Merry Christmas!!

After the War
アウステベビー物語
前☆夜






「今日もお疲れさーん」


かちーん。


スティングの声と共にシャンペングラスが触れ合う、澄んだ音がした。
今日はクリスマス・イブ。
開店から初めてのクリスマス・イブを迎えたファンタム・ペインはう予約客やなじみの客で賑わった。
家族連れ。
恋人同士。
はたまた一人客もいて、訪れた客一人ひとりが素敵イブを過ごせるようにとスティングたちは大いに張り切った。
その甲斐もあって、皆は思い思いの時間をすごして笑顔で帰って行き、来年のイブもぜひここでという者もいた。


「大変だよなー、お前らも。せっかくのイブなのに」


シンも予約客としてルナマリアを伴ってふぁんたむ・ぺいんにきていた。
黒一色にシックに決めたスーツ姿のシン。
真っ赤なドレスにやはり紅いヒイラギの髪飾りをしたルナマリア。
二人とも普段から想像もつかないほどドレスアップしていて、優雅に見えた。


「お前、そうとう気合入れてきたな」
「イブだからな、当然」


すまし顔のシンの横でルナマリアが笑いをこらえながら、手のひらをヒラヒラさせた。


「慣れないから大変だったのよ、着るの」
「余計な事言うなよ、ルナ!!」


そんなルナマリアにシンは不満そうにふくっれっ面になった。
彼としてはせっかく決めようとしたのに裏方をばらされてしまい、せっかくの努力が水泡に帰したように思えたからだろう。
だがルナマリアはそんなシンが可愛くて仕方ないようで、紺青をわずかに細めると彼の腕に自分のを回した。


「そういうところがあんたの可愛いところなのっ」
「う」


頬を染めて言葉を失うシンに微笑むと、ルナマリアはスティングたちに礼を言い、シンを引っ張っていった。


「一生彼女に敵わないんじゃねーの?」


かかあ天下を絵に書いたような二人を見送ったあと、アウルが肩越しにそう言うとスティングは口はしに笑みを浮かべて肩をすくめて見せた。


「女は強し、だからな」
「ははっ、言えてる」
「?」


ステラは彼らの会話が分からないようで頭上に疑問符を浮かべてアウルとスティングを交互に見ていた。



「忙しかったけど楽しかったな」


光に揺れるシャンペンに目をやりながら今日のイブを振り返ってアウルがそうつぶやいくと、
スティングもうなずく。


「ああ。皆それぞれのクリスマスがあるんだな」
「子供たち・・・・可愛かった・・・・」


ステラの言葉にアウルとスティングが振り返って彼女を見やった。

賑やかな笑い声を上げる親子連れ。
ぺいんに飾られたツリーを見てはしゃぐ幼子。
運ばれてきたケーキに輝く大きな瞳。
母親のスカートの裾に隠れて恥ずかしそうにステラたちを見上げる子供。

その一つ一つを思い出し、ステラはテーブルに揺らめくキャンドルに目をやっていたが、やがてアウルに目線を移して彼をじっと見つめた。
アウルもスティングも彼女の言いたい事は分かっていた。スティングはからかうような笑みを浮かべて見せると、アウルは頬を染めてそっぽを向く。
前々から自分の望みを言っているのになかなか煮え切らないアウルに不満を覚えたステラはむっとした表情で手元のシャンペンをつかむと、勢いよくそれを煽った。ほとんど何も口にしていないのに大量のアルコールが入ったことで、ステラの顔は顔はたちまち紅くなる。アウルとステイングが止める間も無く、彼女はお代わりを注ぎ、またそれをのみ干してしまった。
その様子にアウルとスティングは顔色を失い、顔を寄せ合ってヒソヒソと話し合いに入った。


「うげ・・・・やばくね・・・・?」
「とっくにヤバイ。お前のせいだぞ、責任とれ」
「ええー」


ステラは酒に弱い上、酒癖がとても悪い。
ひどいときは絡んでくる上、態度も気もでかくなるので手がつけられないのだ。
そのステラの面倒を見るとなると相当な重労働である。
しかも彼女はすこぶるご機嫌斜めだった。
アウルは手伝ってくれと懇願のまなざしを向けたが、スティングはアウルのせいだと譲らなかった。


「ええーじゃねぇっ。後片付けは俺がやる。ステラからアルコールを取り上げてなだめて来い!」
「ぶー・・・・分かったよ」


アウルは諦めたようにため息をつくと、テーブルに突っ伏したステラの手からグラスを取り上げ、
彼女を抱き上げた。とたん二本の細腕が彼の首に巻きつき、彼を締め上げた。


「アウル・・・・逃がさない」
「に、にがさねーも何もし、死ぬ・・・・」
「ちゃんと連れてけよー」


スティングののん気な声を背に、アウルは涙目になりながらも二階に上がっていき、ステラの部屋のベットに、彼女を降ろした。

・・・・つもりだった。

だが彼女の腕は巻きついたまま離れようとしない。
それどころか信じられない力でアウルは引き寄せられ、つんのめるようにステラの上に倒れこんだ。
ステラの甘い髪の香りとシャンペンの匂い。
それらにくらくらとめまいを覚えながらステラを見やると、彼女の潤んだ瞳と目が合った。


「アウル・・・・子供、ほしい」
「分かってるって」


甘えた声でそう言われても今の彼女はよっぱらってる。
頼むよ、大人しくしてくれとアウルはため息をつくと、彼女の髪を優しくなでた。


「僕だってほしいよ。だから」
「じゃ・・・あ・・・・がんばろう・・・?」
「へ?」


襟首をつかまれるたかと思うとアウルの視界が反転した。

ぼすん。

軽い衝撃とともに先ほどステラが寝ていたはずの枕に自分の頭がめり込む。
驚いて瞬きをすると自分に馬乗りになったステラが自分を見下ろしていた。
アルコールで上気した顔はなんとも色艶めいているが、まな板の上の鯉になったような今の状態ではそれどころではない。
冷や汗がつぅうとこめかみから落ちてゆく。


「ステラぁ〜、正気に戻って・・・・」
「ステラ、自分のしている事分かってる」


ステラは艶然とした笑みを浮かべると、自分のブラウスのボタンを一つ一つ外していった。
最後の下着まで脱ぎ捨てると、ステラの見事な白い肢体が露になる。
酔いが回っているのかほんのり色づいていた体は部屋の淡い光を受けて美しい。
嬉しいともいえる状況なのだが、甘いとは程遠い気がする。
この状況だと・・・死ぬかもしれないとアウルは本気で思った。


「ちょ、ちょっと待って・・・・」
「アウル・・・・」
「むぅ・・・ふ・・・・っ」


唇をふさがれ、侵入してきたステラの舌にアウルは目を白黒させた。
今までに無いくらい貪欲に求めてくる彼女は新鮮ではあるけど、自分は明日まで無事にいられるだろうか?
そう思っているうちにステラはアウルを脱がしにかかり、抵抗する間も無くあっという間にシャツのボタンとジーンズのベルトを外されてしまった。


「す、ステラ・・・・っ。あ、あ”〜〜〜〜〜〜っ」


悲鳴とも嬌声とも言える、アウルの声が二階に響き渡る。
その下の階のふぁんたむ・ぺいんではスティングがのん気に鼻歌を歌いながら明日の仕込をはじめていた。














After the War
アウステベビー物語前夜。
ちょっとだけR風味。
ベビーをほしがるステラさん、強硬手段に出でました(笑)
女は強いんです。

クリスマスにここまで訪れてくださってありがとうございます。
メリークリスマス!!


管理人