拍手ログ
正月
ファンタム・ペイン
New
Year.
世間は新年だと浮かれているが俺たちは代わり映えの無い日を送るつもりだった。
戦争の真っ只中なんだ、バカをやっていられるかってな。
俺はいつものようにカオスの整備を終えた後、いつもの談話室で本を読み。
アウルはソファーに寝そべり、退屈な正月の特番をあくびをかみ殺らしながら見ている。
ステラはネオに呼ばれていてこの場にいない。
新年なれど代わり映えの無い一日。
少しさびしい気もしないでもなかったが、今年も三人一緒にいられるのならそれでもいいと思っていた。
そんなときだった。
「アウル、スティング!!」
談話室の扉がしゅんと動いてステラが勢いよく飛び込んできた。
よっぽど急いできたのだろう。
ほほが少し赤く、息が若干乱れていたが、それより目に付いたのはステラの格好。
「おっ!どうしたんだ、その格好?可愛いじゃないか」
いつもの軍服でもドレス姿でもなく。
見たことの無い民族衣装にその身を包んでいた。
淡い桃色に真っ赤な帯。
所々に金や銀の刺繍が入り、衣服の模様の美しいこと。
金の髪は大きなリボンでまとめられていて、なんとも可愛らしく。
全てがステラによく似合っていて別の世界のお姫様のようだった。私情を差し引いてもオーブの姫にもプラントの歌姫にも引けを取らないだろうと俺は自負する。
それくらい愛らしかった。
「ネオがねっ、ステラにこれ着せてくれたの!!」
得意げに袖を広げ、ステラがくるりと回って見せる。
長い袖がひらりと揺れ、背中の帯の結び目も花を形取っていて美しい。
なによりもこのステラの喜びよう。
「へぇ、ネオも粋なことしてくれるじゃねーか」
相当高価なのだろう。
ネオはかなり無理したのかもしれない。
それを見ることができた俺も嬉しかったが、問題はアウルだった。
こいつがステラだけ、とへそを曲げやしないかしないか。
似合わないなどといってステラを悲しませるのではないかと心配だった。
だが、予想と反してアウルは不満げな顔を見せることなく、テレビから視線をはずしてステラを静かに見ていた。
「ね、アウル・・・・似合う?」
アウルにもしっかりと見てもらいたいのだろう。ステラはチョコチョコとアウルに駆け寄るとさっきと同じようにくるりと回って見せた。
アウルはじっと見つめていたかと思うとおもむろに口を開き。
「馬子にも衣装だな」
などとほざきやがった。
おのれ、アウル!!
せっかくの正月気分を!!!
あとでその根性たたきなおしてやろうと俺が心に強く誓った矢先。
「本当?」
ステラがすみれ色を喜びに輝かせ、アウルの袖をひっぱった。
アウルのほうは予想もしなかったステラの反応にただ目をぱちぱちさせた。
それもそのはず。
「馬子にも衣装」というのは決してほめ言葉ではないから。
「あのさ・・・・お前、意味分かってる?」
アウルの困惑した声にステラは小首を傾げるとニコニコと笑う。
「ううん。でもアウル、ほめてくれた・・・・・」
「う・・・・」
「ステラ、嬉しい。窮屈だけど、我慢してよかった」
純粋に喜ぶステラにアウルがばつが悪そうな顔をしてちらりとこちらを見てきたので、俺はにやりと意地の悪いと笑みを返してやった。
ステラはそんな俺たちのやり取りに気づかず、しきりに可愛い?可愛い?とアウルの前でくるくると回る。
その度にアウルは可愛い可愛いと困ったように返事をするのがなんとも面白かった。
「ステラぁ、回んな。ほれ、リボンが曲がっている」
「・・・・?」
手招きされ、ステラがアウルの足の間へと腰を下ろすとアウルは手を伸ばし、リボンを丁寧に結びなおしてやっていた。なんだかんだ言って仲のよい二人の光景に口元がほころぶ。
前言撤回。
今年の正月はいつもと変わらないわけじゃなかった。俺たちの近くに季節や行事を思い起こさせてくれるネオがいる。
きっと日頃の疲れがたまっているであろう上司に感謝の気持ちをこめて俺は肩叩きでもしてやろうかと思った。
拍手なのに異様に長いなー。
ステラに晴れ着を着せてくれたネオ。彼女の晴れ姿に退屈なはずのお正月も華やかなものになりました。
なんだかんだいってやっぱりステラが大切なアウル。
二人が可愛いスティング。
お父さんのネオ。
彼らは一つの家族なんです。
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正月
After the War
アウステベビー物語
アウステスティ&アウステベビー+α
「あけましておめでとうございます」
「今年もよろしく」
挨拶もそこそこにふぁんたむ・ぺいんの双子達は
早速湯気の立つ雑煮に飛びつき、そんな二人に日本の晴れ着姿のスティングの声が早速飛びました。
「コラコラ、晴れ着汚さねぇように前掛けかけろ」
「「はーい」」
雑煮を振舞うスティングも紋付羽織袴姿でありますが、違和感なく着こなしていると思います。
ちなみに雑煮とは一年の無事を祈りお正月に食べる伝統的な日本料理で餅の形やだし、具の種類にいたるまで、地方や家庭ごとに千差万別だそうです。
「実況中継は好いから食えよ」
やはり晴れ着姿のアウルがおせち料理を突っついています。
おせち料理とは。
「だから実況中継はいいっーの」
「分かりました」
「きんとん・・・・」
「ステラ、お前袖気をつけろよ」
おせち料理の重箱に手を伸ばした振袖姿のステラの手を押し留め、アウルが代わりに取り分けてやっていました。子供たちではなく、彼女にも目をかばっていてぬかりはないようです。
「袖を縛っておこうか」
「はいよ。ついで俺らもやっとくか」
見る間に袖をくくられ、ステラをはじめとするメンバーは身軽な格好になりました。機能的、とでも言いましょうか。
同時に食卓の箸の行き来も激しくなりました。
余計なことだとは思うのですが、食べにくいのなら食事を終えてから晴れ着姿になったほうがよかったのでは?
「「あ」」
「?」
「まぁまぁ、数の子ーー」
固まるスティングとアウルをよそに、残りのメンバーはお構いなしに箸を動かしています。
「過ぎたことはしょうがねぇ。とにかく晴れ着は死守しろ」
「着物に染み付きで初詣行きたくないかんなーって・・・・チビ、こぼれるぞ!!」
「う?」
こんな風にスティングとアウルの気配りで晴れ着はどうやら死守されそうです。
関係ない話ですが、ここの雑煮は鶏がらでだしを取った中華風のようです。
申し遅れました。
俺はふぁんたむ・ぺいんのアルバイトを勤めます、ソキウス・イレブンです。
今年もよろしくお願いします。
ソキウスによるぺいん宅の実況中継。
淡々とマイペースに中継してくれました。
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正月
私立シード学園(前)
毎年恒例の餅つき。
今年の会場はデュランダル理事長のお屋敷。
とっても広いのよぉー。
「僕の屋敷だって広いです!!」
「屋敷の広さで張り合ってどうするんだよ、おっさん」
「きぃ〜〜っ!!こうなったら増築しますっ!!」
「なんでそうなるんだよ!」
「僕は人に負けるのがだいっ嫌いなんです!!」
うるさい外野はさておき、今年の年男は?
「はいはーい!」
勢いよく手を上げたのはロアノーク先生。
「嘘付け!!」
「年齢詐称〜〜っ!!」
とたんアウル達の野次が飛んだ。
ロアノーク先生も負けじと怒鳴り返す。
「何を言う!!俺は若いぞ!」
年男ってことは36歳なの?
「ちがう!!俺はまだ29だ!!」
なんだ、やっぱり嘘じゃない。
「ぐ・・・・」
「残念ながら私はもう少し先だね」
デュランダル理事も違うそう。
今年は残念ながら年男はいないようねぇ。
「おっさんは?」
「クロト!!あなたはパパの歳も分からないんですか!!」
「どっちでもい〜よ〜めんどい。さっさと餅つけ。俺・・・・待つ」
ちょっと!!働かざるもの食うべからず、よ!
そう言ってやたらシャニ先輩は心底面面倒くさそうな顔をして膝を抱え込んでしまった。
「ちぇ・・・・」
「つーことは働いた分食えるってわけだなっ!!」
杵を意気揚揚と持ち上げたアウル。既に食い気オーラ全開な所はさすがというべきね。
アウルが餅をつく役目を申し出たのなら話が早いわ。さてもう1人は当然。
「シン、あんたひっくり返す役やんなさいよ」
「やだよ」
即答するシン。
ふふん、そんなのは計算済み。それくらいで、はいそうですかと引き下がるルナマリア様じゃぁないわよ。
「仕方ないわね。ステラ、アウルの相方やる?」
「ステラ・・・・?」
「まてい」
「なによ」
シンはおもむろにあたしをひきつけるとひそひそ声で話し掛けてきた。
「ステラにアウルの相方かぁ?冗談だろっ」
「あらぁどうして?二人が愛を深め合うチャンスじゃない」
「んなっ!!アウルが餅つきだぞ!分かってんのかよ!!」
「アウルがステラを傷つけるわけないじゃない。それよりこの絶好の機会ですっごく親密になってしまうかもよ〜。なんてたって今年最初の愛の共同作業ですもの。ホホホホ」
「ぎぎぎ」
キリキリ歯がみをはじめるシンを見てあたしはほくそ笑んだ。
すべてはあたしの思惑通り。
なんて単純。
わっかりやすいわねぇ。
あともう一押し、ぷぷぷぷぷ。
「・・・で何年か後の結婚式とかでぇ『私達の縁は餅つきから始まりました―』「やる」
「なによ」
「俺がやる!ステラ、俺がやるから」
大またで餅つきの場へと向かっていくシンの後姿にあたしは表向きでは平静に、内面大きなガッツポーズを取りながら見送った。
「何をたくらんでいる?」
「たくらんでいるって失礼ね。あたしは面白いことが大好きなのよっ!」
いつのまにかそばにきていたレイの溜息混じりの言葉にあたしは悪びれず胸をそらして笑って見せた。
だって悪い事したつもりはないもの。
にぎやかに楽しく。
それがあたしのモットー。
「トラブルメーカー」
レイのつぶやきを無視し、あたしは野次馬根性で餅つき場へと向かった。
餅つきは既に始まっていてアウルとシンは息もぴったりの連携を見せていたけれど、それではつまらない。
ここはハプニングがあるべきなのよ(力説!)
さぁ、何が起こるかな?
後編へドーゾ!!
お祭り、トラブル好きルナには和やかなイベントは物足りないようです(笑9
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正月
私立シード学園(後)
「あいよ」
「ほいさ」
テンポの良い掛け声と一緒に彼らの動きがはどんどん早くなっていって餅つきが白熱して行くのが分かったわ。回りも一緒に手拍子も交えて一緒に掛け声をかけ初めてそれりゃあにぎやかなのよ。
「あー、それ」
「あ、よいしょっ」
「アウル先輩がんばってくださーい。あ、シン先輩も」
特別参加のメイリンもアウル達の応援。でも取ってつけたようなあのこの言葉にシンが苦笑した。
「俺はおまけかよ」
「お前なんぞおまけでじゅーぶん」
「なんだとっ!」
「やんのか、コラ!!」
それからのアウルのとシンの動き見せたかったわよぉー。
すごいすごい。
まるで早送りの映画見ているみたいだった。
手元が見えなかったもの
「死ねや、コラぁ!!」
「殺れるもんなら殺ってみろ!!」
これよ!
あたしが求めていたのは!!
この白熱した戦い!!
殺るか殺られるかいう殺伐とした世界!
「殺伐してるねぇ、姉御」
ヨウランが皮肉げな笑みを浮かべた。
失礼ね、もう。
言ったでしょ、あたしは面白いことが大好きなの!
「見ていると夫婦みたいねぇ、二人」
「どうをどう見たら夫婦なの、アレ?」
つぶし合おうとしているみたいじゃないとヴィーノがぼやくそばで、
「いやぁあああああっ、そんなの許せないっ!」
とメイリンが悲鳴を上げた。
なに血相変えて騒いでンのよ?
「どわっ!!背中に乗っかるな、首締めんな!!ぐぇ」
「何いちゃついてるんだよ!!」
「いぢゃづいでねー!ぐぅえ〜」
アウルが必死の思いでメイリンを振りほどくと彼女は涙目で訴えたわ。
「アウルせんぱいっ!!道を間違えないでください!!」
「何をどうこう間違えるんだよ?!」
乙女はいつでも必死なのよ、アウル。
あ、もう一人いるわねぇ。
戦う、乙女。
「餅つき、やるの?・・・やらないの?」
「ステラ、頼むから落ち着いてくれ。ネオ、何とかしてくれ」
「えーーと暴れても好いことはないぞ、ステラ」
「そうだ、ここで暴れても何にもならねぇと思うぜ」
スティング先輩にロアノーク先生。
オルガ先輩が必死にステラをなだめている。
なかなかの光景。
「餅つき・・・・続行・・・・?」
「決まってるじゃないですか」
「ええ〜」
残りでやるしかないでしょう?と言ったらシャニ先輩が露骨にいやな顔。クロト先輩がクスクスと笑って後ろを見やる。
「しょうがないね、あれじゃぁね?」
「いい加減にしろよ!」
「うるせー!離れてくれよ、メイリン!」
「いやです!先輩がまっとうな道に戻るまでは!」
「あっちもアレじゃあ仕方ないですね、デュランダル理事長?」
「仕方ないねぇ。行きますか、アズラエル会長?」
「どうどうどう」
「良い子だ、いい子だ」
「ステラ・・・馬じゃない・・・・」
ステラが苦労人二人と先生になだめられている。
なんだかんだ言ってステラもアウルが好きなのかもね。あの子が自覚しているかどうかは別として。
「楽しそうだな」
「もち。レイは?」
「悪くない」
楽しいなら楽しいといえばいいのにと言ったら、レイは困惑の色を浮かべて少しの間黙りこんだあと。
この騒ぎが面白いかどうかは別として賑やかなのは嫌いじゃないといった。
『嫌いじゃない』ねぇ。
いつかは素直に好き、と言える日が来るのかな、レイのヤツ。これじゃあ恋愛のとき困るわよ?
好きな相手に嫌いじゃない、と告白する気?
絶望的だわ。
きめた。
おせっかいかもしれないけれど今年に願いはレイは素直になれますように、に決定!!
「・・・本当に余計なおせっかいだ」
顔面いっぱいに迷惑そうな色浮かべなくてもいいじゃないのよ。
ムカつくわね。
でもあたしが何を願うかは勝手でしょっ。
そうと決めたらそうするの!!
「勝手にしろ」
今度は疲れた顔をして嘆息するレイ。
こいつ意外と表情あるじゃないのよ。
面白いなぁ。
つっつき甲斐ありそう。
あ、クロト先輩が餅つきだって呼んでる。
はーい、今いきまーす!
それと。
遅くなったけれど明けましておめでとう!
ことしもよろしくね!!
やっぱりドタバタですね。
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