なんか僕って走ってばっかのよーな気がする。
ほらステラがいなくなったときとかさ、特に。
あいつ馬鹿だからふらふら、ふらふらとどっか行っちゃうから。
探して走り回んなきゃなんねーワケ。
見つけてくる僕も僕だけど。


















走る




















「ステラ?おい、スティング、アウル。ステラはどこ行った」
「さあ?」
「しんねー」


あと数日でインド洋に入るという日の出来事だった。
ネオは地上に降りた新型艦の追撃にあたっていて、
その艦を発見したと近隣の基地からの通報が入った。
ネオは俺らを集めて作戦会議のつもりだったのだけれど、
肝心のパイロットが一人足りなかった。
言うまでもなく、ステラだった。
ネオはステラを探してきょろきょろと辺りを見回すと僕とスティングを交互に見やった。
スティングは知らないと頭を振り、
僕は知っていたけれど、もちろん知らないと嘯いた。
あいつは多分甲板の上でぼへーと海でも見てんだろーよ。
100パーセントそうだ、保障するね。
でも僕はステラを探しに行くのは真っ平ごめんだ。
一緒に作戦会議なんぞ時間と労力の浪費。
腹減りゃ戻ってくるだろーし、探すだけ時間の無駄。
だってさ、あの馬鹿に作戦行動なんて崇高なモンができるのかよ。
毎度敵陣の中に突っ込む事しか脳ねーし。
あいつにはおとなしく蚊帳の外にいてもらいたかった。
その方が楽で好い。

なのにネオはステラがいないと始められないとダダをこねて(ガキかよ)、
スティングはスティングでステラーといいながら動物園の檻に居るどーぶつのように
部屋を行ったりきたりしている(あと数分もすればステラーとテンパリながら
部屋飛び出してくぜ、間違いねぇ)。


なんでこうもステラ馬鹿なんだよ、二人とも。

とにかくこのままでは埒が明かないから(めんどくせー)、
僕とスティングはステラを探して部屋を出ると
当初知らないといった嘘がばれねーように僕はさっさとスティングから離れて甲版へと向かった。

そして。

思ったとおりあいつはいた。
おまけ付きで。

あいつの傍に一般兵の軍服を着た野郎が二匹。
一匹はステラをお持ち帰りしようと彼女を抱えあげ。
もう一匹はそんな相棒にやめろよと懸命にも諭していた。
ステラは何をされているか分かっていないようで視線を海から外そうとしない。
馬鹿にもほどがある。

このままステラを連れて行っちゃ困る。
それ以上に連れて行ってあとで困るのはお前らだろーけど。
この艦に来てからまだ日が浅い事もあって、
一般兵どもの間では俺らファンタム・ペインの事を知らないやつがまだ多い。
ここは一つ挨拶代わりに教えてやろう。
そう思うとすっげー楽しくなった。


地をけって走り出す。
あっという間に野郎の一人に肉薄すると
僕はそいつを足場代わりに宙へと飛び上がると
軽く身をひねった。
足元の奴がカエルが潰れたような間抜けな声をあげたけど
んなこたぁどうでもいい。
地に着くとその勢いのままステラを捕まえていたもう一方の
襟首を引っつかみ、締め上げた。
もちろんポケットの銃も忘れずにv


「こいつさ、ボーっとしてっけどキレっとまっじぃこわいよぉ〜〜〜?」


自己紹介もかねたちょっとした挨拶。
結果的にこいつらは命は助かったんだ、ちったぁ感謝してもらいたいね。
・・・・言ってもわかんねーだろけど。
ま、これで俺らにちょっかい出す奴は居なくなるだろーな。
めでたし、めでたし。

さて肝心のアホステラは、と言うと何事もなく海を見ていた。
スティングじゃねーけど、「やれやれ」だぜ。
こういうときの対処法は分かってる。
気にくわねーけど。


「ネオが呼んでるぜ」


とたん空気が変わる。
先行く僕の後ろを満面の笑顔でアヒルの子供のようにひょこひょこ付いてくるステラ。
単純なおばか。
なんかむかついたけれど、同時にすっげー面白かった。
面白おかしくて笑みが浮かぶ。


「ってことはまた戦争かぁ。ま。それが俺らの仕事だしぃ?」
「うんっ!!」

「今度は何機落とせっかなぁー」
「うんっ!!」


・・・・か、会話がかみ合ってねー。


「ばーか」
「うんっ!!」

「あーほ」
「うんっ!!」

「・・・・死ね」
「うんっ!!」


・・・・。
・・・・・。
・・・・・・まぢ?
・・・・ブロックワード言ったんですけど。
騒がれんのも嫌だけど、これには正直ずっこけそうになった。
ぜんっぜん聞いてねーじゃねーか、このアマ。
髪の毛引っ張って泣かしてやろーかと思ったけれど。
もっといーこと思いついたっと♪


「ステラァ、今日の晩飯のおかずよこせ」
「うんっ!!」


おおっ、大・成・功!
もういっちょ。


「デザートもなっ!!」
「うんっ!!」


うはっ、僕ってば賢い!!
でも念には念を入れよ、ってね。
ケケケ。


「あとでダメ、は無しだかんな!!誓え」
「うんっ!!」


おっしゃあああああああああああ(ガッツポーズ)


「ステラのチーズカツとアイスげっとぉ!!いやったぁあああああああっ!!」
「ほえ?」


ここでやっとおつむが現世に戻ってきたらしい。
ちーずかつ?
あいす?
とボケ面で聞き返してきた。
でもおせーよ、ばーか。
僕はにやりと笑うとそーだよ、と頷いて見せた。


「お前がおかずとアイスをくれるっつってんだよ」
「ステラ、そんな事言ってない・・・」
「いーや。おかずとデザートよこせっつったら、うんっ!!てはっきりと返事したぜ?誓うか?と聞いたらまたうんって返事した」
そ、そんな」


泣きそーな面をしたけれど、聞いて無かったステラのほうが悪い。


「なに?お前嘘ついたんだ?お前、嘘つきだったんだな?」
「す、ステラ嘘嫌い・・・・」
「くれないっつーなら嘘ついた事になるぜぇ?あーあ、喜んだ僕が馬鹿だった」


大げさに肩を落として、ステラをこっそり横目で見やるとステラは目に涙をためて身を震わせていた。
ケケケ、ばーか。
ちょろい、ちょろい。


ステラは嘘が大嫌いだ。
つくのもつかれるのも嫌いだってさ。
あほか。
この世の半分以上は嘘で出来てんのにさ。


「ステラ、何食べれば良いの・・・・・?」
「菜っ葉くらい残ってんじゃねー?」
「なっぱ・・・・」


それだけじゃ足りないとぼやくボケステラ。
心のやさしー僕は僕のおかずのひとつを分けてやる事にした。


「しょーがねー、僕のピーマンやっるよ。ありがたく思え」


ちなみにピーマンは大っ嫌い。
人間の食うもんじゃないね。
押し付けただけだって?
そーだよ、文句あんのかよ?
散々探させて(大して探してないけど)、
面倒をかけた挙句人をシカトしたんだ。
トーゼンの報い。
ところがステラの奴。


「うんっ!!ありがとう!!」


馬鹿正直にニコニコ礼を言ってきやがった。
聞いてなかったのかよ。


「ピーマンやるって言ったんだぜ?」
「うんっ!ステラピーマン好き!」


に、人間じゃねー。
それより。
何よりあいつは笑ってありがとうだって。
・・・・ありがとう、だってさ・・・・。


「なぁステラ」
「なに?」


今度はちゃんとこっちを見て答えるステラ。
ピーマンが嬉しかったのかなんだか知らないけど、
ホントすっげー嬉しそうで。
胸の奥がちくりとした。
ステラの顔がまっすぐ見れず、
僕は先を行きながら背中越しにステラに声をかけた。


「僕の分のおかず半分とデザートやるよ」
「・・・・いいの?」
「いっぱいもらったからな」
「うんっ!!ありがと、アウル!!」


どんな表情しているか前見てるから分からないけれど、
ステラの声は弾んでいてチーズカツ♪アイス♪と鼻歌を歌っている。
とてとてと後をついてくる気配がする。

結局収穫はステラのおかず半分。
でもあいつが喜んでいるなら。
笑っているのなら。
まあいいか、と思った。


ステラは馬鹿だから
目を離すとあっちにフラフラ。
こっちにフラフラ。
俺らはステラを探して走り回る。
何度言っても直す気配は無いからもはやあきらめの境地にある。
ステラ、だから仕方ねーってな。







なんだよ?
あと半分は返さねぇのかって?
うっせーな、僕は育ち盛りなんだよっ!


















あとがき

今更ですが。
伝説の15話vみなが元気だった頃だったなー。
アウルのいたずらっぽい表情が忘れられません。
アウルっていつも走り回っているイメージあるんです。
OPとかで躍動感あるイラストが多いからでしょうかね?

アウステは小学生みたいなところがあるのがいいv
ほのぼの。
シリアス。
ラブラブ。
雰囲気はジャンルごとそれぞれ違うけど、不器用なところは共通かな、と。


アウステは永遠です!!






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