暖かな太陽、蒼い空。 母なる地球を模倣したそれはよく似てはいたけれど、表情に乏しくやはり造りものめいたもの。 春、夏、秋、冬。 四季の空をプラントの住民は知らない。 一つのきっかけ とあるプラントにある公園のベンチの端と端に腰掛ける二つの影。 一つは翡翠の目に青紺の出で立ちをした少年。もう一つは深い湖水の瞳を持つ、淡い桃色の少女。 二人はただ黙って空を眺めていた。 「いい天気ですね」 青紺の少年が緊張気味にそう言うと傍らに座っている桃色の少女がそうですね、とはにかむ。 「日差しが柔らかくて暖かいですわ」 黙り込む少年。 少女は其の傍らで微笑む。 しばらくして少年は遠慮がちにまた口を開いた。 「いい天気ですね」 先ほどと寸分も違わない言葉ではあったけれど少女もそうですわねと朗らかに笑う。 「雲が真っ白で大きくて元気いっぱいですわね」 黙り込む少年。 少女は傍らで微笑む。 またしばらくして少年は身を固くしたまま口を開いた。 「いい天気ですね」 代わり映えの無い言葉であっても少女はそうですね、穏やかに微笑む。 「空がとても広いですわ」 黙り込む少年。 少女はその傍らで微笑む。 そしてまたしばらくして少年は迷いがちに声をかけた。 「いい天気ですね」 変化を見せなかった言葉でも少女はそうですね、静かな笑顔を見せる。 「ぴんと張った空気が清々しいですわ」 黙り込む少年。 少女はその傍らで微笑む。 少年は前を向いたまま視線だけを動かすと、傍らに座る少女の優しい横顔が見えた。 数多のときを、季節を過ごしても変わらぬ二人の距離。代わり映えのない、退屈な会話。 それででも少女はいつも優しく、穏やかで。 その蒼い瞳は代わり映えのないはずの空にどこかの空と重ね合わせているかのように時を刻んでいる。 ほしいのは少しの勇気。 ちょっとしたきっかけ。 少年は視線を前に戻すと深呼吸を一つした。 そして意を決すると。 少女のほうに向き直って手を差し出した。 「少し歩きませんか」 少女はじっと其の手を見つめ。 そして少年に視線を戻して小首をかしげた。 一拍の沈黙。 少年が不安の色を見せ始めた頃、少女は嬉しそうに口元をほころばせると。 「喜んで」 と。 鈴の音のような声で彼の手に応えた。 あとがき アスラク。 プラントには一応季節はあるけれど、空は代わり映えのないものではないかと思います。季節ごとの空は降水量や日光の強さ、雲の量だけで変化はみせられないのでは・・・・と。一部除いてそういうのに無頓着ではないかとも。それはナチュラルにも言えた事ですが、あくまで人の手によって季節を管理されているプラントではなおさら空は表情に乏しいのでは、と思いました。 アスランとは春、夏、秋、冬と四季を通してたびたびあっているなか、変わり映えの内容に見えるけど、其の時はしっかりとラクスの中で刻まれています。 季節ごとの一コマを切り取ってお送りしました。 |