシたのに放してくれないんだもの・・アウル」


「だってお前可愛いんだもん」


言っている側からいちゃつき始める二人に

ステイングの一喝が飛ぶ。


「やめんか!店の中をピンクにするなっ!

「ピンク・・・?スティング、ピンク、嫌いなの?

でもここ・・あんまりピンクの物おいてないよ・・・?」


きょとんとしてステラは店内を見まわす。

店内の茶色を基調とした暖かなコーディネイトはスティングが決めたのだ。

当然ピンクはあまり見あたらない。


「・・・そう言う意味じゃねぇよ」

「?」


ステラの天然にスティングは一瞬和んだが、次のアウルの言葉で彼は激昂した。


「あんま気にすると某Aさんのようにおでこ後退するよぉ?」

「黙れ!あんなになってたまるか!」

「うっわー、暴言」


アウルは大げさに肩をすくめてみせると、コーヒーをすすった。

そんな彼に言い出したのはてめぇじゃねえかと文句をたれつつも、

スティングは無意識に自分の生え際に手をやっていた。

そんなとき。

ふいに後ろの方から風が吹き込んだ。


からんからん。


来客を知らせるために下げたベルが鳴る。

だが。

まだ準備中の看板を下げ、鍵の掛かっているはずのドアが開くはずがない。


「なんだ・・・?」


と皆一斉にドアの方に目をやったが、ドアはしまったまま。

開いた窓の白いカーテンだけが風に揺れていた。

風のせいかとドア視線を外すと、一番端に座っていたスティングの

横から凛とした声が響いた。



「・・・あら。まだ開店じゃなかったの?」


驚きに視線を向けると白いワンピースに身を包んだ女性が立っていた。

歳はステラくらいだろうか?

燃えるように紅い髪に大きな濃いネイビーブルーの瞳。

何よりも印象的だったのが、瞳に宿る強い、だがどこか慈愛に満ちた光だった。


でもなにより。

何処か。

3人は何処かで彼女にあったような気がした。



「すみません。開店は明日からでして・・。」

「そう。・・残念ね」



そう言って少女は寂しそうに微笑んだ。

少女の素性も気に掛かったがその寂しそうな微笑にスティングは

せっかく最初の客をそのまま帰すのに忍びない、と思った。

彼はカウンターに周り、サィフォンで

煎れたばかりのコーヒーを出すと、席を勧めた。


「・・サービスです、どうぞ。開店前なので大した物は出来ませんが」

「・・好いの?」

「もちろんです」

「試作品のケーキだけど食べる?おじょーさん」

「あら、嬉しいわ。ありがとう」

「いえいえ」


アウルは手製のケーキを

少女の傍らにおくとちゃっかりと隣に腰かけた。

途端スティングは眉をひそめた。


「おい、お客様なんだぞ?」

「いーじゃん。堅いことなしなし」


そう言ってアウルはとがめるスティングに手をひらひらと振ってみせる。



「アウル!」


スティングが再び一喝したが少女は涼しげに傾けて言った。



「私は気にしないけど、そこの女の子は好いのかしら?」

「・・・」

その言葉にアウルが慌ててステラの方を見ると

不機嫌そうに此方を睨む彼女と目が合う。


「あ、ステラ違うって!」

「知らない」

「あ〜ステラ〜」

「知らない」

「彼氏さんも困っているようだから許してあげたら?」


クスクスと笑う少女。

何とかステラの機嫌を直したアウルが

少し離れて(彼にしては)控えめに声をかけた。


「最初のお客かぁ。僕はアウル。どっから来たの?」


マリンブルーの瞳に好奇心を覗かせる彼に

彼女はネイビーブルーの瞳を細め、笑った。


「ふふ。ここから近くて・・そして遠いところよ」

「謎かけみたいだね?」

「そうかしら?」


少女はコーヒーをすすると何処か遠くを見るような眼差しでつぶやいた。


「・・戦争が終わったのね、ようやく」

「そうですね」



スティング達もその言葉に

昔のことに想いを馳せた。

彼らはその戦争の当事者で有り、開幕者だった。

カオス・ガイア・アビスの強奪。

ユニウス・セブンの落下。

開戦。



2年前自分たちが戦いの幕を上げたとき、

今こうしているだろうとは想像もつかなかった。

幾度となく死闘を繰り広げ強奪したガンダムは大破した。

今ここに在るのも半ば奇跡みたいなものだった。

今まで奪ってきた命に対する贖罪の意味も込めて、

彼らは今を生きている。

そんな彼らの心情を知ってか知らずか、少女はコーヒーを

飲み干すと無邪気に微笑んだ。


「このコーヒー、おいしいわ」

「ありがとうございます。喜んで頂けて俺も嬉しいです。

お替わりはいかかがですか?」

「いただくわ、ありがとう」


素直な彼女の笑顔にスティング達も微笑んだ。

客のこの顔が見たくてスティング達はこの店を始めたのだ。

スティング達の犯した罪は償いきれないだろうけど、

償いのため。

そして自分らの『救い』のため今、ここに在る。



コーヒーの香りと湯気があたりに立ちこめる。

カップに視線を落としたまま、少女はゆっくりと言葉を紡いだ。



「私ね、ある人に会いたくてこの街に来たの」

「あるひと・・?」

そうくり返したのはステラ。


「恋人?」


とアウル。


「・・ちょっと違うわ。とても大事な人。

彼に伝えたいことがたくさんあってここに来たの。

4年前に伝えられなかったことを」


「4年越しかぁ・・。長いよなぁ」



「・・そうね。ずっと伝えたかったのだけれど、伝えられなかったのよ」

「・・でどうだった」

「ふふ、どうだったと思う?」

「あんた笑ってンじゃん」

「そうね」


くすりと少女は笑って続ける。


「彼ね、とても泣き虫だったのよ。なのに守りたい物に対して必死だった」

「まも、る・・・」

ステラにそうよ、と微笑むと少女は続ける。



「でも結局守れなかったって、彼泣いていたわ。泣かないで、と言っても

彼には私の声が届かなかくって。それが4年前。停戦後もなお彼は自分を責め続けてた。

それこそ彼が壊れてしまうほど。私、何も出来なかった。

伝えたいのに。心を閉ざしてしまっていた彼には私の言葉も届くかなくって」


最後の声は震えていた。


「そして大切な物を2年前守れなかったから、

今度こそ守ろうってあやまった道を選んでしまった。

自分が戦争を停めて皆を守るって。

守る物を勘違いしてしまったのよ」


彼女の言葉にスティング達は少女にますますひっかかりを感じていた。

彼女のいう『彼』は彼らの知る『彼』と似ている。

否。

むしろ彼ではないか。

『キラ・ヤマト』。

AAのエースパイロット。

この少女は一体誰なのか?


アウルが横でぽつりとつぶやいた。


「似てンな、俺らの知ってるヤツと。でも泣き虫じゃなかったよなぁ」


「違う。・・涙を忘れてしまった・・っていってた。あの人」


彼の言葉にステラが応える。


「綺麗事と分かっていても犠牲を出さない事を望んでいた。

殺したくねぇ。殺させたくねぇ。だが結果、より多くの犠牲を出した。

アイツはそれが気づけねぇ馬鹿だった」


とスティング。

だが少女は。


「馬鹿って言わないで頂戴。・・馬鹿だったけど。あなただって間違いは

たくさん起こしてきたのでしょう?」

「・・・」


スティング達は黙ってしまった。

真実だったから。

生き残るためとはいえ、数え切れないほどの命を踏み台にしてきたのだから。

まるでそんな彼らのやってきたことが分かっていたかのように、少女は

怒った。だがすぐ表情を和らげて。


「でも2年前の戦いで彼は。キラは救われたわ。立ち直れたの。

AAやミネルバの人たち。

アスラン・ザラやシン・アスカ。

カガリ・ユラ・アスハ。

不本意だけどコーディネーターの歌姫であるラクス・クライン。

そして・・あなた達のおかげで。

だから私はここに来た。あなた達に会いたくって。お礼を言いたくて」


少女は慈愛に満ちた眼差しで手を伸ばしステラの髪に触れた。

愛おしむかのように彼女の髪を撫でる。

その優しい感触に「母」を感じ、

ステラは胸がいっぱいになった。


「あいたかったわ。知り合いからあなた達のことよく聞いていた。

ホント、彼らの言ったとおりの子達だったわ」

「あんた、だれ?」



アウルの問いに少女は少し悲しげに首を振った。


「・・自分から名乗れないのよ、ごめんなさいね。ヒント。元ドミニオンクルーよ」


「む〜」


彼女には見覚えがあった。

だが。

一向に思い出せないのだ。

その時、振り子時計が時を知らせた。

時計は午後4時を指していた。

その音に少女は名残惜しげに席を立った。


「ごめんね・・もう行かなくっちゃ。おいくら?」



「お代は好いです。最初のお客様なので」

「そう。有り難う。楽しかったわ」


首を振って代金を断るスティングに少女は素直に

礼を言うとと、扉に向かった。

そしてノブに手をかけたとき、何かを思い出したかのように振り返った。


「そうそう。あなた達へ、MS乗りの知り合いからのことづてよ。

ロドニアの後輩へって」


『MS乗り』『ロドニア』という2つの単語に3人は息を呑んだ。
その言葉に当てはまる者は彼らが知っている限り3人しかいない。                                          
     
そう。
『あの』3人しか。
でもあの3人は既にいない。
この人・・。
この人はまさか。


アークエンジェルを。
ザフトを。
ドミニオンを知っていて。
彼らの『先輩』を知っている。
不可解なパズルのピースが次々と埋まっていく。
そして一つの答えに行き着いた。
キラ・ヤマトが大切に持っていた、一枚の写真。
キラと共に微笑む一人の女性。
紅い髪。
ネイビーブルーの瞳。

まさか。
でもあり得ない。
そんな事があるわけがない。
なぜならば彼女は4年前。



「なんて・・。なんて言った・・んですか?」

かすれた声で問うスティングに微笑むと

少女は一言告げた。





「『生きろ』ですって」






「その、ありがとうございました・・。

また来てください。その・・」



こう言うのも変な気がしたけど。

お元気で、とスティングが言うと。

有り難う、あなたもね、と扉の前の彼女は微笑み、

ゆっくりとその扉を閉めた。


「あ・・」


からんと。


ドアが完全に閉じられ時、ステラが声を上げた。


「色紙描いてもらうの、忘れた」


「あ!記念すべき一人目だったのにな。ちょっと待ってよ、フレイさん!」



アウルは色紙を受け取ると勢いよくドアを開けた。

だが、先ほどの少女の姿はもはや何処にもなく、

そこには一陣の風が吹いているだけだった。







後日。

キラ・ヤマトがスティング達の元を訪れた。

彼女の夢を見て。

その夢の中で彼女は笑っていたと。

最近まで繰り返し、繰り返し見ていた彼女の夢は。

4年前。

彼女が目の前でクルーゼに殺される夢。

でも先日の彼女は。

笑っていたと。

生前と変わらぬ美しさで。

変わらぬ優しさで。




キラはもう大丈夫ね。


私のことはもう忘れて好いから。

しっかりと生きて。




・・ねえキラ。

私。

あなたを沢山傷つけた。

あなたを利用もした。

でも愛していたわ。

本当に愛していたのよ。

あなたの優しさ。

あなたの純粋さ。

とても愛しかったわ。

そんなあなたにどれだけ救われたか。

あなたがいなかったら。

私は。

ひたすら

コーディネーターを恨みながら。

憎みながら死んでいったかもしれない。



ねえ、キラ。


・・最後に私のわがままを聞いて欲しいの。

最初に忘れて好いわ、と言ったけど。

やっぱり。

やっぱり少しで好い。

少しで好いから、私を覚えていて。

ねえ、キラ。

愛してるわ。
















少女が訪れた日は9月27日。

第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦が。

戦争が停戦を迎えた日。

そして。

フレイ・アルスターの命日だった。











後書き

リアルタイムで見ていません。

単行本やフイルムブック(それも総集編)でのみ。

あとはネットでのSSのみ。すみません(土下座


稚拙ですみません。

でもフレイさんを描いてみたかったんです。

午後4時はフレイさんがお亡くなりになった時間・・と言うことで・・。

ここまで読んでくださって有り難うございました。