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師走

After the War

01.アウステスティ
02.アスカが+ユウナ、キサカ
03.キララク
04.シンと愉快な先輩たち
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After the War




師走

アウステスティ







師走


その名の通り忙しい月。

店内に出したクリスマスツリーが淡い光を放っている。
二重にも三重にもまかれた小さな電球たちが、奇数、偶数ごとに
ついたり消えたりと交互に点滅する姿はなんともいえない光景。
流しっぱなしになっているラジオから積雪情報で
今年もどうやらホワイトクリスマスになるようだというニュースにステラが期待の篭ったまなざしを窓の外へと向けていた。


「クリスマスの予約がこんだけは入った。今年はのんびりしてらんねーな」


耳の後ろに鉛筆をはさんだアウルがスケジュール表を手にそう言うと。

「それだけ聖夜とやらのセッティングをして欲しい人たちがいるんだな」

とコーヒーのサインフォンとにらめっこをしながらスティングが答える。


「ステラたちのクリスマス・・・・」


頬杖ついてぼそりと残念そうにつぶやいたのはステラ。
彼女の頭をなでてやりながらスティングは仕方ないさと微笑む。


「店じまいしたあとささやかだが、3人で祝おうな」
「だねー。取って置きのワインもあるし・・・・それにさ」


ちりんとツリーにぶら下がっていた鐘を鳴らしてアウルがステラを振り返った。


「それに?」
「お客さんとクリスマス、ってのも粋なんじゃねーかな」
「それって・・・・素敵」
「だろー」


アウルの言葉にステラのすみれ色が輝くと彼もにかっと笑顔を返した。

他人のクリスマス模様を見れる機会ってそうそうないぜ?

アウルの言葉に、ああ、そうかとスティングも頷き、口元をほころばせる。
コーヒーが最後の一滴まで落ち切ったのを見届けると、
彼はサイフォンから目を離してアウルたちのほうを振り返った。
静まり返った店内にコーヒーの香りが立ち込めた。

ステラにはたっぷりのミルクと砂糖を。
アウルにはミルクを添えて。
そして自分はブラック。

それぞれのコーヒーを片手にどんなクリスマスをセッティングしようかと彼らはスティングのいるカウンターに集まった。


外では町の人々が寒そうに。
そして忙しそうに町を行き交っていた。




自分達のクリスマスがないのを残念がるステラに客と過ごすもいいんじゃないと前向きに笑うアウル。ステラは、皆のクリスマスの一部になれるのだと、気づかされて喜び一杯になる。そしてスティングも、また。コーヒーにはそれぞれの好みが出ています。
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師走。

アスカガ+ユウナそしてキサカ。






師走。
住職が忙しさのあまり走り回る事からついたのが由来。
オーブの長であるカガリにも同じ事が言えよう。


「キサカ、クリスマスは空かないのか」
「はい。まずは孤児院や老人ホームのご訪問。
国立美術館の改装が終わりまして、そのオープニングのご出席。
年末年始の行事の打ち合わせにスケジュール調整。
民間の協力者達のご挨拶請けに・・・・。
各首脳陣のクリスマスパーティーがございまして・・・・そのご出席」
「い・・・一日でかっ」

キサカが読み上げるスケジュールに頭痛を覚えるカガリ。
殺人的ともいえる忙しさに穏やかで楽しいクリスマスがまたもや遠のく。


「はい。これでもかなり削りました」
「カガリーン、僕を睨まないでおくれよ。僕だって死ぬほど忙しいんだからさ」

小指を立てて、キサカの後ろに隠れるユウナに呆れたようにカガリは息を吐き出した。
そんなに怖い顔をしていないはずなのに何故そんなに怯えられなければならないのか。
ふとキラがフリーダムで乱入してきた結婚式の事が思い出されて眉間に皺がよる。


「睨んでいるのではない、考えているのだっ。失礼なヤツだな」
「今年もクリスマスどころじゃないか・・・・」

アスランも渡されたスケジュールに目を通しながらため息をつき。

「今年のクリスマスも忙殺・・・・。僕哀しい・・・・」

ユウナも哀しげにジングルベルを歌っている。
周囲でクリスマス、クリスマスという言葉が繰り返されるうちに
カガリ一番上にあった孤児院と老人ホームの訪問というスケジュールで
ある事を思いついたらしく、琥珀色の目を輝かせてアスランの袖をひっつかんだ。

「そうだっ、孤児院と老人ホームでサンタになってプレゼントを配らないかっ」
「へぇ」
「それ、ナイスだね♪」

夢を与える、というアイディアにアスランとユウナが感嘆の声を漏らしたが、
それでは誰がサンタになるのかと彼らは互いに顔を見合わせた。
心なしか二人の間に火花が飛び散る。

「ではサンタはどなたが」

キサカの言葉にカガリはどんと自分の胸を叩いた。

「それはもちろんこの私だ!!」

カガリの言葉に互いの足を踏み付け合っていたアスランとユウナがエエーっと不満の声をあげた。

「じゃあ俺は?」
「なんかやな予感が・・・・」

良くぞ聞いてくれた、というカガリにアスランとユウナの不安そうな視線が注がれる。
そして案の定。

「アスラン、ユウナ!!お前たちはトナカイ役!!名前は『トナ』と『カイ』だっ!!」
「「ネーミングセンス悪っ」」
「ご愁傷様です・・・・」

珍しく声の揃った二人を哀れみの視線を向け。
キサカは心の中で合掌するのであった。











カガリには苦労させられるアスランとユウナ。それでも二人は文句を言わずについてくる。子供達の喜ぶ顔がみたいから。そしてなによりも二人は、カガリが大好きだから。
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師走。

キララク。







師走。


「今年もホワイトクリスマスになるかな」
「なりますとも」

ふと漏らした一言にラクスが自信ありげにそう宣言する。
いつもと違った彼女の姿にキラの紫苑が細められた。
カガリからプレゼントされた大きなクリスマスツリーが孤児院にある応接間に静かに鎮座していた。
夫婦のように寄り添ってツリーの飾り付けをするキラとラクス。
彼らの周囲で子供たちがこぞってツリーの飾り付けをしている。


「キャンディケーン」と呼ばれる赤のストライプ模様がまきついている杖の形をしたアメ。

「ジンジャーブレッドマン」という子供の形をしたショウガ入りクッキーに糸を通した飾り。

ガラスで出来た玉。

たくさんの星に、点滅する電球。


そのツリーのある部屋はまるで別世界のよう。
夢の中のおとぎ話。

素敵ね、綺麗だねと笑い会う子供たちの声が応接間の空気を震わす。

「サンタさん、きてくれる?」
「もちろんですわ。だから好い子にしてましょうね」
「うんっ」

何度も何度も繰り返された会話。
それはクリスマスという空気を確かめているかのように
子供たちは毎年同じ質問を繰り返す。
クリスマスは一年の中でもっとも楽しみな行事。
夢と希望の溢れる、そんな時。


「あの子達の笑顔を見ていると、幸せになりますの」
「うふふ、そうだね。僕らにとってそれが一番の贈り物だね」


二人が寄り添う窓の外では雪が降り始めていた。














もう既に夫婦の領域のキラとラクス。子供たちに囲まれて幸福一杯のようです。
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師走。

シン
と愉快な先輩たち。








師走。

それは忙しい時期。
年中無休の軍では勤務の調整というものがある。
その調整によってクリスマス、年末年始の休暇の明暗が分かれるといって過言ではない。
なぜなら。冒頭にあったように軍は年中無休。
世間がクリスマスだろーが正月だろーが全くを持って関係ないんだよーん。

ぶっちゃけ休みたければ強引に予定をねじ込むしかない。
まぁ、それが通るとは限らないけどね〜〜〜(ネオ談)







士官室でシンの不満げな声が響いた。


「え〜〜〜っ、年末年始俺予定あんですけど」


年末年始はアウルやステラ、ルナたちと温泉の予定を立てていた矢先だった。
ルナとステラの入浴姿が見れるかも、と鼻の下を伸ばしていたシンは
勤務を入れてくれた先輩たちに抗議をしようと詰め寄ったが、そんなシンに3種類の声が機関銃のように降り注ぐ。


「やかまし!!クリスマスはあけてやったんだ!!ありがたく思え、彼女持ち」
「そうだ、彼女持ち!!」
「好い思いばっかりしやがってこの彼女持ち!!」


二言目には彼女持ち。
言葉の端端に私情が混じっているように聞こえてしかたなかったが、
クリスマスをあけてもらった手前早々文句は言えない。
同じ部著に配属された先輩は揃いも揃って独り身だという。
それでクリスマスは予定はないわけで勤務の予定を入れたらしかった。
三人雁首揃えてクリスマスケーキでも囲むのだろうかとシンはふと思ったが、あえて口にしないで置く。

「土産を期待しているぞ、彼女持ち」
「フライドチキンがあったら嬉しいぞ、彼女持ち!!」
「ワインもな、彼女持ち!」
「だぁ〜〜〜〜〜っ、うるさーーーい!!いい加減名前覚えてくださいよ!」









軍隊には休日なんて在りません。世間がクリスマスだろうが、正月だろうが、防衛の任務はある。休みには誰かかしらの犠牲があるんです(笑)
 
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