Merry Christmas!!


新世紀エヴァンゲリオン





「メリークリスマス」


涼しげな声と共に手渡されたのは真っ赤なポインセチア。
鉢植えを渡された意味を理解できないレイは、カヲルを見返すと彼からクリスマスプレゼントだといわれた。


「女の子なんだからお花の一つや二つ置いておいても良いだろう」


『女の子だから』


彼の言葉に心臓が跳ね上がり、体温が急上昇してゆく。
まず自分に向けられて言われた事の無い言葉。
そして何の感慨も持たなかったはずの言葉だったのに、これは、この感覚は何?
カヲルといると知らなかった自分がどんどん見つかる。
違う形の自分を発見する。
なんて不思議。


「本当は食事に誘いたかったんだけどね、中学生はダメだと断られた。この年齢も不便だねぇ」


心底残念そうに肩をすくめるカヲルにレイはやや呆れた面持ちで彼を見やった。
なんて当たり前のことを。
でもそんなものよりこの贈り物の方がレイは嬉しかった。
この贈り物は後々まで残るから。思い出と共に。


この鉢植えは大切にしよう。
日当たりに良い場所において、水をあげて。
毎日語って聞かせて上げよう。
日々の出来事を。
私の大切な人たちのことを。
そして貴方をくれた銀色の少年の事も。
例え季節がめぐったとしても鮮烈な生命の息吹を保っていられるように大事に大事に。
この花一つであの寂しい部屋はきっと明るくなるのだから。


「レイ・・・・?」


ポインセチアを抱いたままうつむくレイを気遣わしげにカヲルは顔を覗き込んだ。
怒らせてしまったのだろうか。それとも失望させてしまったのだろうかと。


「ありがとう・・・・嬉しい」


けれど返ってきたのは透明な、綺麗な笑み。
思わず見入ってしまうほど美しく、はかなげで胸をつかれた。


「これは不意打ちだね」


高鳴る鼓動。
カヲルは口元を抑えて波打つ心を静めようとした。
熱もないのに上昇してゆく体温。
苦しくなる息。
ああこの感情はやはり、とカヲルは自分の気持ちを再認識した。


「行きましょ」
「え?」
「雪が降り始めたわ。かさ、貸してあげるからうちに寄らない?」


レイの言葉通り、いつの間にか空からちらちら、ちらちらと白い結晶が舞い降りてきていた。
触れるとすうっと消え、また舞い降りては消える。
ひやりとした感触を残して。


「お茶ぐらい、出すから」


想い人の申し出を断るほどカヲルは臆病でも愚かでもない。
カヲルは了承の笑みを見せると、レイの手をとって先立って歩き出した。
抵抗することなく、軽く握り返された手の感覚が嬉しくてカヲルは調子はずれの歌を口ずさむ。
つられてレイもポツリポツリと歌いだして。
やがて一つのメロディを生み出していった。
彼らを包む空気は冷たくはあったけれど。


互いの手の温もりで彼らの心はほんわかと暖かかった。











ほのぼのカヲレイ。
友達上恋人未満な彼等が大好きです。
メリ−クリスマス!


管理人