この頃アウルが不機嫌だ。
否、ずっとと言っても良い。
原因は分かっている。
ステラだ。







ヤキモチ











数日前、海に落ちたステラはザフトの赤服に拾われた。
その日以来、ステラは「シン」ばかりだ。
救ったヤツはシンという名前らしい。
ネオならともかく、アウルの大嫌いなザフトのヤツに懐いたとなると
アウルが面白く思うはずがない。


そしてとうとう。
アウルはステラの無視を始めた。
眼中にないみたいに振る舞い、
決して口をきこうともしない。
ステラの話も聞こうともしなければ見ようともせず、
徹底的な無視だった。

そしてさすがのステラもそんなアウルに気が付いたのだろう。
今度は懸命にアウルの気を惹こうとあれこれ気を使い始めた。

初めはデザートを分けると言いだし。
もらったおやつ、あげるよ。
一緒に訓練しよう?
面白い本見つけたよとか。
ゲームをしようなど。
エトセトラエトセトラ。

仕舞いにはステラが泣き出す始末だが、
アウルのヤツはさっさと逃げだし、目もくれようとしない。


「どうして・・・?」


泣きながらそうつぶやくステラを慰めながら俺は途方に暮れた。
俺はどうすれば良いんだ?


「なあ、お前があんまり『シン』って騒ぐからだぜ?」
「どうして?ステラを助けてくれたんだよ?」

涙で濡らしたまつげのまま、きょとんとして俺を見上げるステラに俺は溜め息をついた。
そもそもの原因をステラは分かっちゃいない。
アウルは自分より『シン』と騒ぐのが気にくわないんだよ、と言っても分かるだろうか?

「アウルだってお前を助けてやったことあるだろ?
なのにシンの時だけか?」
「アウルはアウルだよ?シンが助けてくれたときのお話を聞いてもらいたいのに」


堂々巡りだ。
頭が痛い。


「お前がアウルよりそいつの方が良いのか?」
「違うよ。アウルはアウルだもん。
シンはシンだもの。
シンのことを話して何が悪いの?」


ステラは違うと、懸命に頭を振る。
ステラのヤツもアウルの前でこれくらいの意思表示を見せることが出来ればと、俺は思う。


「アウルはそいつのことが嫌いだとしたら聞きたくないだろう?」


まさかヤキモチだなんて言えない。
言ってもステラに分かるかどうか。
俺の言葉にステラはしゅんとなり、目を伏せる。
金色の長いまつげが揺れると、また俺を見上げた。

「・・うん。じゃああまり言わないようにする。
前のようにお話ししてくれる?」


言わない、と言わないのがステラらしい。
だがこれがステラにとって大きな譲歩なんだろう。
ぎちぎちに縛ってはステラが可愛そうだ。


「そうだな・・。アウルのこと、好きか?」
「うんっ!」


迷いもなくまっすぐに答えるステラ。
その感情はまだ恋とはほど遠いだろうが・・。
アウル、お前はまだ脈有りだぞ?
ヤキモチばかり焼いてないでたまには優しくしてやれ。


「そう言ってやれ。アウルのヤツ、すごく喜ぶぞ。あいつもお前のこと好きだからな」

頭を撫でてやると満面の笑みを浮かべてステラは頷いた。
そして俺が手を離すやいなやステラはアウルの姿を求めて駆けだした。
やれやれと俺はまた溜め息をつく。
だがこれでまた元の二人を見れることを祈りつつ、俺は小さくなるステラの背を見送った。




あとがき

やっとお題半分を消化しました。
オクレ兄さん視点のアウステヤキモチ。
これは前に書いて放置していたのをアップしました。
このヤキモチのステラ視点の書きかけのもあるけどどうすっかなぁ・・。