夜の7時から7時半。

この間はジョーンズの男子浴場に近づいてはならない時間帯。

これはクルーの間で暗黙の了解となっていた。









Batheing Time











先日新たに配属された新兵は、一日の疲れを癒そうと大浴場へと向かっていた。

すると浴場の入り口で,時計を見やりながら溜め息をつく同僚に気づき、

何事かと首をかしげた。


「どうしたんだよ、こんなとこに突っ立ていて?入ンないのかよ?」


その言葉に彼の同僚は目を見開く。


「お前、知らないのか?・・そういやお前昨日配属されたばっかだったもんな」

「???」


訳が分からない、という新兵に同僚が説明しようとしたとき。


「スティングー、そこのタオル取ってー」


と少年の声が大浴場から聞こえてきた。

そしてその声に応える声がもう一つ。


「ああ?そんくらい自分で取れよ。俺は今、ステラの髪洗ってやってんだよ」

「ちぇー、いけずー」


新兵は聞こえてきたその声にほら、と顎をしゃくって見せた。


「なんだよ、入っているヤツいるじゃねーか」

「馬鹿っ、殺されるぞ!やめろ!!」

「何なんだよ、いったい?」


兵士が中には入ろうとする新兵を必死の形相で引き留めていると今度は女、と

おぼしき声が聞こえてきた。


「スティング、シャンプー目に入った。・・痛い」

「あ、ごめんな。すぐ流してやるから、少し我慢しな」

「うん」

「・・女?男湯に!?」


男湯から聞こえてきた女の声に新兵は口と目を大きくOの字に開けて

同僚を見やると、苦々しい表情で彼は頷いた。


「聞き間違いじゃねーよ。例の3人組の紅一点だ」

「例の・・・って?」

「ファンタム・ペイン。聞いたことあんだろ、名前くらい」

「ええっ!?どう考えても10代だろ、あの声」


信じられないというふうな顔を見せる彼に同僚は首を振る。


「確かにガキだけどよ、あいつら。でも中身は化け物さ。この間、女に

ちょっかいかけたヤツがひでぇめに遭わされたらしい」

「・・・・」

「あいつらにかかわらねーように気を付けるこった」

「・・ああ」


青くなった新兵の肩をぽんぽん、とたたくと兵士はにかっと笑った。


「あいつらが出てくるまで時間があるし、一杯つきあえよ」








「おい、ステラ。タオルを湯船に入れるな。頭に乗っけるんだよ、ほら」


アウルはステラからタオルを取り上げると小さくたたんで、彼女の頭に乗せた。

そんな彼を不思議そうに見ながら、ステラは頭のタオルに触れた。


「アウルとおそろい・・?」

「なんだよ」


文句あんの、と眉間にしわを寄せる彼にステラはふわりと笑った。



「ううん。嬉しい」


「あっそ。肩までちゃんと浸かれよ」

「分かった」


タオルを乗せた異なる色の頭が列んで湯に浸かる。

そこへ自分の身体を流し終えたスティングが湯船に入ってきた。

水音と共に水紋が広がる。


「・・ステイングも頭にタオル。三人、おそろい」

「あ?ああ、ありがとうよ」

「・・あほくさ」


同じように彼の頭にも乗せるステラにアウルは半ば呆れ気味に息を吐く。

が次の瞬間、何を思いついたのか悪戯っぽい笑みを浮かべた。



「ぶっ!!」

「はっはー、マヌケ面!!」


彼の放った水鉄砲がスティングの顔に命中したのだ。

してやったり、とアウルが満面の笑みを浮かべた。

前触れのない攻撃をもろに喰らい、スティングは思いっきりむせた。

つーんとした感覚が鼻の奥に広がる。

それを見ていたステラが目を丸くする。



「アウル、すごい。ステラもやりたい」

「あん?教えてやっても好いけど、お前にできんの?」

「教えんで好い!!」



スティングの怒鳴り声が大浴場に響く。



夜の7時から7時半の間。

この時間帯の男子大浴場は彼らの貸し切り。

誰にも邪魔されない、彼らの時間。

一日の疲れを癒し、彼らは明日もまた戦う。












あとがき

お風呂にはいるときも3人一緒。
互いの裸は気にしないけど、アウスティはステラの裸を
他人に見せることをよしとしない。だから強制的に
貸し切り。