冬といえば鍋だ。 手軽だし、栄養満点。 オマケに後片付けは楽だし、いい事尽くめ。 今日は食堂整備日とあって食堂は休みで部隊からその賄いとして菓子パンが出たが、そんなもんが栄養になるか!! アウルとステラ(もちろん俺も)育ち盛りなんだぞ、分かってるのか? 不足分は各自で、との上からの達しもあったといことで。 よし!!今夜の夕食はスティング特製寄せ鍋に決定!! 久しぶりだ、腕が鳴るぜ!! 「ごはんはまぁだ?」 俺達は士官と同様の待遇にあるから各自の部屋にミニキッチンがある。 港町で買い込んだ材料を広げ、俺は鼻歌を歌いながら準備を進めていた。 唄のテーマか? フッ、それは想像に任せるぜ。 さて鍋の具といえば下ごしらえをした、豚肉に鳥団子。 海の上にいるから魚ももちろん忘れねぇ。 ただ食べやすいように切り身にしてっと。 冬は最高にうまい白菜や葱。 きのこ類。 はるさめといった乾物などなど。 寄せ鍋って言うのは早い話、なんでもありってワケだ。 肉と魚もうまいぞ? 「おい、スティングー。メシー」 「ごはん・・・・まだ・・・・?」 そこへアウルとステラがひょっこりと部屋に顔をだした。 全く、こいつらときたらまるで餌を待つひな鳥だな。 そうは思うと、ピーピー騒ぐこいつらがなんとも可愛く見える。中身はともかくな。 「もうちょっとだ、待ってろ・・・・ってステラ!!」 「?」 俺が準備をしている傍らでステラが支給された菓子パンをパクパクとかじっていた。 夕飯を作るから、菓子パンは食うな、とあれだけいい含めていたのに。 あーあ、口の周りがチョコレートだらけだ。 レディが台無しじゃねーか。 「ステラぁ、チョコレート」 「ふぇ?」 チョコレートを布きんでぬぐってやろうとしたところ、アウルのやつが先にハンカチを出してふいてやっていた。 ほう、兄貴らしいじゃねーか、感心感心。 そう思って感心していたら、オマケ、と言って音を立ててステラにキスしやがった。 この色ボケ!何やってるんだ、人の前で。 それとも俺は人じゃねーのか?背景か? ステラと言うと、何ごともなかったようにありがとう、なんてニコニコしているし。 これもスキンシップの一つ、てやつか。 そうだ、・・・そういうことにしておこう。 これ以上悩んだりするとは自分の生え際が気になってくる。 しっかし、菓子パンなんて食ってるから・・・・。 はっ、肝心な事を忘れるところだった。 可愛い妹分といえどもメシの前にあれほど食うな、という言いつけを守らなかった事を叱らねば。 愛らしい笑顔がゆがむのは見たくないが、これはお前の美容と健康のためだ、許せ!! 断腸の思いでステラを叱ると、ステラは何故怒こられたのか分からないと言うようにきょとんとしていた。 「でも・・・・アウル、一つくらい、いいって。アウル、スティングの分も、食べてた・・・・、ステラのも一個、あげた」 「ア〜〜ウ〜〜〜ル〜〜〜!!」 この野郎。 なんか優しいと思ったらカラクリはそれか。 「説教たれる前に、飯にしねー?要するにメシ食りゃぁいーんだろぉ?」 アウルのヤツ、俺が説教を始める前に済まし顔でそう言やがった。 菓子パン3人前近く食っておきながら、いい度胸じゃねーか。 残したら、鼻から突っ込んでやるからな。 そのあとは途中から顔を出したネオもひっくるめて娯楽室で鍋パーティーと相成った。 アウルのヤツはどうなったかと言うと・・・・。 「おい、ネオ!!そこはまだ早いっつーの!!」 「えーっ、ちょっとくらいイイじゃないの」 「ああ?」 「・・・・待たせていただきます」 「アウルー、ここのは」 「んんー、ちょっと待て。おし、いいな。器っ」 「うんっ」 「あ♪俺のもお願い」 ・・・・鍋奉行と化していた。 俺が手を出すまでも無く、絶妙なタイミングで肉や野菜その他乾物を鍋に入れてゆく。 手際もよく、取り分けも完璧。 取り分ける傍らちゃんと自分の分も確保して次々と平らげていって・・・・。 菓子パン3人前平らげたんだよなぁ・・・・。 あの細い体のどこにそんな場所があるんだ? 「スティングー、肉煮えてンぞー!!さっさと器よこせよ」 「あ、ああ・・・・」 アウルのやつが、早くしろ、と手を伸ばしている。 野菜と肉が山盛りになった器を受け取りながら、俺はまたもや小言の機会を逃してしまった事に気づいたのだった。 あとがき 久々と言うか開設以来やっと3つ目のお題です。 今回のママオクレ、一本とられましたとさ。 |