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アウルからステラへ












学園編




『ステラ、大好き』


いつからだろう。

当たり前のように言ってきたその言葉を口にしなくなったのは。

自分が伝えたいのはもっと別なこと。

同じ言葉なのだけれど意味がまったく違ってきていて。

自分に嘘を付いているようでその言葉を口にするのがとても辛く。

その言葉は冷たい北風にさらされた雫のように僕の舌先で凍り付いたまま。



「僕のこと、好き?」

「うん、好き」


そう聞くと決まってステラはそう答える。

何の迷いも。

何の疑問もなく。

時には笑顔さえ浮かべて。

でも僕が欲しいのはそんなんじゃなくて

もっと別なモノ。


その言葉じゃなくて。

その気持ちじゃなくて。

もっと別なモノ。

それを伝えたら今の心地良い場所を失いそうで。

そしてその居場所を手放せるほど僕はまだ強くない。

暖かくて優しくてステラが近くにいるから。

ずっとこのままでいたいとさえ思うこともある。

けれどいつまでもこうしていられないのはわかっている。

時は無情にも流れる。

人は変わるモノ。

人の心は変わる物。


気持ちを口に出来ないのは苦しい。

だけどまだ、このままで一緒にいたいんだ。

その日が来るまで。




        *     *    *    *    *






先ほどの訓練で疲れたのか。

誰もいない談話室で一人、すやすやと呑気に眠るステラ。

疲れたのなら部屋で寝りゃあ良いのに。

この馬鹿は一人ソファーによりかかって寝息を立てている。

俺等を人とも思わない連中ばかりがいるこの場所で

身の危険というのを考えたこと有るんだろうか?


ねーだろーな。


ステラの間抜け面におかしくなって

ステラの隣に座って寝顔を眺めた。

僕の気配に気付いていないのかステラは眠り続ける。

何かあっても俺等がいるから、と安心しきっているのか。

それともただの馬鹿なのか。

僕としてどっちでも良いんだけど。

お前がお前でいてくれるのなら。

傍にいてくれるのなら。


       *     *     *     *    *







After the War




「いーてんきー」

間延びした声が2階のベランダから聞こえてくる。

明け放れたベランダからは心地よい風が吹き込んでくる。

干された真っ白なシーツが風に揺れてバタバタといっている。

太陽の下で金色の髪をキラキラさせ、

ベランダに立つステラの後ろ姿。

その姿がまぶしくて、照れくさくて。

そしてとても幸福で。

僕はその姿に目を細める。


「あうるー、そこの洗濯物の籠取って?」


ステラはご機嫌な調子で僕を振り返ると横にある籠を指さした。

籠には洗い立ての洗濯物。

いっちょまえに僕を使うようになったのかと。

でもそれがとても嬉しくて。


「へいへい」


思わず笑顔で応える僕がいた。








あとがき


アウルからステラへ。
第2弾でした。