「・・・・Trick or Treat」
「ん〜?なんだよ?」
「・・・・お菓子」
「あ?」
「お菓子、くれなきゃイタズラする・・・・」
「へえ、やれるモンならやってみー」
「う・・・・意地悪」
「あはは、はい」
「わぁケーキ・・・・。上に乗ってるお砂糖のお人形さん・・・・」
「そ。お前と僕。魔女と使い魔、な」
「ネオとスティングは?」
「う、うるせーな。入りきらなかったんだよっ!」
「うふふ・・・ありがとう」
「お礼は倍返しな」
「?」
「目ぇつぶれよ」
「・・・・うん」
「HappyHalloween」
ネオ「う〜ん、青春だねー」
スティング「で、出るに出られねぇ・・・・」
確かに彼らの運命は過酷なものだったかもしれない。
だが彼らは自分たちを不幸だと思っていなかったのだろうと思う。
俺の記憶に残る彼らは笑って。泣いて。怒って。
本当に生き生きとしていたのだから。
そして傍にいた俺も幸福だった。
彼らとの時間がいつまでも続いてくれればいいと思っていた。
それが決してかなわぬ願いだと分かっていても。
アウステスティそしてネオ。かの三人は決して不幸だったとは思わない。でも記憶を奪ったのは間違いだったと思う。ネオ、あなたには彼らを覚えていて欲しい。いつまでも。
「シン、手、出しなさいよ」
「なんで?」
「い〜から〜さっさと出す!」
「いででで、人の頭ぐりぐりすんなよ!出せばいいんだろ、出せば!」
「素直でよろしい」
「う”〜〜〜、・・・・てキャンディ?」
「そ。HappyHalloween!」
「ガキ扱いすんなよな」
「そういうところがこ・ど・もなのっ」
「何を騒いでる?」
「あ、レイ!!あんたにもどーぞ!!HappyHalloween!」
「・・・・俺にもか?・・・・すまない」
「なんかかたっ苦しいわね〜〜」
「・・・こういうの初めてで・・・・。どうしたら良いか分からない」
「にっこり笑ってHappyHalloweenって返してくれればいーのよ」
「は・・・・HappyHalloween」
「・・・・なんか貴重なもの見た気がする」
「もらうなり文句をたれたあんたとは大違いね」
「なんだよっ」
「・・・・」
俺。
ルナ。
レイ。
もう戻らない遠い遠いあの頃。
・・・・でも俺たち3人一緒にすごした日々は決して色褪せることなく。
目を閉じれば今も鮮やかに蘇る。
レイはシンにとって親友で。ルナにとっても親友だった。そしてレイにとっても彼らは大切な存在だったと。そう思います。
「なんだ、キサカ?」
「・・・・アスランからお届けものが」
「アスラン・・・・?」
「はい」
「見せてくれっ!!あ・・・・お菓子・・・・?」
「そういえば・・・・今日はハロウィンでしたな・・・・」
「・・・・アスランの奴・・・・こんなものより顔を見せろよ・・・・」
「いらないのでしたらわたしが」
「おいっ!いらないとは言ってないだろ!!」
「はいはい」
「ったく。・・・・あ・・・・・」
「どうなさいました?」
「なんでもない。・・・・なんでもないんだ」
アスランからの贈り物。
手作りなのか、少し不恰好だったけれども。
可愛らしいかぼちゃのジャックを形どった小物入れ。
そして。
中のキャンディに埋もれた紙切れが一枚。
たった一言。
『いつか迎えに行く』
その一言が嬉しくて。
涙がこぼれそうになった。
アニメではなかなか報われないけれど、頑張れアスカガ。アスランはきっとカガリを迎えに来ると信じたい。
「Trick or Treat!」
「あらあら。みんな張り切っていらっしゃいますわね」
「ハロウィンだからね。お菓子、たくさんもらえるんだもの」
「・・・・ハロウィンの由来ご存知ですか?」
「知ってる。古代ケルトが始まりで日本でいうお盆の前夜祭のことだよね」
「そうですわ。ケルト人の大晦日の行事に古代ローマの収穫祭が融合して。
そしてキリスト教の万聖節前夜祭が混ざりあい、生まれたのですわ」
「文化の融合・・・・か」
「・・・・オーブのよう、ですわね」
「・・・・」
「キラ?」
「ううん。コーディネーターとナチュラルが本当の意味で分かり合える日は来るのかな、って」
「来ますわ。願い続ければ」
「うん」
僕達のとってきた道は正しいのかどうかは分からない。
明日が欲しい。
生きたい。
そう願い。
居場所を守ろうと散っていった人たち。
今を見て彼らはどう思うのだろうか。
キラのとった道は正しかったとは思えなかった。戦火を拡大させ、多くの犠牲を生み出した事に変わりはない。でも平和を明日を願う気持ちは一緒だった。世界は思い通りにならないものだけど、愛する人は変わらず傍にいる。