3人






12月。

クリスマス。

年越しに正月と世間は忙しい。

まさに「師走」という名そのものだ。

ステラとアウルの3人でバイトを頑張ったおかげで今年はなんとか人並みに正月を過ごせそうだった。

年末の準備のため、3人で商店街に買い物へ行った帰りに福引の抽選会があった。

商店街50周年記念ということで今年の商品は特別豪華らしい。

特賞はなんとワゴン車。

1等は30インチのワイド液晶。

2等はリゾートのスイートペア宿泊券。

3等はブランド物のコート。

4等は食材つき鍋セット。

 

鍋セット(食材つき←これ重要。アウル談)の存在に俺達はぱぁぁ〜となった。

これがあったら特別豪華に過ごせる!!

幸い俺たちの手元に抽選券があった。

・・ただし一枚だけ。

「俺らの中でくじ運いいやつは?」

ぽつりとつぶやいたのはアウル。

「ステラ、わかんない」

「むー。じゃスティング!!オマエに決定!!」

「はあ?何で俺が?」

まさか自分に振られるとは思わなかったスティングが慌てる。

「ここは長男坊しょっ?」

「誰が長男坊だ!!」

「・・スティング、がんばって」

「鍋セット!!食材つき〜!!」

「う・・・」

ステラとアウルのキラキラとした瞳に言葉をなくすスティング。

責任重大である。

そう思ったとたん、きりきりと胃が痛み出す。

辞退しようとちらりと二人を見やった。

が。

「う・・」

 

スティングならやってくれる!!

 

・・という二人の期待に満ちた瞳を見ると断れなかった。

 

あきらめて抽選所へ向かう。

「お、兄さん、抽選かい?」

「・・はい」

「1枚ねー。ま、一応はずれなしだから」

「本当ですか?」

やった!と思ったのもつかの間。

「残念賞のポケットティッシュ」

「は、はあ・・」

踏ん切りがつかず、迷うスティング。

ここはやっぱりステラかアウルのほうが・・。

「やるの?やらないの?」

いらいらした係員の声にスティングはとうとう覚悟を決めた。

クソ!やってやる!やってやるぞ!

「やります」

「はーい。一回ね。ちゃちゃとまわして。ちゃっちゃーと」

「てやーーーっ!!」

「はいはい、はずれね。ティッシュ・・」

気合を入れてまわすスティングに係員はさめた調子でポケットティッシュを差し出した。

が。

「・・ってき、金色ぉ!?お、おおーあたりーー!!」

転がり出たのは金色の玉。

カランカラン。

当選の鐘がなる。

「やった、スティング!!信じてたぜ!!」

「スティング・・すごい・・」

「い、いやったーーーーぁああああっ!!!」

大喜びする面々。

「でも・・金色って何等賞?」

「あれ?なんだっけ?」

「すんません、特賞っす。ワゴン車です。ここにないんで事務室で手続きしてくれませんか?」

打って変わってへこへこする係員。

「面倒くせー、4等の鍋セットよこせよ!」

「そ、それは規則上できません・・ご勘弁を・・」

「ち。さっさと売り飛ばして資金にしよーぜ」

維持費のかかる車は今のスティングたちにとって無用の長物だったのだ。

 

ところ変わって事務所。

「必要経費30万!?なんじゃそりゃ!?」

事務室でアウルの声がこだまする。

当てたスティングはただ呆然としている。ステラは??の疑問符を浮かべて座っていた。

「登録代、税金その他もろもろありまして・・。すみません」

「はっ、じゃ売ってくるから支払い待っててよ」

「そ、それが・・」

「なんだよ?」

「法律により当選後一年は売れないと定められてるのですが・・」

「意味ねーじゃん!!」

 

・・というわけで車は辞退と相成った。哀れ・・。

 

「すまん・・」

うなだれるステイングにアウルは元気な声をかけた。

「何言ってんだよ、はずれじゃなかったじゃん。おもしろかったし。な、ステラ」

「うん!!」

満面な笑みを浮かべるステラとアウルにスティングはようやく元気を取り戻して微笑む。

「あ・・雪・・」

ステラのつぶやきにスティングとアウルが空を見上げると、いつの間にか雪がちらちらと舞い降りてきていた。

「今日も寒くなったなー。よし!豪華とまでいかないが鍋するか?」

「やっりー!!」

「うん!!・・おじやもやりたい」

「・・ああ。早く帰って支度するか!!」

 

しんしんと雪が降る中。

3人の笑い声が木霊する。

どんなときも3人一緒。

一緒なら、大丈夫。

今もこれからも。

3人一緒。

それが、一番大事。






後書き
大分前に書いたのを発掘しました。
3人の幸せは3人一緒の事だと思うんです。
理想はあと一人加わることなんですが。
オクレ兄さんの思い人とか。
アウステなので。