「へえ、僕とつきあいたいの?」
「は、はい・・・・」

馬鹿?
話したこともないのにさ。
僕の何処が好いの?
僕の強さ?
見ため?
ま、自慢じゃないけどどれも自信はあるけどね。

アウルはマリンブルーの瞳を細めると、
頬を染めてうつむいた栗毛の少女を見つめた。
その目には嘲笑の色が見え隠れしている事に
一世一代の告白をした彼女は気付いていない。
この栗毛の少女はオペレーターの一人だ。
栗毛色の髪に緑の瞳が印象的な少女で
彼女は襟元の階級章からしてアウル達より階級が上の中尉だった。
またエクステンデットであるアウル達の事もよく知っていた事から
情報にも通じているらしかった。
アウルとそう変わらない歳でこの階級と職務にいる事から見ると
彼女はそれなりに優秀なのだろう。

情報提供者として利用するのも手だな。


くすり、と喉の奥から笑いがこみ上げてくる。
アウルは口端を持ち上げると少女の目をのぞき込んだ。
緑の掛かった目が不安と期待に揺れている。
目は綺麗だなと素直な感想をアウルは持った。

「いいよ」
「本当ですか?」

彼の返事に栗毛の女に顔いっぱいの笑みが広がった。
ふつうならば華咲くような笑顔と言った印象を持つものなのだろうが、
アウルには何も知らない、無知で腹立たしい存在としか映らない。
彼がよく知っている一人の少女を思い起こさせたから
余計そう思えたのかもしれなかった。

やっぱ馬鹿だ。

アウルはそんな少女に嘲笑を込めて言った。

「ヤらせてくれるならいーよ」











エゴイステック・エモーション




















「・・最低だな、お前」

話を聞くなりスティングは顔をしかめた。
手元にはカード。
あれから小一時間後。
アウルとスティングは自室で互いに向き合ってカードにこうじていた。少し離れたところでステラがいつものように一生懸命に魚を眺めている。

「あ?良くも知りもしねーのにいきなりつきあってくれって言ったんだぜ?フツーそう思うじゃん」
「・・・・思わねーよ。もっといい断り方があるだろう?」
「別に断るつもりはなかったんだぜ?ヤらせてくれんなら」
「・・・・・」

スティングは顔の前で広げていたカードを下げると苦虫を噛みつぶしたような顔でアウルを見やった。その金の瞳には明らかな非難の色が浮かんでいる。彼なら会った事もない他人に対しても実直な態度を示すのだろう。

クソ真面目なリーダー様はお気に召さないってか?

だが彼のそう言う所はアウルにとって無駄な事としか思えなかった。そしてそんなスティングが腹立たしくさえもある。そんな心中を押し隠し、アウルは彼を揶揄するように笑って見せた。

「だったらさー、お前つきあう?」
「何でそうなるんだよ」
「だったら口出すなよ」

僕の保護者かっつーの。
スティングのそーゆートコ、うぜえ。ホント。

アウルは自分には関係のないはずの事にもあれこれ口を出してくるスティングから苛ただしげに視線をそらし、手元のカードを見つめた。だが、スティングとの会話で心に生じた荒波で思った以上にカードに集中できない。イライラして視線を部屋の方に移すと、ステラが同じ姿勢のままで魚を眺め続けているのが見えた。

何、こいつ?
置物かよ?

金の髪の少女で憂さ晴らしをしようと、彼は早速心のいらだちの矛先を彼女の方へと向けた。口端に意地の悪い笑みを浮かべ、ベットに手を突いた姿勢で肩越しに声を掛ける。

「おい、ステラ」

だが返事はない。

シカト?

思いもよらなかった少女の沈黙にますますイライラしてきたアウルは声を荒げた。

「おいっ、ステラ!シカトこいてんじゃねーよ、馬鹿!」
「アウル!」

そんな彼にスティングが咎めるように声を上げたが、アウルはいちいちうっさいンだよと心の中で毒を吐きながら当然それを無視した。そしてようやくアウルに気付いたのか、ステラは水槽から顔を上げ、やや怯えた瞳でアウルを見た。その表情に先ほどまでのいらだちが嘘のように晴れて行き、替わりにサディスッテックな愉悦がアウルの中にわき起こっていった。

別にとって食うわけじゃないのに。
・・今は。

「お前も来いよ。やろうぜ、カード」
「わたし、いい・・・・」
「へえ、僕に逆らうの?」
「・・・・」
「おい、いい加減にしろ」

助けを求めるようにスティングを見るステラ。当然スティングは彼女をかばいに来る。おきまりのパターンにアウルは辟易とした。

「あ〜はいはい。リーダー様の言うとおりにしますぅ」

馬鹿にしたように手をひらひらと振ってみせた。

そこへ空気が抜けるような音を立てて仮面の男、ネオが部屋に入ってきた。

「ネオ!!」

途端ステラのさっきまでの怯えた表情は跡形もなくぬぐい去られ、喜びで顔を顔を輝かせて飛びつくように彼に駆け寄った。そんなステラがますます面白くなく、アウルは更にいらつきを募らせた。

「ハハ、ステラはいつも良い子だな。だが、今もう遅いぞ?そろそろね・・・」

バシッ!

そのとき部屋の中に響いた鋭い音にステラはびくりと身体をこわばらせ、ネオは愕いて顔を上げた。音のした方向にはアウルが鋭い表情でカードを床に投げ捨てていた。険しい光を宿した瞳は床に散らばったカードに向けられていたが、敵意は明らかに此方に向けられていた。

「気分わりぃ」

アウルはそうつぶやくとカードを放ったまま地面を蹴った。ステラは縮こまってネオの後ろに隠れたが、彼はステラに目もくれず、横を通り過ぎるとそのまま部屋を飛び出した。

「おいっ、アウルっ!」

背後で彼をとがめるスティングの声を聞いたが、アウルはそれを無視し、廊下へと出た。後ろでしゅんと扉が閉まった。


その後。
人気の途絶えた通路をあてもなくさまよい歩き、行き着いた先は海を見渡せる展望室。ガラス一枚隔てて暗い海がみえる。おそらく休憩所として使われているのだろう。いくつかの自販機に、テーブル。ソファーが 置かれていた。夜中に近い時間のせいか、人影はなく、ひっそりとしていた。アウルは空いているソ ファーの上に身を投げ出すと目を閉じた。先ほどの事が脳裏に浮かぶ。

ちょっと怒鳴っただけで怯えるステラ。
ネオを持って幸せそうなステラ。
スティングに可愛がられて嬉しそうなステラ。
何故アイツらばかりに懐く?
何故ステラばかり大事にされる?
優しくしくれるなら誰でも良い、あの馬鹿だけが何故。

そのように思う自分が惨めな気さえしてくる。
誰か自分だけを見てくれる存在はいないのだろうか。

そんな想いだけが頭の中をぐるぐると駆けめぐり、同時にその感情を認めたくないアウルはいらだちを募らせるばかりだった。

あいつは自分に優しいやつなら誰でもいいんだ。
だから僕が優しくしなくてもアイツは平気なんだ。
胸クソわるい・・・。

起きあがるとぼんやりと自販機の前に立ち、その光を見つめた。当たり前だが、酒は販売してない。

ガンッ。

悔し紛れに自販機を蹴ると、ふいにどこからか声が挙がり、アウルは蒼い瞳を鋭くした。ぐるりと室内を見渡すと先ほど寝ころんだソファーから少し離れたソファーから体を起こした人影が一つ。アウルは苛立っていてその気配に気付かなかった自分に舌打ちをしながら、その人影を見やった。

「やだな、もうこんな時間?ひどぉい、置いてけぼりじゃない」

その人影とは一人の少女だった。透けるような金髪に蒼い瞳。
ピンクの軍服を軽く羽織り、下はラフなジャージ姿で眠たげにぶつぶつと文句をつぶやいている。課業中以外、そして執務室以外はその格好でも良いという規則だからその格好なのだろう。船内 は執務空間であると共に居住空間でもあるからだ。

「ん〜?あ・・・あなた。エクス・・・」

少女はアウルの姿を認めるとそう言いかけたが、慌てて口を閉ざした。蒼い瞳には怯えの色がちら ちらと浮かんでいる。その様子にアウルは口端をつり上げた。少女の金髪とその表情にステラが重なったのかもしれない。少しいじめてやりたい気分になり、彼女に近づいた。

「こんな時間に何やってんの?」
「うぇっ。そ、その・・・整備で遅くなっちゃって一風呂浴びたらここで眠り込んでしまっていたみたいで・・・。その、お邪魔してすみません・・・。す、すぐに消えますから」
「何びびってんの?」
「ひっ」

手を伸ばして金の髪に触れると、少女は短く悲鳴を上げて縮こまった。アウルはかまわずその髪を 梳く。ステラのと異なり、まっすぐな毛質だったが、その艶は申し分なかった。かすかな笑みを浮 かべるアウルに少女は不思議な物を見るような目で彼を見ていた。よくよく見ると綺麗な子だなぁ という印象を彼女は受けた。

「あ?何だよ?」
「うえっ、すいません。ニーダ少尉」

聞き慣れない呼び名にアウルは顔をしかめて手を離した。

「あんた、僕を知ってるんだ」
「そりゃあ、機体の整備担当しているし。何よりも同期がいつもあなたの事ばっかは話していて、 今日告白したって・・。あ」

そこで余計な事をしゃべったと慌てて口を閉ざしたが、その言葉にアウルは昼間の栗毛の少女を思い出し、目を細めた。

「へえ。同期なんだ。あれからどうしてた?」
「なんかすごい回答をいただいたそうで・・・。ってゆーか何て言われたか聞いてないけど、それでもつき合いたいみたいな事言ってました・・・。あの、できれば頭の隅にでもご検討いただければと。いや、無理に、とは言わないので」

自分でも何を言ってるのか分からなくなってしどろもどろになっている少女にアウルはにこりと 笑って見せた。彼の笑顔は男女問わず、大きな破壊力を持っている事を彼自身が知っている。アウ ルの意図通り、少女の警戒と恐怖はあっという間に消え、彼女はぼうっと頬を染めた。

「ねえ、その子の居場所は?今から会いに行ってもいーい?」
「へ?起きていたら、だけど・・・・。残業するって言っていたから多分起きていると思うけど」

夢見心地のままの表情で少女はあっさりと同期の執務室と部屋の場所をアウルに教えてしまっていた。

「さんきゅー。これは他言無用で、な?」
「は、はい・・・・」

少女に軽く口づけると、ぼうっと顔を上気させた少女を残してアウルはその場を後にした。


少女の言ったとおり、執務室にはまだ灯りが灯っていた。まだ仕事中?ご苦労なこった、とアウルは皮肉めいた笑みを浮かべて部屋の前に立つと、扉のセンサーが彼の体温を察知し、扉が静かな開閉音を立てて開いた。その音に栗毛の少女は書類から顔を上げて来訪者を見やった。

「こんばんは〜」

アウルはにっこりと笑うと軽く手を振って見せると、愕いた少女はガタガタと音を立てて立ち上が った。その拍子に沢山の書類が宙に舞った。慌てて拾い上げようとする少女の方へと歩み寄り、ア
ウルもしゃがみ込むと共に書類を拾い上げていった。書類にはアウル達の機体の状況報告書、スケ ジュール・・・・そして見た事のない機体の書類があった。その書類に目がいったが、今のアウルにはどうでもいいことだった。

「有り難うございます、少尉」
「アウル、でいいよ?」
「は、はあ・・・・」

昼間の事がまだ残っているのだろう、ぎこちない笑みを浮かべる少女にアウルは笑顔で金の髪の同期が言っていた事を口にした。

「ね、昼間の事考えてくれた?」

その言葉に少女は一旦うつむいて黙り込んだが、意を決したように顔を上げるとアウルと視線を合わせて告げた。

「わたしに・・・・あなたの心に入り込める余地はありますか?」
「それはあんた次第」

アウルはそう笑ってみせると、少女の手を掴み、その場に押し倒した。


ーーーー結局誰でも良い。
僕を見ていてくれて、この心の隙間を埋めてくれるやつがいるのなら。
・・・・何だ。
僕もステラとか変わんじゃん?

自分の下で喘ぐ少女を冷めた面持ちで見やりながら、アウルは自嘲めいた笑みを浮かべた。



「お前昨夜何処行ってたんだよ!?探したんだぞ!?」

朝、顔を見るなりしかりつけて来たスティングをアウルはうっとしげに見やった。本当に探し回っていたらしく、スティングの目の回りに隈ができて折り、その顔にアウルは思わず指さして吹き出した。

「ぶっ。なんだよー、そのツラ!!」
「うるせぇ、質問に答えろっ」
「女の所」
「なっ」

絶句したスティングにアウルはにやりと笑って見せた。

「真面目なリーダー様には分かんないだろうけど、一時的にせよ、僕を欲しいって言ってくれるヤ ツもいんの。昨日の馬鹿女みたいにさぁ。当分は人肌には困らんないしー、しばらくは部屋にもどんないかも」
「お、おまえ」
「うっさいな。相手もそれで良いって言ってるからいいじゃん?なあ、ステラ?」
「・・・・!ステラ、お前いつから・・・」
「最初、から・・・・」

アウルの言葉に驚愕したスティングが振り返ると、ステラがぼんやりと立ちつくしていた。桜色の瞳が揺れているのを見ると様子からして話を全部聞いていたらしい。だが、ステラのことだから話の半分も理解していない事を祈りつつ、スティングは何でもないから気にするなと彼女の頭を撫でた。だが。

「ステラぁ、僕新しい抱き枕見つけたから。すっごく可愛いんだ。だから僕はお前なんていなくても好い」

ステラの近くによると、彼女の顔をのぞき込み、にっこりと笑って低く付け加えた。

「お前なんて、もういらない」
「アウル!!」
「あはははっっ!じゃあねー」

スティングの怒声を軽く受け流し、ステラの横を素通りしていった。その際ちらり見したもののう
つむいていた彼女の表情はうかがい知ることは出来なかった。そして彼女は一言も発せず、振り返 ろうともしなかった。

アウルは一人の女を手に入れた事でスティングやステラに対して優越感を感じていたが、それはす ぐに消え、残ったのは心のしこり。自分を一番に見てくれる存在を見つけた。そのはずなのに心は 晴れるどころか暗雲が立ちこめている。その理由が分からず、それが彼を更に苛立たせた。






「んんっ。や・・・・っ」


晴れない心をどうにかしたくてアウルは気の向くまま、少女をベットに組み伏せ、荒々しく彼女を 抱いた。でも体は熱くても心は冷え切っていて、晴れる事がない。髪を乱して彼にしがみつく少女 がうっとおしくさえ感じる。アウルは栗毛の少女が上り詰めたのを確認すると、さっさと自分を引き抜き、彼女の白い身体に欲望をぶちまけた。その勢いで飛び散ったのが彼女の顔に白い線を作った。

「きゃ・・・。今日、中でも良いって言ったのに・・・・」
「あ、そう」

不満そうな少女に冷ややかな一瞥を送ると、アウルはさっさとシャワー室へと向かった。士官クラ スの彼女の部屋にもシャワー室が完備されている。下手にスティングやステラと顔を合わせなくて 良いから便利だと彼は思った。蛇口をひねると熱い湯が落ちて来てアウルを濡らしていった。ここ 数日共に過ごしても、共に寝ても少女を抱きしめる気にならない。情事のあと側に寄られてもその 存在がうっとしかった。熱いシャワーを受けながら何をやってるんだろうと彼自身問いかけては何度も行き着いている答えに ぶつかる。

今自分がやっているのはステラに対するただの当てつけだった事を。

ステラには自分を見てもらいたかった。自分だけを。
それが叶わないと分かっていてもなお求めてしまう。
だから替わりを求めた。
自分を一番に見てくれる存在として。
自分を愛してくれるならば自分も愛せるとも思った。
そしてそれにステラが何らかの反応してくれればと思ったのだ。

けれど。

ステラはいつもと変わらず。
スティングがたまに向けてくるアウルを哀れむような目に心をえぐられた。

ガンッ!

「ちくしょう・・・・」

壁に拳を打ち付け、アウルは唇を噛みしめた。
身体を伝わって落ちてゆく湯が足元で渦を巻いていた。

「泊まっていかないの?」

シャワー室から出るなり着替えを始めたアウルにベットの上から少女が声を掛けた。少女の方を見 ようともせず、アウルは黙ったまま着替えをすませると顔を上げて少女を見やった。

「悪いけど、あんたとはこれっきりにする」
「え・・・・っ」

突然の別れの言葉に少女は言葉を失って緑の瞳を見開いた。ああ、やっぱ瞳は綺麗だな、とアウルは感じた。ステラの桜色の瞳とひけは取らない。瞳だけは。少女は唇を振るわせてアウルをその瞳で凝視していた。

「どう、して・・・・?」
「飽きた」

ばしゃっ。
がっちゃん。

花瓶の破片が床に飛び散った。
投げつけられた花瓶の水を頭からかぶり、ずぶぬれになりながらもアウルは唇を振るわせる少女に笑って見せた。

「気は済んだ?帰るけど?」
「二度と顔見せないで!!」

少女の金切り声を背にアウルは部屋を出て行った。

「使い捨てのエクステンデットのくせに!!」

扉が閉まる間際に投げつけられた言葉。何度も影で言われてきた言葉。

所詮は上辺だけの存在なんだよ、互いにね。
住む世界も違うし。

アウルはもう一度閉まった扉の方に目を向けて一つ息を付くと、帰るべき場所を目指して地を蹴った。


「あうる・・・?」
「なんだ、おまえかよ、ステラ」

だが部屋に戻る途中、アウルは今最も会いたくない存在と遭遇してしまった。
女と別れたあとでしかも自分はずぶぬれ。
みっともない所をステラに見られ、彼は自分の不運さを呪った。

「アウル・・どしたの?濡れてる」
「うっさいな!そんなの僕の勝手だろ!」
「でも風邪、ひくよ・・・?」
「すぐに着替えっから、どけよ」

ますます格好悪いと彼はステラの手を振り払おうとしたが、彼女は断固として離さなかった。
頭がずきずきする。
アウルはイライラしてステラを怒鳴りつけようとしたが、不意に近くなったステラの顔に彼はどきりとした。

「アウル、頭から血出てる・・・」
「あ?」

言われて始めて額から出ていた血に気付いた。
どうりで頭が痛かったはずだ。
花瓶をぶつけられたとき、額を切ってしまったらしかった。
ますます格好悪いと彼はステラの手を振り払おうとしたが、彼女は断固として離さなかった。

「手当てするから、部屋来て?すぐ終わるよ?」
「自分でやるって」
「や。こういうときのアウル、ちゃんとやらないもん」

こういう時ってどんなときだよ、とアウルは文句を言おうとしたが、ステラは頑固に手を離そうとしない。これ以上の押し問答をする気力もなく、彼は仕方なくステラに付いていく事にした。




今の時間帯では消灯時間を過ぎていたこともあって、部屋の照明が落とされており、スタンドだけがついている。その照明の下でステラは懸命にアウルの傷の手当てをしていた。


「はい、終わり」

濡れた頭を拭いたあとの消毒とバンドエイドという簡単な処置に僕がやっても同じじゃん、とアウルは溜め息をついた。

「でも、ずっとアウルと話していなかったから。こうしていられるの、嬉しい」

ニコニコと笑うステラにアウルは口をつぐんだ。頬が紅くなっていくのが自分でも分かり、彼は部屋の照明が暗かったことに安堵を覚えた。

「痛いの、痛いの。とんでいけー」
「ばっかみてぇ」

アウルは自分の頭を撫でておまじないを掛けるステラに苦笑した。でも彼女の手の感触は少しも不快に感じられず、彼は大人しくされるがままだった。久方振りのステラとの会話に自然と笑みさえ浮かぶ。ほとんど会話らしい会話をしなかったのはほんの数日だったのに、何年も離れていたような気がした。彼女の代わりなんていない。いるわけがない。そう思うと胸が熱くなり、腕を伸ばしたステラを抱きしめた。

「アウル・・・?」
「黙ってろ、馬鹿」

きゅっと背中に回されたステラの腕。彼女の温もりはこんなにも暖かく、安心する。

「ステラ・・・。お前の事いらないって言ったよな」
「・・・・」
「あれ、嘘だから」
「・・・・うん。でもね、アウル」
「ん?」
「アウルがいらないと言っても、ステラは待ってるから。いつでも待ってる」

戻ってきてくれるのを。
アウルの居場所はいつでもあいているという言葉にその言葉にアウルは不覚にも泣きそうになった。華奢な身体を抱きしめる腕に力を込める。

「アホ」
「アホ、じゃないよ・・・っんんっ」

唇を塞がれ、ステラの言葉が途切れた。
アウルはゆっくりとステラの唇を割り、歯茎と歯を丁寧になぞってゆく。
くすぐったいのか、ステラは体を震わせた。
少し空いた唇から舌を差し込むとステラもそれに応えて舌を絡めてくる。
互いに唇と舌を吸い合うぴちゃぴちゃとした音が静まり返った部屋に響く。
頭のくらくらする、甘美な目眩に二人はしばし酔いしれた。
アウルはゆっくりステラを後ろに倒すと、彼女の上にのしかかって更に唇を貪り、腰を彼女のに強く押しつけた。
そして唇を離すと、恍惚とした表情を浮かべるステラの首筋から鎖骨に舌をはわせ、強く吸い上げては紅い跡を付けていった。

「んん・・・っ・・ふぁ・・・っ」

愛しい少女の甘い声はアウルを更に興奮させてゆく。
軍服を脱がせ、インナーの肩ひもを外すと彼女の豊かなふくらみが露わになった。その桃色の先端は既に堅くとがっており、その存在を強調していた。手の平に収まりきれない胸を上下に揉みしだくと敏感な先端をわざと避け、周りを舌でなぞっていった。

「はあっ・・・。アウル・・・・・。いじわる・・」

ステラの潤んだ瞳で彼を見上げると、手を伸ばして彼のシャツに手を伸ばした。

「はいはい」

クスクス笑いながらアウルは自分の来ている物を脱ぐと、同様にステラも一糸まとわぬ姿にした。

「これでいいかよ?」
「ん・・・・。アウル、あったかい」

彼の背に手を回してしがみつくステラの髪を撫でると、うっとりと目を閉じる。アウルはそんな彼女が愛しくてたまらず、何度も口づけた。
大事な、大事な少女。

「はぁ・・・んっ。アウル・・・、アウル」

ぴんと張った先端を甘噛みをして吸うとステラが泣き声のような喘ぎをあげる。彼の頭をきつく抱きしめ、うわごとのように彼の名をくり返した。

「お前、ここ弱いもんな・・・・」

双方の胸を交互の舌と唇で愛撫し、ゆっくりと唇を下へと降ろしてゆく。彼女の身体の線をなぞるように触れて行き、彼女の秘部にたどり着くと、指の腹で入り口をそっと撫でた。

「きゃうっ」

触れただけで電気が走ったようにステラは身体をはねらせる。彼女の秘部は既に濡れていて、透明な愛液が内股まで伝ってシーツを濡らしていた。

「もうこんなんかよ。感じすぎ」

やらしいヤツと呟くとアウルは秘部の中心を指で開くと、中指を差し入れた。ステラの中は蕩ろけるように熱く、彼の指に絡みつき締め付けてくる。

「あぁ・・・・んっ。や・・・あっ・・・ん」

シーツを握りしめて喘ぐステラの艶やかさにアウルは早く自分を挿れたいという衝動に駆られたが、彼女をもっとじらしたいとい意地悪さもあった。じらしてもっと乱れさせたい。

クチュクチュ。

わざと大きく卑猥な水音を立て、中をかき回してゆく。指を動かすたびにステラは身体を軽く痙攣させて喘ぐ。

「ひゃあああぁぁ・・・・・・んあぁっ! あ、ああぁ・・・・」

そしてアウルが秘部の中心に在る花芽を掴んでこねくり回すと、大量の愛液を溢れさせステラは達した。白い身体を紅潮させ、荒く息を吐き出す彼女に様子にアウルは満足げに蒼い瞳を細めた。自分の思い通りに反応する、感じやすいステラの身体。自分がその快楽を教え込んだ事に喜びを感じてアウルは指を引き抜いた。大きく開かれた脚の間で桃色の秘部はアウルを求めるかのようにヒクヒクと蠢いていた。そこから滴る愛液を舐め取るように内股からゆっくりと舌を這わせてゆくとステラはその快楽に耐えるように甘い吐息を吐き出した。

可愛いじゃん。

ますます嬉しくなったアウルは舌を秘部に這わせると花弁を割って、中へと差し入れた。舌先に力を込めて溝から花芽までを強く抉り上げると声を我慢できなくなったステラが泣き声のような声を上げた。

「やあ・・・・っ・・・あ・・・・」
「ステラ・・・・」
「ああ・・んっ・・・」

次々と溢れる愛液をすくいながら花芽を吸い上げる。敏感な所を何度もなんども刺激され、ステラはアウルの頭をくしゃくしゃとかきまわして体を震わせた。

「アウル・・・・お願い・・・」
「なんだよ?」

ぴちゃぴちゃと唇で秘部を愛撫しながらアウルが意地悪く問い返すとステラは羞恥心で顔を赤らめてとぎれとぎれに哀願した。

「アウル・・・が欲しい・・」
「何が?」
「意地悪しないで・・・・。っ・・・ああ・・・っんっ!!」

言葉を言い終わらないうちに秘部を吸い上げられステラは背中を弓なりに反らした。
きつく閉じられた彼女のまぶたからつううと涙がほほをつたい、息も荒げに胸を上下させている。アウルは顔を上げると彼女の目尻に口づけた。

「あ、アウル・・・」

ステラはアウルの名をつぶやくと首に白い腕を回すと、自分から口づけてきた。
熱い舌がアウルの口に入り込み、彼の舌を絡め取る。

「んんっ・・・」

互いの唾液が混ざり合い、収まりきらなかった唾液が口端からしたたり落ちる。
普段より積極的に求めてくる彼女にアウルの熱も上がって行き、ステラに潤んだ瞳で見上げられたときはアウル自身も痛いくらい膨張していて、先走りの液が溢れていた。

「ん・・・・。僕もそろそろ限界・・・・かも」

ステラの秘部を探るようにアウル自身をこすりつけると、彼を迎え入れようとステラも脚を広げた。脚の間にある、濡れそぼった秘部に彼自身をあてがうと、アウルは腰をゆっくりと入れていった。

「う・・・あ・・・あぁっ・・・!!」

自分を押し開いてを侵入してくる、待ちこがれた感触を逃すまいとステラはアウルの腰に脚を巻き付けた。

「は・・・・っ。・・・お前ん中すっげー熱い・・・」

アウルを自身を根本まで埋め込むと、ステラの中の熱と締め付けに吐息を漏らした。
まだ動きを加えていないと言うのにステラの膣はまるで生き物のように蠢き、彼を締め付けてゆく。しばらく抱き合ったままだったが、アウルはやがてゆっくりと腰に動きを加えていった

じゅぷじゅぷ。

秘部から溢れた愛液がさらに結合部の滑りを良くしてゆく。
アウルは一定のリズムから徐々に大きくうねりを加えて腰を打ち付けていった。

「っ・・・は・・・あっ・・。アウ・・ル・・・。アウル・・!!」
「・・・・ステラ」

大丈夫だって。
離れねぇから。
・・・離したくない、から。

うわごとのように彼の名を呼び、しがみついてくるステラに愛おしげに口づけながらアウルは的確に弱い所を突いてゆく。

もっとステラが欲しい。
もっと声が聞きたい。

「ぁあ、あ、あ・・・っ!!あぁ・・・・んっ!!」

激しさを増してゆくアウルに最早抑えの効かないステラの声が高くなってゆく。

「ステラ・・・!ステラ・・・っ!!」

腰を強く打ち付けながらアウルは彼女の唇を貪る。
くぐもった喘ぎをあげるステラはアウルの背中に爪を立てると、体を小刻みに震わせた。限界が来た事を知らせるようにステラの膣は収縮を繰り返し、ヒクヒクと蠢く。
同時にアウルも自分の中の熱が狂ったように荒れ狂う感覚に低く呻くと
腰を先端ギリギリまで引き、ステラの最奥まで腰を叩きつけた。

「ぁっ・・・ああっ!・・・・んああああぁぁああっ!!」

ドクンドクンと脈を打ち、熱い欲望がステラの膣内に注ぎ込まれる。
その一滴も逃すまいとステラの膣内はアウル自身に絡みつき、締め付け続けた。



「ステラ・・・・」

荒れ狂う熱が収まり、アウルは自身をステラから引き抜くと中に収まりきれなかったアウルの欲望が内股をつたう。荒い呼吸をくり返していたステラも今は落ち着いたようにアウルの胸に顔を埋めていた。

「アウル・・・・眠い」
「ん・・・。寝るか?」
「アウル・・・いる・・・・?」

不安げに揺れる桜色の瞳にアウルは笑って見せた。

「・・・側にいるよ」

その言葉にステラは安心したように目を閉じるとすぐに寝息を立てはじめた。
その手にはしっかりとアウルの手が握られている。

「お休み、ステラ」

アウルはステラの髪に口づけると自分もまた目を閉じた。

他人の温もりはうっとしいだけのはずなのに、ステラの体温はとても安心する。
何よりも代えがたい存在。
まだ彼女の一番になれないけれども、彼女の側にいたい。
そうしたら。
いつか。
いつか彼女に愛してるって言える日が来るのだろうか?






「今日の訓練はそんなに厳しかったか?」

訓練のあとの休憩でスポーツドリンクを手にしたスティングがアウルの方を見やって問いかけた。その顔には明らかにアウルをからかう表情が浮かんでいた。

「うっせーよ」

にやにやするスティングにアウルは舌を出して見せた。
そんなアウルの膝の上にはステラが穏やかな寝息を立てている。

「仲いーじゃねーか」
「だーっ!!さっきからしつこい!!」

一向にからかうのをやめようとしない兄貴分にアウルが声を荒げると、ステラがうーと呻いて身動きをした。アウルは慌てて彼女の頭を撫でて寝かしつけようとしたが、彼女は寝ぼけたままもぞもぞと動き始める。

「アウル〜?」
「ああ、わりぃ・・・ってこの馬鹿、どこ触ってンだよ!」
「ふぇ?」
「こんなとこでやめろよっ」
「???」


我を忘れてぎゃいぎゃい始めるアウルとステラにスティングは仲がよろしい事でとにやにやと笑いを浮かべた。


「だから変なとこ触ンなっての、エッチ!!」


アウルの金切り声がジョーンズ内に反響していった。














あとがき

イさまによる7000hitリク。
裏のアウステ。
お待たせしてすみませんでした!
細かい原案をいただいたのですが、
うちのサイト傾向として本編準拠アウステは両想いではないので
全部実現させるのが難しく、管理人なりにアレンジさせていただきました。
オリキャラも出てしまっていて、しかもながい。
お気に召していただけるか不安ですが、頑張ってみました。
裏描写って難しい・・・。
必死こいてサイト巡りで勉強しましたが、どうでしょう(弱気)。
メイ様、駄文でよろしければ、お持ちくださいませ。
ここまで根気よく読んでいただいた方も有り難うございました。