After the War ふぁんたむ・ぺいんへようこそ with Little Twin Stars アウル生誕記念 双子たちの名前変換 オーブは本来雪の少ない島国でめったに積もる事はない。 だが今年は例年と異なり、冷たく湿った空気がオーブを訪れ。 数年ぶりともいえるた雪がこの国に舞い降りた。 ふわり。 ふわり。 後から後へと降り注ぐ雪は徐々に町を銀世界へといざなう。 港町にあるふぁんたむ・ぺいんでも当然雪が降った。 既に暗い町の上に降り注ぐ雪が街灯の光を受けて淡い光を放つ。 きらきら。 きらきらと。 そんな雪のダンスを明るい光の漏れる大きな窓から見つめる二組の異なる瞳。 海を思わせるマリンブルーと。 去っていったはずの春を思い出させるすみれ色。 ふぁんたむ・ぺいんに住む小さな双子の兄妹。 と。 丸々とした小さな手と鼻っぱしをぺたりと窓に貼り付け、彼らの大きな目は期待に満ちて生き生きと輝いていた。 ニュースでは数年ぶりの積雪というニュースに彼らは雪が積もるのを今か今かと心待ちにしていて。 なぜならば冒頭であったようにオーブは雪が少ない国。 真っ白な雪が積もる冬は彼らにとって初めてだったから。 「心配しなくても明日には積もるからもう寝ろ」 そこへ穏やかな声と共に二人を包み込んだ体温。 双子に回された腕は二人をその持ち主に引き寄せ、頬が触れ合った。 「ほら。あんまり窓の張り付いていたからほっぺまで冷たくなってんぞ」 「ぱぱのはあっちゃかい」 「うん、ぽかぽか」 口々にそういいながら頬を摺り寄せてくる子供たちがたまらなく可愛くて 双子たちのパパ、アウルは二人を強く強く抱きしめた。 もうそろそろ3歳になるだろうにいまだ二人に残るミルクの匂い。 それはとても甘くてほんわかとしていて幸せな気持ちになる。 いつまでもこうしていたかったけれど、彼らを寝かしつけなくてはいけなくてアウルは名残惜しげ身を離すと立ち上がった。 「今日は遅いから、寝ような。明日にはきっといっぱい積もっている」 「ホント?」 「たくさんの、たくさん?」 キラキラさせる双子たちにアウルがうなずき、頭をなでてやると双子たちは素直に回れ右をしてとことこと居住区のドアへと向かう。そしてドアの前には双子たちのママであるステラが腕を広げて待っていて、アウルと同じように二人を抱きしめて口付けた。 「ねんね、しようね・・・・?ママが絵本読んであげる」 「うん」 「昨日のつじゅき、つじゅき」 その様子をアウルは目を細めて見守っていると、視線に気づいたステラが彼に微笑みかけたのでアウルは頼む、と片手をあげて笑って見せた。双子たちは居住区に戻る前にもう一度アウルを振り返ると彼に手を振り。 「ばいばい」 「おやしゅみなさい」 と声をかけ、カウンターにいるスティングにも手を振った。 「お休み。ちゃんとあったかくして風邪ひくなよ?」 「ステラがいるから、大丈夫」 「ははっ、そうだったな」 握りこぶしを作り、使命感に燃えるステラの姿にスティングは心強いと笑って見せた。 母は強し、である。 賑やかな笑い声を立ててステラと子供たちが居住区へと消えるとあたりは元の静けさを取り戻し。 コーヒーの落ちる音としんしんと降る雪の音だけが聞こえてくる。 「スティング、ちょっと早いけど雪がひどくなってきたから店じまいしようぜ。看板しまってくる」 「ああ、頼む」 カウンターのスティングが了承の意を見せるとアウルは店の看板を仕舞い込もうと外へと出た。 ドアを開けるととたん吹き込む冷気と雪の破片。 慌ててドアを閉めながら淡い光の中で踊る雪に見とれてしばしその場を立ち尽くした。 雪を見ると森の奥にあったロドニアを思い出す。 ロドニアも冬は寒くて雪が降り積もった。 寒々とした血なまぐさいところだったけれど、そこにはたくさんの想いが残っている。 母さん。 実の母ではなかったけれど、自分に生きる意味をくれた最初の人。 クロト。 先輩であり、最初の友人。 オルガ、そしてシャニ。 生き様を見せてくれたクロトと同じ先輩。 今はもう声を聞く事も姿も見る事もないだろうと思う人たち。 でも彼らの姿は記憶の中で鮮やかな姿を残している。 「おい、何やってんだよ。風邪引くぞ」 チビ達に風邪を引かせまいとしたお前が風邪引いてどうすると呆れた声が背後にかかる。 振り返るとスティングは心配そうな顔をドアからのぞかせていた。 心配性で世話焼きの兄貴分。 それもロドニアの頃から変わらない、大事な存在。 そしてステラも、また。 アウル。ステラ。スティング。 共にある事は今も昔も変わらない。 変わりたくない。 アウルははあいと間延びをした返事を返すと。 看板を持ち上げて玄関の明かりを消した。 翌朝、外は銀世界だった。 葉を落とした木々は樹氷と言う花を咲かせ。 建物も郵便ポストも。置きっぱなしになっている自転車もみな魔白い綿帽子をかぶり、ぽたりぽたりと雪の溶けた水が屋根を伝って落ちる音が聞こえてくる。 「「わーーーー」」 「こらぁ、!!!!」 喜びに満ちた歓声を上げ、興奮で目を輝かせた小さな双子たちがふぁんたむ・ぺいんから飛び出してきた。 セーターのみという防寒とは程遠いいでたちで双子たちは駆け回り、その後をアウルが必死になって追いかけた。 でも興奮気味の双子たちはちょろちょろと捕まらず、時には二人の投げた雪の玉がアウルに飛んできたりもした。 そんなふうにしているうちにが雪の中ですっ転び、ずっぽりと雪の中に埋まってしまった。 アウルは慌てての元へと駆け寄ると、娘の腕の間に腕を回して力いっぱい引っ張りあげた。 あたりに雪を撒き散らし、の小さな体が雪穴から救出されるのを双子の兄もいつのまにか傍に戻ってきていて心配そうを見ている。 救出されたの体は当然冷え切っていて、その蒼い瞳は涙で潤んでいた。 「てって・・・・」 「ん?」 差し出された小さな手は彼女の体より冷たく、真っ赤だった。 「てって・・・・ちべたいよぅ・・・・」 小さな娘がしゃくりをあげると、アウルと同じマリンブルーから涙が溢れ。 真っ赤な丸い頬を伝ってほろりと落ちた。 「ちべたいよぅ」 訴えるように繰り返される言葉。 手袋もせず、雪に触れ。 そう長い間ではなかったとはいえ、雪に埋もれた小さな手はしもやけが出来始めていて、氷のような冷たさだった。 アウルは小さな手を包み込んで息を吹きかけてやったが、目だった効果はなかなか見られず、 の涙はますますそのかさを増してゆく。 そしてそんな彼女がかわいそうでならないのかまでもがしゃくりをあげはじめ、アウルは途方にくれた。 このままでは二人とも揃って泣き出してしまう。 雪の最初の思い出が涙と言うのはあまりにも悲しすぎる。 そんな時ふっと思いついた一つのアイディア。 アウルはにんまり笑うと、セーターとシャツを軽く持ち上げ、懐にの手を入れてかぶせた。 の手は氷のようでアウルはその冷たさに一瞬眉を顰めたが、すぐに愛娘に微笑んだ。 「ぱぱ・・・・?」 の目が驚きに見開かれ、溢れた涙がまたコロリとりんごの頬を滑り落ちた。 「どうだ、あったかいだろ?」 アウルが笑って見せるとは涙を忘れ、今度は心配そうな目で彼を見上げる。 「ぱぱ・・・・ちべたくない?」 「パパは大きいし、強いから大丈夫。ほれ、僕の心臓も元気だろ?」 とくんとくん。 氷のよう冷たさに負ける様子も無く、心臓は強く、穏やかに打っている。 そして手のひら越しに伝わってくる力強い心臓の音とともにじわりじわりと冷え切った指に浸透してくる熱。 それはゆっくりとの手を包み込み、血の巡りをよくしていった。 「あったかいか?」 「うん、あったかい」 先ほど打って変わって嬉しそうには笑い声を上げるとほろリほろりと最後の涙が頬を滑り落ちて消えた。 グズリ出していたリ−ルにも笑顔が戻り、とことこと近寄ってきて二人を覗き込む。 「お前は平気か?」 「ぼく・・・・だいじょうぶ」 はそうはいうもののの手も紅くなりかけている。 まだの手は冷たい。 アウルがのも入れてやるかと思ったとき、白い手がの手を包み込んだ。 ステラ、だった。 マフラーに毛玉のついた帽子をかぶり、その腕に三組のマフラーと帽子。そして手袋を抱えている。 走ってきたのか、頬は上気していて、息も弾んでいた。 「まま」 が手の主に気づくと腕を広げてステラの腰に抱きついた。 膝を折り曲げて膝まずくとステラは腕の中に小さなを収めて彼を見上げた。 子供特有のぽこんとしたおなかがステラのあごに触れる。 愛しさで胸をいっぱいにしてステラはその腕に力をこめて抱きしめた。 「ママが来たから・・・・・もう大丈夫だよ?」 「うん」 アウルがステラとからに視線を戻すと、はニコニコと笑顔を返してきて、 「もう、だいじょうぶ。ちべたくない」 と元気な声を聞かせてくれた。 「そっか」 そんなに満足げな笑みを浮かべ、アウルが懐からの手を出してやるとその手は血の気を取り戻してほっかりしていた。ステラから受け取った手袋をの手にはめてやり、同じようにもらったマフラーを首に巻いてやり、仕上げに帽子を頭にかぶせてやった。 双子の賑やかな笑い声がふぁんたむ・ぺいん周辺に広がり。 朝早い道を行き交う人々が穏やかな眼差しを彼らに投げかけてくる。 「皆で雪だるまつくろうか」 「「雪だるま?」」 「雪だるまは・・・・雪で丸めたお人形さんの事」 アウルの言葉に目をぱちぱちさせる双子にステラの説明が入る。 雪の人形と聞いて子供たちの顔がぱっと輝いた。 「おおきいの、つくりょう」 「うーんとおおきいの」 「おっけー。僕とは体の大きいほう。ステラとは頭の小さい方な」 「、ちっちゃいのいやー。おっきーのがいいのー」 小さい方と聞いてが不満の声を上げて足を踏み鳴らすので、アウルとステラは困ったように顔を見合わせた。 結局が譲り、アウルとが二人で大きいほうに取り掛かった。 ステラとがすぐ後ろで頭となる方を転がしていた。 うんしょうんしょ、と言う掛け声と共に大きさを増してゆく雪の玉。 その作業をスティングとバイトに来ていたソキウスが喫茶店の中で忙しく動き回りながら彼らは見ていた。 「やれやれだぜ」 「親子で共同作業、というものですね」 「だな。お前も言うようになったじゃねーか」 「日進月歩。日々精進です」 「なるほど」 珍しくポーカーフェイスを崩して微笑むソキウスにスティングは肩をすくめて笑い、忙しそうにまた仕事へと戻って行った。 「できた!!」 「うん・・・・」 「「わーい!!」」 出来上がったのはステラくらいの大きな雪だるま。 頭にはほうきから引っこ抜かれたほうきの先っぽが頭に刺さっており、ツンツン頭を演出し。 糸目のような目はその目の鋭さを見せている。 そして首には掛け看板がブラさげられていた。 ふぁんたむ・ぺいんのマスター、スティング雪だるまの誕生だった。 そして。 入り口に作られたその雪だるまは冬の間そこに陣取る事となり、来訪者を驚かせることになる。 「Welcome to ふぁんたむ・ぺいん」 ふぁんたむ・ぺいんへようこそ。 今年に引き続き、来年もどうかご贔屓に。 従業員一同お待ちしております。 ・・・・and HappyNewYear!! あとがき アウル生誕記念としてAfter the War。 このサイトの大きな特色であるふぁんたむ・ぺいんを舞台にしました。 いただいた情報によると12月24日だそうです。 アウル、あまり誕生日に関係なくてごめん。 でも君が願ってやまなかったと思われる家族模様を贈ります。 可愛いアウルへ。 誕生日おめでとう。 そしてこの8日の間訪れてくださった方々、ありがとうございました。 MerryChristmas!! ・・・・・and HappyNewYear!! |